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写真 Ⅲ

写真 || の続きです。

「そう。なんか有機物が入っているらしいよ。園芸に詳しくなくても、これだけ育てられるんだから、たいしたものでしょ?」


「そうね。でも隣の鉢の『葉から芽』の葉が虫に食べられているみたいだよ」


「えっ?本当?」


見ると葉の半分が溶けてなくなっているように見えた。じっと見ていると、葉の中で何かの虫が動いていた。


「うわ〜。何この虫。急いで防虫剤をかけてあげなくちゃ」


自分は近くのお花屋さんで購入した防虫剤を鉢の脇から持ち上げた。


「きゃ〜。ちょっと待ってよ。私にかけないでよ」


「おっとと。危ない、危ない。自分は大着者だから、危うくそのままかけるところだったよ。ごめんよ」


「まったく。信じられない。かけていたら許さなかったよ」


「そうだよね。だけど許さないって言ったところでどうしようもないでしょう?」


ついつい自分は意地悪なことを言ってしまった。


「いいもん。いつかは、きっと。。。浩君だって。。。」


「ごめんよ。それじゃ、自分の胸のポケットに入っていてね」


自分は愛ちゃんが写っているほうを自分側に向けて防虫剤を撒き始めた。


「これで『葉から芽ちゃん』も大丈夫だ」


「ちょっと早く出してよ。浩君の体臭のものすごくくさにおいで、息苦しいよ」


「失礼な。良い匂いでしょ?もっと、嗅いでいる?」


「冗談じゃないよ。良い匂いである訳がないよ」


自分は防虫剤を撒き終わったので、写真をもとの場所に置いた。そしてその前で腰を降ろして、しばらく写真の中の愛ちゃんを見つめていた。


「なに、じっと見てんのよ」


「いや、別に」


「だけどさぁ、不思議よね。こうやって、また会えて話しをしているなんて」


「そうだよ。ものすごく、不思議だよ。小さいテレビを見ているような感じだよ。それが昔の映像でなく、まさに今の映像なんだからね」


「浩君にとっては小さいテレビかもしれないけれど、私からするとものすごく巨大な映画スクリーンを見ているような感じなんだからね」


「そうか。体が小さいから、そうなってしまうんだね」


「そうよ。でも不思議と普通に声が聞こえるから許せるけどね」


「声まで大きく聞こえたら大変だよな」


「それこそ耳をふさいで会話しなくちゃいけなくなっちゃう」


「そうだよね」


「それにしても嬉しいな」


「自分も嬉しいよ。これからは愛ちゃんのことずっと離さないからね」


「ありがとう。それじゃ、お出かけする時は浩君の胸ポケットの中かな?」


「あれっ?自分の体臭は気にならないの?」


「あっ、そうだった。。。」


しばし愛ちゃんは考え込んでいたが、すぐに返事を返してきた。


「それでもいいよ。だって、いつでも浩君と一緒にいられるんだもん」


自分は小さい愛ちゃんを見つめながらも、あり得ない現実に少なからず喜んでいた。






(挑戦)


出窓のところにある植木鉢に寄りかけた写真の中の愛ちゃんが思い立ったように、自分にお願いを持ちかけてきた。


「ちょっと、試してみたいことがあるのだけど。お願いできる?」


「なんだい?出来ることはなんだってするよ。出来ないことは断るけど」


「この写真とほかの私が写っている写真を向かい合わせてみてよ」


「えっ?向かい合わせてどうするの?」


「私が移動出来るか試してみたいんだ」


「移動をする?愛ちゃんが。。。?でも、もし失敗したらどうなるんだろう?」


「その時はその時じゃない?女は度胸よ」


「それを言うなら、女は愛嬌あいきょうでしょ」


「まあ、とにかくやってみて欲しいの。もし二度と逢えなくなったら、その時は今までの私を忘れないでね。浩君をずっと愛しているからね。そのことだけは覚えておいてね」


「だったら、そんなことしなければいいじゃないか」


「でもね。そのことが出来るのであれば、このマンネリ化した世界から逃れるチャンスが出来るじゃない?私だって、たまには違った世界を見てみたいよ」


「分からなくもない理由だよね」


「それじゃ、お願い」


愛ちゃんにせがまれるようにお願いされてしまった。


「分ったよ。折角だから、自分と愛ちゃんが写っている写真にしよう」


自分は押し入れの中から、この間の遊園地に行った時に撮った写真を取り出した。


そして机の上でその中の写真の1枚を選び出した。


それはこの間、遊園地のジェットコースターの前で撮った時の写真だった。


「懐かしいな〜。ここの遊園地で、チケットを購入する時の出来事を思い出しちゃったよ。ここで愛ちゃんの背が小さいから海坊主かなにかみたいに鼻の穴から上がワンデイパスポートの写真になってたんだよね」


