写真 ||
写真 | の続きです。
愛ちゃんからの誘いの言葉に嬉しさのあまり歓喜した。
「すごく嬉しい。ありがとう」
それからと言うもの朝のお弁当は平塚にある○○神社の駐車場で食べることになる。
「今日のお弁当はね、特製モーニングセットだよ。通称、自分の名前を取って、『愛弁当』。いっぱい愛を込めてあるんだからね。みて、みて。このおにぎりとおかず」
愛ちゃんは嬉しそうにお弁当の包みをあけながら、早く自分に見て欲しがっている様子が手に取るように伺えた。
「うわ〜。タコさんウインナーにウサギさんりんご。手間をかけているね。そこまでしなくったっていいのに。。。卵焼きまで作ってくれたんだ。嬉しい、ありがとう」
「えぇとね。これは私のだよ」
「えええっ?自分のは?」
「なんちゃって。嘘だよ〜。はい、あ、げ、る」
そう言いながら愛ちゃんはお弁当箱の脇に添えていた楊枝でタコさんウインナーを刺して自分の口元に運んできた。
「恥ずかしいよ。誰かに見られたら、どうするの?」
「浩君、かわいい〜。なに恥ずかしがっているのよ。いい大人が。。。」
「だって、ここは神社だよ。誰かがこの時間にお参りにくる可能性だって高いじゃん」
「そうよね。まあ、いいんじゃない?見られたって。。。」
そんなある日、愛ちゃんから提案があった。
「いつもここの神社の駐車場にお世話になっているから、たまにはお参りしてこない?」
愛ちゃんに言われ、確かにその通りだと思った。毎日ただで駐車場を借りてそのまま会社に向かっているのだ。だから毎朝お弁当を食べるだけのために駐車場を使わせていただくのも、大変申し訳無く感じてしまったので、二人でこの神社のお参りに行くことにしたのだった。
早朝なので誰もいないようだ。
『ガラン、ガラン、ガラン』
お参りを済ませた後で。。。
「浩君は何をお願いしたの?」
愛ちゃんから願い事を聞かれてしまい、つい口篭もってしまう。
「えっ?言えないよ。恥かしいもん。それじゃあ、愛ちゃんは何をお願いしたの?」
「私?」
「ほかに誰がいるって言うんだよ」
「私のお願いはね。な・い・しょ」
「なんだよ、人に聞いておいて。。。まあ、いいや。じゃあ、お互い秘密にしておこうね」
そんな折り、愛ちゃんが立ち止まっていることに気付かずに自分が何歩か前に進んでしまって、振り返った。
振りかえったと同時に思わぬ言葉が自分に向かって飛び込んでくる。
「私ね、浩君のこと本当に好きになってきたみたい」
急に愛ちゃんからその一言を言われ、自分は嬉しさのあまり立ちすくんでいた。
「ど、どうしたんだよ。急に。。。」
「だって、この今の瞬間に伝えたかったんだもん。いいじゃない」
「そうか、うん、わかった。ありがとう。自分も愛ちゃんのこと大、大、大好きだよ」
その後、ふたりは立ったまま見つめ合い、ふたりの距離は次第に縮まっていった。
そして、ついに抱き合ってそっとキスを交わした。
それは朝のすがすがしい新緑に囲まれての出来事でした。自分達のすぐ脇で狛犬が静かにその様子を見守ってくれていた。
(初の日曜日デート)
「今度の日曜日に遊園地に行かない?」
いつものように車の中で朝食を食べている時に愛ちゃんに訊ねた。
「うん、行く。で、どこの遊園地に行くの?」
「そうさな。○○遊園地はどう?」
「いいよ。じゃあ、どっちの車で行く?」
「もちろん、自分の車で。。。いいでしょ?」
「良いよ」
そして待ちに待った日曜日。。。
「愛ちゃん、おはよう」
自分はいつもの待ち合わせ場所でいつものように待っていた。
「浩君、おはよう」
「初めての日曜日のデートだね」
「そう言えば、そうだね。でもいつも愛ちゃんと一緒にいるから関係ないような感じがする」
「確かに、言えている。浩君とは、朝から仕事場に、帰りまでいつも一緒だものね」
「そうだよ。そこまで一緒にいなくたっていいような感じなんだけどな。。。」
