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どういうこと?

どういうこと?



『あぁ〜あ、お金が欲しいなぁ。』


部屋の片隅にある机に両肘をついて頭を支えながらつぶやいていた。

誰だってお金が欲しいに決まっている。自分も御多分にもれず、その1人だ。

そんな折、どこからともなくひとりの男が自分のすぐ脇に現われた。


「お金が欲しいのかね?」


突然現われたその男に訊ねられ、自分は驚く以外になかった。


「だ、だ、だれですか?」


「俺さまの事か?」


「ほかにここには、誰もいませんよ。あなたのことに決まっているじゃないですか。」


自分は少しばかりいらつきながら、その男に向かって叫んでいた。


「おいおい、そんなにりきむな。ちゃんと、応えてやるから。。。俺さまは、れっきとした悪魔だ。」


「あ、あっ、悪魔?」


「さよう。悪魔だ。」


「なんで、我が家に現われたのですか?」


「おまえのつぶやきが、俺さまをここに導いたのだ。」


「だけど、なんで、自分の家に来なくちゃいけないの?」


「理由なんかないさ。俺さまも暇ではないが、おまえのつぶやきに、ちょっと興味が出て立ち寄ったまでのことだ。」


「別に悪魔なんて、用は無いです。どうぞお引取りください。」


「そう言われてもなぁ。。。折角、立ち寄ったのだから、おまえの先程のつぶやきを叶えてやろう。」


「しかし、タダほど恐いものはないから、遠慮しておきますよ。」


「まあ、そう言わず。おまえの希望する金額を言ってみろ。」


「そりゃ、あればあるだけ欲しいに決まっていますよ。」


「そうか、じゃあ、とりあえず、ここにサインをしろ。そうすれば、お前の希望するお金を用意してやろう。」


「サインなんかしたら、どうなるかわからないから、しませんよ。その手には絶対にのりません。」


「ばかだなぁ。。。今の時代、昔のようなことなんてしてないぞ。確かに、昔は魂なぞいただいていたかもしれないが。。。」


「だったら、何も得るものがないじゃないですか?」


「はっ、はっ、はっ。それがあるんだな。」


悪魔は、自信有り気に応えた。


「ええっ?何を得られるというんですか?」


「おまえは何もわかっとらん。少しは自分で考えてみたらどうだ?」


「そう言われても。。。」


仕方なく、自分は考えだそうと、頭の中で考えを巡らせた。


『 悪魔に依頼する。 → お金が入る。 → ○○○を悪魔に渡す。 』


この方程式に当てはまるものは何かを、いくら考えて見ても、所詮は人間だから、『 魂 』にいきついてしまう。


「まだ、わからんのか?」


その悪魔は、いらつき始めていた。


「申し訳有りませんが、わかりません。」


「ん〜、じれったい。しょうがない教えてやろう。」


待ちきれなくなった悪魔は、応え始めた。


「それは、おまえの時間だ。」


「自分の時間?」


「そう、おまえの時間だ。」


「時間なんて、暇な自分だから、いくらでもあげますよ。どれくらい欲しいのですか?」


「そうさな。。。。10分もあれば充分だろう。」


「えっ?たったの10分。。。。ですか?」


「ああ、それでだけでいい。ただ、言っておくが、その時間に起きた全てのものをいただくことにしているのだ。」


「そんなものなら。。。わかりました。サインします。」


「よしきた。」


悪魔は、契約書をすぐさま差し出してきた。


自分は、無我夢中でサインをした。


「これで、契約成立だ。」


すると、この悪魔は姿を消してしまった。


「おい、おい、どこに行ったんだよ?やはり、悪魔だけあって騙しやがったかな?それに、もうすでに、自分から10分を取っていったのだろうか?」


口惜しがっていても仕方がない。自分は、部屋で地団駄を踏んでいた。


『まあ、10分くらいなら、いくらでもある。心配なんかいらないさ。』


しかし、13分もすると、再び悪魔は姿を現した。


「おお、悪かった。待たせたな。」


「本当ですよ。完全に騙されたかと思いましたよ。」


「いくらなんでも、そんな悪じゃない。約束はちゃんと守る。」


しかし、悪魔が謝るなんて、考えられないことだった。それよりも、そう言った悪魔の手を見ると、とてつもなく大きなカバンが握られていた。


「それって、もしかしたら。。。?」


「そうだ。。。お前が望んでいたお金だよ。たった今、銀行からいただいてきた。ざっと、3億円はある。」


悪魔は、自分の目の前にどさっと、そのカバンを置いた。


「さすが、悪魔ですね。そんなことができるのは、悪魔以外できないと思いますよ。だけど、それで姿を消した理由がわかりましたよ。」


「しかし、おまえは、こんな大金を何に使うんだ?」


「何に使うって聞かれても、まずは生活費。そして、こんなにたくさんお金があるから、残ったお金は社会福祉にでも貢献しようかと思っていますが。。。」


「おお、泣かせるねぇ。そんな考えを持っていたんだ。。。ようし、わかった。今回だけは大目にみて、特別だ。この紙切れをお前に返してやろう。」


その悪魔は、涙まで流して、ハンカチで拭っていた。


「えっ?いいんですか?」


「ああ、いいとも。こんなに感動したことは、いままでにないことだ。」


そう言いながら、私は紙を悪魔から受け取った。


「それじゃ、頑張れよ。これからは、楽しい生活が待っているからな。ははははは。」


「あっ、はい。ありがとうございます。」


あの悪魔は、ことばと不気味な笑いを残して、さっさといなくなってしまった。


『案外、いい悪魔だったのかもしれないな。。。』


自分は手元に残ったお金を眺めつつ、そんなふうに思っていた。


そして、何の気なしに紙を見て、やはり悪魔だと理解できてしまったのだった。


その紙は、○○銀行からの借用証書に変わっていたのだった。


『やられた。。。こんな大金の利子を含めて、どうやって返済するんだ?』


あいつ。。。。実は、悪魔じゃなくて、『 鬼 』だ。


それから、悪魔は約束通り、自分から時間を奪った。


その空白の時間に、自分は2度と出会えない。


その間に何が起こっていたかも、わからないのだ。


その時間とは、お金を得た『 時 』だったのだ。


思い出そうとしても、無理なのだ。


そして、ただ、自分の手元には、『 借用証書 』だけが残されていた。


そして、どこからか、悪魔の高らかな笑い声が、こだましているように聞こえた気がした。


「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。」




― F i n ―




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