「しょうがないじゃない。まさかあんなにすぐ、写真を撮られると思わなかったんだから」


「だけど、ほんとうに間抜け顔だったよ。かろうじて海面すれすれに、鼻の穴を出して息をしている海坊主か何かって感じだった」


自分はゲラゲラと大笑いしてしまった。それを見ていて愛ちゃんは膨れっ面になっていた。


「ごめん。ごめん。ついつい思い出しちゃったんだ」


「でもさっきまで、この写真を眺めながらの泣きっ面はどこにいっちゃったのかしら?」


「えっ?泣きっ面?見ていたの?」


「いやでも、見えちゃったよ」


「まいったなぁ。。。いつから、この写真の中にいたの?」


「浩君が、眠る前からよ」


「なんで、早く応えてくれなかったんだよ」


「だって、どうしていいか分らなかったんだもん」


「そりゃそうかもしれないけど」


「まあ、結果は良いでしょ?」


「そりゃ、そうだけど。。。確かに、良いよ」


「それじゃあ、そろそろ、お願い」


「それじゃ、やってみようか。準備はいいかい?」


「いつでもいいわよ」


「自分も愛ちゃんのことをずうっと、愛しているよ」


「急になによ。照れるじゃない。。。。。でも、私もよ」


愛ちゃんもうつむきかげんに顔を赤くして、はにかみながら応えてくれた。


「それじゃ、やるよ。準備は良いかな?」


「私はいつだって準備万端よ。早くしてよ〜」


「はい。はい。それでは、写真を合わせるからね」


そして自分は、2枚の写真を向かい合わせにして、無事に移動できることを願っていた。


「移動できた?」


声をかけてみる。


声がしない。


「どう?出来た?」


やはり、声がしない。


自分は焦りに焦った。やはり無理だったのだろうか?


自分は時計を見ながら、1分だけ待つことにした。


ものすごく長い1分だった。


「移動できた?」


再び声をかけてみた。やはり声がしない。


自分は向かい合わせた写真を開いて、すぐさま元の写真をみた。


すると黙ったままの愛ちゃんが、そこにいるだけだった。


もう1枚の方にすぐさま、目を向けた。


愛ちゃんはやはり、あの時の笑顔を見せているだけだった。


やはり失敗だったのか。愕然がくぜんとする自分。やはり挑戦しなければ良かったとすぐさま後悔した。


だけど突然、遊園地での写真の愛ちゃんがいきなり声を出して笑い出した。


「成功!!Vサイン」


「何が成功、Vサインだよ。信じられない。人がこんなに心配しているのに。。。早く返事をしてくれれば無駄に心配しないで済んだのに」


「だって、私だってすることがないんだから、浩君をあせらせることくらいしてもいいじゃない」


「そんなことで、あせらすなよ。まあいいけどさぁ」


「それはそうと、なんか簡単に移動できたよ」


「そんなに簡単だったの?」


「そうねぇ。向かい合わせてくれて、すぐだったと思う」


「そうかぁ」


「だって普通に足を伸ばして、隣の部屋に行くような感じだったよ」


「なんだか奇妙だよね」


「そうかもしれない。だけど、今度は私の写っていない写真でトライしてみたいのだけど」


「それこそ、危険じゃない?」


「うん。そうかもしれない。けどさ、どうせなんだからやってみたい」


自分は強引な愛ちゃんの言葉に負けてしまった。


「分かったよ。だけど、どんな写真がいいの?」


「そうねぇ。海外に行ったことが無いから海外の写真がいいなぁ」


「そんな写真、家にあったかなぁ?そうだ、自分が海外旅行に行った時の写真なんかどう?」


「ふうん。いいんじゃない?」


「そんなものしかないんだからあきらめて。ちょっと待っていてね。捜してくる」


自分はそれこそ押し入れの中から、段ボール箱にしまってあるニュージーランドに行った時の写真を見つけ出すのに躍起やっきになった。そこは、今の会社に入るまえにワーキングホリデービザで行った海外だった。