「そんなこと言うなよ。自分はいつだって、愛ちゃんのそばにいたいんだから。。。」
「ふふふ」
愛ちゃんに笑われてしまった。
「さあ、行こう」
○○遊園地は車で2時間以上かかってしまう。だけど、車内でふたりで一緒にいられる時間も楽しく過ごせるものだ。ただ行く途中に愛ちゃんから、タダならぬことを聞いてしまった。
「あのね。会社の○○さんからデートに誘われちゃった」
「えっ?誰?」
「だから、○○さん」
「うそ〜?」
「本当だよ」
自分はなんだか激しい嫉妬を覚えてしまっていた。
「大丈夫。ちゃんと好きな人がいるからと言って断ったから」
「そうなんだ。今度からあいつのことを見張ってなくちゃ。。。」
「好きな人の名前は言ってないけど、なんとなくばれてしまっていたかな?」
「そうなの?」
自分はばれていると聞いて、なんだか嬉しい気持ちになっていた。本当は、ばれてしまうと、ふたりにとってマイナスなことは重々承知のことなのだけど。。。
遊園地に着くと入り口で催しをしていた。懸垂30回またはみんなの前でキスを30秒していただけたら、入園料がただになると言う。
自分は愛ちゃんをすぐさま見た。
「どう?」
すでに愛ちゃんは、『 嫌 』という表情をみせていた。
もちろん自分は簡単な方法の30秒を選んでいたのだ。しかし確実に愛ちゃんの反応は、『 No 』だった。
仕方なく自分は、30回をトライしてみることに。。。
1回、2回、3回、。。。19回、20回、。。。
ここでもうすでに苦しくなってしまい、なんとか見栄であえぎながら、21回、22回。。。。
結果、ダメだった。その後はひたすら疲れた腕の痛さだけが残っていた。
「大丈夫?」
「まあね。中学生の時だったら絶対に出来ていたんだけど。。。歳とともに体力は落ちるものなんだね」
「そうだよ。あんまり無茶しちゃうと大変だぞ。何かあったら、ここにおいていっちゃうからね。。。」
「うわぁ、冷たいな〜。だけど、あんなに人が集って注目されると思わなかったよ」
「そうね。私のことじゃないのに、ちょっと恥かしかった」
そして自分は腕をさすりながら入場券を購入するために販売機に行くと、1日券は写真を撮るようなチケットになっていた。珍しいチケットだと思いながら、最初に愛ちゃんが購入するためにお金を入れた。
するとたちまち『パシャ』。
出てきたチケットを見ると思わず笑わずにはいられなかった。
「ははははは。何これ?鼻の穴がかろうじてぎりぎりに写っていて、そこから下が写っていないじゃん。まるで、海坊主か何かが海面すれすれに出て、息継ぎしているみたいだ」
「ひど〜い。だって、身長が低いのだからしょうがないじゃない。それに準備も出来てなくてすぐだったんだもん」
「ちゃんと、背の低い人用に踏み台があったのに。。。ほら、ここに」
自分は指差して教えてあげた。
「知らなかったんだもん」
「今日、一日このパスポートで回るんだね。ははははは」
自分の写真はまともに撮れていた。
そして乗り物に乗る度に、笑いがこみ上げてしまうしまつだった。
それも乗り物の係りの人に見せる度に、背が低かったのでこんな写りになってしまいましたと説明しながらの入場となったのだった。
ここの遊園地でも、ところどころで愛ちゃんと一緒に人に頼んで記念の写真を撮ってもらった。
「デジカメだとすぐにどんな状態で写っているか分るから、凄いね?」
愛ちゃんに言われ、確かに凄いと自分は思った。昔は、写真は現像するまでどんな状態で写っているか楽しみにしていなければならなかったのだから。。。
そしてついに、この日の最後の乗り物に乗ることになった。それはジェットコースター。この時を愛ちゃんは異常なほど楽しみにしていたようで、乗っている最中は笑い声を上げながら叫んでいた。
自分は必至に前のレバーを握って目をつぶり、はやく終って欲しいと願っているだけだったのに。。。愛ちゃんはそんな自分に対してむげに声をかけてきた。
