ポイント
あなたは何のポイントを貯めていますか?
ポイント
なんだか多勢の人があちらの方で立って一直線に並んでこちら側から来る人達を待ち構えていた。なんだか怪しげな感じがする。
近くまでたどり着くとその中の一人がにじり寄り話しかけてきた。
「うわぁ〜、残念ですねぇ。あと『1ポイント』だけ足りないなんてねぇ」
いかにもわざとらしい言い方をする人だ。そんな言い方をしなくても良さそうなものなのに、すごく癪にさわる。
自分が持っているポイントなど、ここに来るまで全く知る由もなかった。
『だいたい何をもって、ポイントだと騒いでいるのだろう?』
自分は見かけたこともないこの人を、訳も判らずに見ていた。
それにしても、そのようなポイントがあるのであれば、自分は間違いなく貯めることに集中していたに違いない。
今までにだって、数知れず集めたものだった。
例えば身近なもので言えば、スーパーのポイントや自動車屋さんでのポイントなどなど。
売る側からすれば、その時に割引するよりも、ポイントで渡しておけば、また来店してもらって、運が良ければ余分なものを購入してもらえればと考えてのことだろう。
自分にとっては、スーパーのポイントは有り難かった。
必要なものだけ購入してポイントが付き、それが必然的にお金として買い物で使用出来るのだから、これほど良いものはないと思っていた。
しかし今、ここで言っているポイントには全くと言って心当たりがない。
「あの〜?失礼ですが。。。何のポイントを言っているのですか?」
「はぁ?あなたこそ何を言っているの?」
「すみませんが何のことだかさっぱり判りません。教えていただけると助かるのですが。。。」
自分は丁重にこの人に尋ねたが、この人は明らかに飽きれ返った目付きで自分を見ている。
「このポイントがなければ、あなたはこちら側に来ることは出来ません」
「はぁ?だってすでにここにいるじゃありませんか!」
「まあ、言わばここまでは来られると言えます」
「なんですか?それ。。。」
「ですから、あと1ポイントだけあれば、ここを通り過ぎることができたのですよ。そして、あなた達側にいる人のポイントがその頭上にうっすらと見ることが出来る特殊能力が得られるのですよ」
「なぁんだ、ただそれだけのこと。。。別にそんなものは必要ではありませんよ」
「なぁんだとはなんですかぁ。。。あなたは事の重大さに全く気づいてないのですね」
「ええ、そう言われても、わからないものはわかりませんよ」
「あぁあ、可哀相に。。。」
「なにそれ?勿体ぶらないで教えてくれたっていいじゃありませんか!」
「いやいや、。。。自分自身で気づくと、ポイントが2倍で付くのですよ。そもそも、言ってしまったらあなたはポイント獲得のためだけに無理矢理にでも頑張ってしまうでしょ?そうすると地上の人達に迷惑がかかりますから。。。」
「地上の人達??それでも気になってしょうがないのですが?」
「仕方ないなぁ。教えてあげましょう。ただし地上の人達には絶対に迷惑をかけないようにして下さいよ。今までにあったことですが、中には地上に舞い戻り驚かす人がいたものですから。。。」
「判りましたよ。迷惑など絶対にかけないと約束します」
「それならば教えてあげましょう。それは、涙のポイントなのですよ」
「涙?。。。ですか?」
「そうです。涙です」
自分は唖然としてしまった。
「涙。。。?」
その答えを聞くと、なんだか笑いが込み上げてきて高笑いをしてしまった。
そんな自分を哀れみの表情を持って眺めている。
「まあ、あなた自身のことは、私には関係ありませんから」
そんなことを話しているうちに、この人はすっとんきょうな声を上げた。
「おっ、偶然かも知れませんが。。。おっと失言しました。でも今しがた1ポイントが入りましたよ。良かったですね。あなたのために涙を流してくれた人がひとり増えた証拠ですよ」
「なんだか訳がわかりませんが。。。」
しかしこの人は話し続ける。
「あぁ〜、良かった。良かった。あなたでちょうどこちら側に招き入れた人が1万人目に達成できました。私もたった1ポイントだけ足りなくて次に行けずにいたのです。それではここでお仕事を頑張って下さい」
「えっ?!何?どう言うこと?」
「まあ、こちら側でコツコツとポイントを貯めて下さい。ここにいる人達ともポイントの奪い合いですから、。。。とにかく1番最初に声をかけたもの勝ちです。ポイントを貯めれば、私のようになれますから。。。でないといつまで経っても先に進むことも、戻ることも出来ませんから。ちなみに私の場合ポイントを貯め込むまで、2年11ケ月と29日かかりました。おかげさまで、これでやっと成仏するためのステージ3に駒を進めることができますよ。ありがとうございました。でもこの先、あと何ステージクリアすればよいのですかね?」
ー Fin ー
H.27.9.3.投稿作品