「えっと、確かこの段ボール箱にしまったはずなんだけど。あった、あった。見つけたよ」


「捜すのにずいぶん時間が、かかるんだね」


大きな声を出している愛ちゃんの声が隣の部屋にいる自分にまで聞こえてきた。


「しょうがないよ。だってあの時以来、見てないんだもん」


「しかしよくまあ、そんなところにしまっておくね」


「いいじゃないか。別に」


「まあ、いいから早くしようよ」


愛ちゃんはかしてくる。


「今、行きますよ」


自分はアルバムに付いたほこりを手で払い、息を吹きかけた。

もわっと埃が舞いあがる。


自分は息を吹きかけなければ良かったと後悔する。

何故ならくしゃみが止まらなくなってしまったからだ。


「大丈夫?」


愛ちゃんは心配して声をかけてくれた。


「えっ?」


「風邪ひいた?」


「違うよ、埃のせだよ。ずいぶん長い間、しまっていたから」


「うわぁ。綺麗にしてよ。お願いだから」


「はい、はい」


自分は、布巾ふきんで表紙をぬぐい、埃を完全に無きものとした。


「これでよし」


「ニュージーランドかぁ?行ったことないから、どんなところなのか興味あるよ」


「自分としては、お勧めの国だよ。景色のすっごく綺麗なところがいっぱいあって。愛ちゃんを連れて行ってあげたかったなぁ」


「ちょっと、開いて見せてみてよ」


自分は何ページかをぱらぱらとめくり、愛ちゃんに見せてあげた。


「ニュージーランドのどこの場所がおすすめなの?」


「どこも素適だよ。場所だけでなくて、みんな人柄も良く、とても親切にしてくれたんだ」


「ふぅん。私は、海外のどこにも行ったことがないから、良く分からないよ。日本だって、そんなに旅行したことがないんだもん。ちょっと不安だよ」


「だったら、止めておく?手始めに日本にしたら?」


「でもどうせだったら、この際だから海外にチャレンジしてみたい。だって、ダメもとでしょ?」


「ダメもとかぁ〜。そりゃそうだよね。それじゃあ、ん〜。そうだ、ここのクイーンズタウンなんてどう?」


自分は山の上から見下みおろしているクイーンズタウンのゴンドラと湖が映っている写真を愛ちゃんに見せた。


「いいね〜。すごく良さそうな場所だね。写真写りが良いだけなのかなぁ?」


「いいや、そんなことないよ。実際、すばらしい景色で時の流れがゆったりと流れているっていう感じの場所だったよ。湖の上を時々飛んで行くパラグライダーに目を向けたり、湖にもてあそばれているジェットボートやヨットなどがあったり、とても言いきれない素晴らしい場所だよ。何と言っても、一番の印象は、ジェットボートの波紋はもんが、綺麗に線を引いたように空のような青い湖に広がっていくさまは、とっても素敵だったよ」


「いいなぁ。うらやましい。じゃぁ、ここの場所の写真にする」


「そうだよ。お勧めするよ」


自分はこの写真をはがして準備を始めた。


「準備はいいかい?」


「いいよ」


「じゃあ、愛ちゃん、いくよ」


自分は前回と同じく2枚の写真を向かい合わせにした。


「どう?移動できた?」


「出来たと思う」


「なんだか声が小さいね」


「すっごい、素敵な場所だね。本当に綺麗」


自分は写真の中の愛ちゃんを捜した。


「どこにいるの?」


「ここだよ。ここ」


大きな声で叫んでいるようだが、小さい声でかすかに聞こえてきた。


「ここって、どこさ」


「ヨットの上」


見ると、湖の中に小さなヨットが写っていた。そこの中の小さな人間が、こちらに向かって、両手を大きく振っていた。


「Hello,my name is ai.(ハロー,マイ ネーム イズ アイ)」

(※ こんにちは、私の名前は愛です)