「面白かったね」
「。。。。」
「なんだか顔色が悪いような感じだけど、大丈夫?」
愛ちゃんに言われた通り、あまりの恐怖で力が抜けてしまっていたのだった。
「浩君にも苦手なものがあるんだね」
「もちろんあるさ。ジェットコースターと今の上司かな」
「ふふふ」
「それでも楽しかったね」
「うん、面白かったよ。浩君、また来ようね」
「そうだね。だけどジェットコースターは、愛ちゃんひとりで何回も乗ってきて良いからね。遠慮しなくて良いよ」
「やだ〜。浩君と一緒じゃなきゃ嫌だもん」
愛ちゃんは先程までの自分が笑っていた仕返しと言わんばかりに、自分の腕を引っ張りながら甘えるような仕草で微笑んでいた。
それからの1年以上もの間、休みの日も含めて朝から晩まで必ず愛ちゃんと一緒に過ごすようになったのでした。
(別れ)
――― 1年後の初夏 ―――
いつものように会社に行く前に、愛ちゃんとの待ち合わせ場所に向かった。愛ちゃんはいつもと違い遅刻をしてくるようだ。
『遅いな〜』
自分は腕時計と車の時計を交互に見ながら、やきもきしていた。
『早く来ないと出社の時間ぎりぎりになってしまうよ。。。』
ところが、いつまでたっても愛ちゃんが来ない。どうしたのだろうかと心配になり、ついに待ち切れず携帯電話に連絡したが、繋がらない。
電話での応対は決まって、『ただいま電話にでることが出来ません。』と言うアナウンスだけだった。
『どうしたんだろう?愛ちゃんに何かあったんだろうか?』
そして、その自分の不安が的中することになってしまう。
と、そこへ。
「あなたが、○○さんですか?」
車の中で待っていた自分に、窓越しから声をかけてきたおばさんがいた。
おばさんは驚くほど血の気の引いた顔をしていた。
「そうですけど」
おばさんは自分が『 浩 』であると分ると、いきなり泣き崩れた。
自分は何がなんだかわからないまま、車から飛び出て、おばさんに声をかけた。
「どうかされたんですか?」
しばらくして、おばさんは立ち上がり、矢継ぎ早に話してきた。
「実は。。。、今朝。。。、私の娘が、食材を買うためにコンビニに向かっていた時に交通事故に遭ってしまって。。。」
「えっ?それで、どうなったんですか?」
自分は気がきではなかった。
「娘が救急車で運ばれて、私の夫があなたがここにいるだろうから、伝えて来いと言って。。。」
「えっ、何を伝えて欲しいって言っていたんですか?」
「とにかく、まず、一緒に、その病院に行きましょう」
おばさんはやっとの思いで声にしていた。
自分はなす術も無く、気持が動転してしまっていた。
「とにかく急いで病院に行きましょう」
こうなったら会社は後回しだ。自分はおばさんを自分の車に乗せ、病院へと向かった。
「どこの病院ですか?」
「市民病院。。。。」
「市民病院ですね」
その後おばさんの案内のもと、市民病院に向かった。
車を運転している時間がこれほど長く感じたことは今までに無かったことだろう。
病院に着き、おばさんが受付で確認して足早に向かう。そこは集中治療室で誰も入ることが出来なかった。その病室の前で、おじさんともう1人の女性が座っていた。
自分は軽く頭を下げ、挨拶をした。
「どうも。おはようございます」
「あなたが○○さんですか?私はあの子の父親です」
おじさんに声をかけられた。
「はい。そうです。具合はどうなんですか?」
「頭を強く打ってしまったらしくて、かなり重症らしい。。。」
「そうなんですか。。。」
自分の気持ちはものすごく落ち込んでいた。
『愛ちゃんは大丈夫なのだろうか?』
「こんなところで初めてあなたにお会いすることになるなんて。。。」
おじさんの声は震えていた。
「私の妹がいつもお世話になっています」
もう1人の女性は、お姉さんだった。
「こちらこそ」
自分は、愛ちゃんの事故のことを話して会社を休む連絡を入れた。
会社の総務の人も、後でこちらの病院に来ると言っていた。
どれくらい、ここで待っていたことだろう。
先生が外に出て来た。
「ご親族の方ですか?」
私達に向かって話しかけてきた。
「私達は親族ですが、この人はあの子の恋人です」
お姉さんが伝えてくれた。
自分はただ黙って聞いていた。
「とりあえず、今の状況をお伝えします。誠に、残念ですが希望は持てません。一応、手は尽くしています」
その言葉を聞いて、おばさんとお姉さんが泣き崩れた。おじさんと自分は、ただ呆然と立ちすくんでいた。
自分はやっとの思いで声を出して先生に訊ねた。
「どうやっても、だめなんですか?」
先生は目をつぶって、静かに首を縦に降ろした。
「何かほかにご質問がなければ、私はこれで失礼します」
愛ちゃんが死んでしまう。嘘でしょう?信じられない。自分は、この事実を全く信じられないでいた。
暫くすると、病室に入れることになった。そこに酸素吸入をしている愛ちゃんが横たわっていた。おばさんとお姉さんは愛ちゃんの手を握りながら、泣きじゃくり、愛ちゃんの名前を呼び、さんざん叫んでいた。
「聞こえる?しっかりしなさいよ」
「先に行ったら、許さないからね」
自分は愛ちゃんの黙っている姿を見て、いたたまれない気持でいっぱいだった。
ただ空しく、ベッド脇の心電図の音が部屋中に響き渡っていた。
そして、どれくらい過ぎた時だろうか。。。ついに。。。
『 ピーーー 』
「先生―!!」
叫ぶ、おばさん。
その脇からおじさんが、そっとおばさんとお姉さんの肩を抱き寄せる。
病室中が涙の渦となった。
そして、愛ちゃんのお葬式が終った。
(再会)
大好きだった愛ちゃんが死んでしまった。これから先、どう生きていけば良いのだろう?自分は愛ちゃんだけが写っている湘南平での写真を両手で持ち、涙を流しながら眺めていた。どの位時間が過ぎたことだろう。いつの間にか、そこの机にうつ伏せて眠ってしまっていた。
それから何故か頭の中で、声がこだまする。
『浩くん。元気出してよ』
そう言われても、元気が出る訳ないよ。大好きだった愛ちゃんが死んでしまったのだもの。
『ファイト!!』
また、声が聞こえてくる。
なんだかうつらうつらしていた自分は目を覚ました。そして頭を持ち上げると、写真の中に愛ちゃんの微笑んでいる姿が自分の目に映る。
『なんで死んでしまったんだよ。もっと、もっと愛ちゃんと一緒の時間を過ごしたかった』
再び流れ落ちる涙。いてもたってもいられない感情。どうあがいてみたところで変わらない感情。ばらばらになった自分の感情のひとつ、ひとつを縫い合わせて修復したい。涙で霞んだ写真の中で、ひっそりと愛ちゃんは笑っている。
自分が涙で霞んだ写真をじっと眺めているその時だった。
「ワッ!!」
写真の中の愛ちゃんが、いきなり両手を広げて自分を驚かせた。
「うわぁあ!!」
自分は声を上げ、両手で持っていた写真をつい、離してしまった。
机の上に転がった写真の中で愛ちゃんが声を出して笑っている。
自分はのけぞってしまった体を正常の位置まで戻すと、急いで写真をつかんで覗き込んだ。
すると愛ちゃんが写真の中で笑い転げていた。
「驚いた?」
「驚いたに決まっているじゃないか。だけど、どうなっているの?」
自分は何が何だかわからない気持ちでいっぱいだった。そして今までの悲しかったことが嘘のようになってしまっていた。
それから愛ちゃんは、写真の中で両手を後ろに組んで、うろつき始めた。
「私だって、さっぱり分らないわよ。気付いたら、ここでうろつくことしかできないみたいなんだから。どうしたら元に戻れるのかなぁ?」
「それは、。。。それは、難しい事だと思う」
自分は暗い気持ちで下を向いて伝えるしかなかった。
「なんで、浩君、そんなに暗い表情になるの?」
「だって、それは。。。」