「いきなり、英語かよ」


「だって、前とは違うよ。だって、こっちではちゃんと立体的に見えるんだもん」


「そんなことってあるの?いや、あるのかもしれないね。愛ちゃんが存在していること自体、不思議なんだものね。それに不思議な現象で愛ちゃんがそこに移動したとたん、写真全体のものが動き始めたよ」


「ええっ?そうなの?不思議だね。ヨットも、木々も、動いているの?」


「そう、動いている。風にたなびいているヨットのも、木々の葉がれている様子も、手に取るように良く分るよ。それに、ヨットが作る長く伸びて行く波紋はもんも徐々(じょじょ)に広がっているよ」


「とにかく、しばらくの間、楽しませてね」


「ああ、いいよ。ただ、あんまり遠くには行かないでよ」


「はぁ〜い」


「返事はいいんだから。まったく」


『しばらくは、このままでいいか』


それじゃ、自分は少し出かけてこよう。自分は歩いて5分程の近くのコンビニに出かけることにした。だって、ここ何日もろくに食べられずにいたのだから。。。いろいろあったけど、愛ちゃんが再び現れてなんだかすごくホッとしている。


そしてコンビニで、ついつい雑誌の立ち読みまでしてしまった。


これが後悔することになるとは、この時はまったく思わなかった。






(焦り)


家に戻ると何故か鍵がかっていなかった。


『確かに鍵をかけて出かけたはずなのに。まさか、どろぼう?』


自分は恐る恐るドアを開け、身構えながら中に入った。


すると玄関に女性ものの靴があった。どことなく見覚えのある色と形。


そう紛れも無くそれは母親のものだ。さらに部屋に向かうと、母親が居間で片付けをしていた。


「えっ?どうしたの?」


「だって、あんた、愛ちゃんが亡くなってから、すごく落ち込んでいるだろうと思って来たんじゃないか。。。心配だったんだよ。でも、なんとか元気そうなおまえを見て安心したよ」


「でも、どうやって部屋に入ったのさ」


「そりゃ、もちろん大家おおやさんに言って、鍵をあけてもらったよ」


「だって、この部屋で自殺でもしていたら、と思うと心配でね。大家さんにそう言ったらすぐに鍵を開けてくれたよ」


「なんでもいいけど、片付けなんてしなくていいよ」


「すごく散らかっていたから、ちょっと片付けさせてもらってたんじゃないか」


「まったく、なんでそんなことするんだよ」


「親なんだから、あたりまえじゃない」


「まあとにかく、もういいよ」


自分は机の上に置いておいた2枚の写真を捜した。


「お母さん。机の上に置いていた写真、知らない?」


「ああ、あれかい。早くあの子を忘れた方が良いと思って、さっきゴミで捨ててしまったよ」


「はぁ?なんで」


「おまえのためを思ってしてあげたんじゃないか」


うそでしょう?」


「おまえに嘘なんてついてどうすんのさ」


「お母さん。どこに置いてきたのか教えてよ」


「そりゃ、決まっているじゃないか。ゴミ捨て場だよ」


「だからゴミ捨て場のどの辺だよ?」


自分はあわてた。それこそ愛ちゃんと2度と会えなくなってしまう。


「確か、上の方だったよ」


自分は部屋を飛び出し階段を駆け下り、ゴミ捨て場に急いだ。


何とか、まだあった。ゴミの山。アパートだから10世帯分のゴミが積まれていた。


「愛ちゃん、どこにいるんだ?」と声を出して捜し始めた。


そう言えば愛ちゃんはクイーンズタウンの奥の方に出かけてしまっているんだったよね。


声が聞こえないのも当たり前なのだろう。


間もなく母親が来た。


「なんでそんなに血相かいて捜しているんだい?」


「当たり前じゃないか。大事なものなんだから」


「そんな大事なものだったら、ちゃんとしまっておきなさいよ」


「だったら勝手に捨てないでよ」


自分は仕方なしに片っ端から袋を開けた。


「うわぁ。くっせえ」


「これじゃない、これでもない」


「じゃあ、これかな?」


そうこうしている内にゴミの収集車が来てしまった。


「あんたら、ここで何しているの?」


いぶかしげに自分達に向かって聞いてくる作業員の人達だった。


「捜し物です」


「捜し物って、人の家のゴミをあさってどうするんだね」


そこで母親が助け船を出してくれた。


「私がこの子の大事なものを勝手に捨ててしまったから、こんなことになってしまっているんですよ。どうもすみません。」


ゴミ収集車の人達は唖然としていた。


「とにかく急いで見つけてくださいよ。早く収集を済ませたいんですから」


「はい、分りました。」


ここで2人揃そろって返事をしていた。さすが親子だ。


そんなことよりも、自分の家のゴミがわからんとは情けない。あまりゴミ捨てに出さないからなのかも知れない。


「あった〜。これだ、これ」


やっとの思いで見つけ出した。


「お〜い、見つけたぞ」


自然と写真に向かって大声で叫んでいた。


母親は『この子、どうしたんだろう?』と言った感じで自分を見つめていた。


「まったく今度からは気を付けて下さいよ」


作業員の人達は、飽き飽きとした感じで一言を残し、ゴミを積み込んで去って行った。


どうにかこうにか、見つけることが出来てひと安心だ。


「良かった〜」


これで、また、愛ちゃんと会うことが出来る。


母親とゆっくりと階段を上がり、自分の部屋に入った。


「まあ、元気そうだから、良かったよ。安心したよ。何か食べたいものあるかい?」


「特に無いけど」


「だったら母親が作る煮物でも食べるかい?」


「うん。そうだね。そうする。お母さんの作った煮物はとても美味しいもんね」


「そうだよ。私が、死んでも、親の作った味を覚えておきなさいよ」


「また、何言ってるんだよ。お母さん」


「出来るうちは作ってあげるからね。」


母親は台所に向かい、冷蔵庫を覗き込む。


「なんだい、何にも無いじゃないか。しょうがないね。まったく。近くにスーパーあったよね?」


「あぁ、あるよ。アパートを出てメイン道路に出たら、左に曲がって700m程かな」


「それじゃ、そこに行って何か買ってきてくれるかい?やっぱり、私が行こう。おまえに頼むと、ろくなものを買って来ないだろうから」


そう言って母親はアパートを出て行った。


自分はその瞬間から急いで写真に声をかけた。


最初は、小さい声で。


「お〜ぃい。いるか〜?」


返事が無いので、次第に大きな声を出していた。


「返事しろよ〜!」


ついに返事が返ってきた。


「何よ!うるさいわね。天から声が聞こえてくる感じよ。他にも人が大勢いるんだから気をつけてよ。だけど不思議とだれも、その声の存在に気付かないようね。わかるのが私だけみたい」


「でも、こっちにしてみたら『何よ!』どころの騒ぎじゃなかったんだから。危うく、この写真がゴミで『さようなら』になっちゃうところだったんだからね」


「何それ?」


「自分の母親が来て勝手に片付けをしていてさ、写真をゴミとして捨てちゃってたんだよ。あともうちょっとのところで、ゴミの収集車に積まれて持って行かれちゃうところだったんだから。そうしたら、そのままゴミと一緒に成仏できたかな?」


「えっ?冗談じょうだんでしょ?そんなことあるの?」


「あったんだから。だから自分だってこんなに冷や汗かいてるんじゃないか」


「そうとは知らず、ごめんなさい」


「愛ちゃんは写真の中で、のうのうと遊んでるんだからいいけどさ」


「だからあやまっているじゃないの。ごめんなさい」


「まっ、いいか。こうしてまた話ができるんだから良かったよ」


「そうだよ」


「で、どう?ニュージーランド」


「すごく良いよ。湖がとっても奇麗な色で、こんな色の湖を日本で見たことないも

ん。もう私の気持は、メロメロよ。空も青空で、ヨットに揺られて、少し寝ちゃった。そして。。。」


「いいな〜。自分も、もう1回行きたいなぁ」


「そうだよ。来ればいいじゃん。ここで、私に逢えるかもよ」


「行ったら、愛ちゃんに逢えるのかな?でも、そこで寝ていただけなの?」


「私?実はね。他に、ゴンドラに乗って、上まで行って、そこでソフトクリーム食べて。そうそう、ゴンドラに乗った時に、日本人の観光客に会っちゃった」


「えっ?どうして、そんなことが出来るの?」


「本当に不思議よね。そしてね、その観光客の人に『どこから来たの?』なんて聞かれちゃった。」



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