「もう、いいわよ。気にしないでよ」
愛ちゃんにそう言われても、簡単な問題ではない。
「なんだか不思議だよ。写真の中でうろついている愛ちゃんを見ているなんて」
「写真?」
「そうだよ。写真だよ」
「やはり、そうだったんだ。いつか撮った景色と変わらないと思ったんだ。桜も咲いているし。。。私がいるのは、写真の中だったんだぁ」
愛ちゃんは、納得したかのように呟いていた。
「愛ちゃんは、わからなかったんだ?」
「うん。。。。そうだよ。とにかく、ここから出ようにも、出られないから。。。」
「まあ、それは、しょうがないよ。でも、愛ちゃんとまた、話が出来て嬉しい」
「だけどさあ。。。ねえ、私に何があったの?」
愛ちゃんから聞かれ、自分はあの辛い日の出来事を知っている限り、出来るだけ詳しく伝えてあげた。
「うそっ!!うそでしょ??」
愛ちゃんから返ってきた言葉は、疑いの言葉だった。
「だけど、それが事実なんだ。辛いことだけど、受け止めるしかないことなんだよ」
しばらくの間、愛ちゃんは黙り込んでいた。
「そうだよね。いつまでもくよくよしていても、仕方ないものね。だけどさ、なんで、こんなことになっているのかな?」
「自分には分らないよ。でも、まだいいじゃないか。僕と話ができるのだから。。。」
「嫌とは言わないけど、やはり元に戻りたいよ〜。。。。。え〜〜〜ん。」
愛ちゃんはついに泣き出してしまった。
『そりゃそうだ。泣くのは当たり前のことだ。自分だって悲しいことなのだから』
「なんとかしてあげたいけど出来ないんだよ。ごめんね」
自分は再び暗い気持ちにならざるを得なかった。
やっとのことで、少しずつ愛ちゃんは落ちつきを取り戻し、自分に声をかけてきた。
「私はずっと成仏できずに、ここに留まるのかしら?」
「ここって、写真の中ってこと?」
「そうよ。写真の中でずっうっと暮らすのかなぁ?」
「ン〜。それは分らないよ。だけど、最後はちゃんと成仏できるように、お寺に行くよ」
「そう。よろしくお願いね。だけど、これからどうなるのかな?」
「そうだよね。このままこの写真をお寺に持って行くわけにもいかないし。だけど、これから本当にどうしたら良いのだろう?」
「どうしたら良いのだろうって言われても、私はここにいるしかないのだから、。。。なんとかして欲しいのはこっちの方だよ」
「そりゃそうだよね」
愛ちゃんはいくらか元気が出て来たようで安心した。それから愛ちゃんは、要求を言い出し始めた。
「とりあえず、どこか見晴らしの良いところにこの写真を飾ってちょうだいよ」
「見晴らしの良いところって言っても、ここは安アパートの一室だから、そんなに良い場所なんて、無いよ。知っているでしょ?」
「知っていますよ〜。だけど、せめて、出窓のところに置いてくれない?」
「出窓のところは、植木鉢でいっぱいだけど。。。、しょうがないな。どけて、愛ちゃんの写真を置くよ」
「ちょっと待ってよ。私って、しょうがないの?」
「ごめん。そんなことない。愛ちゃんは僕にとって大切な人だもの」
「そうでしょ?言い方に気を付けなさいよ」
「はい。反省します。これでどう?」
自分は愛ちゃんのいる写真を出窓のところにある植木鉢に寄りかけるようにして、置いてみた。
「居心地は変わらないけど、周りにいくらか緑があって良いと思う」
「しばらくの間は、ここで我慢してね」
「そうね。しばらくの間はね。それにしてもここに置いているのは、金の成る木にくちなしの木、ハマユウにアロエ。そして、なんだっけ?隣に植わっている鉢の雑草は?とにかく、組み合わせがめちゃくちゃじゃない?」
「別にいいじゃないか。たまたま、人からもらったりして集ったんだから。それと、さっきのは、雑草でも『葉から芽』だよ。自分が前年のゴールデンウィークに行った
小笠原で、トムソーヤの宿のオーナーからもらったんだ。1枚1枚の葉っぱの脇からどんどん芽がでてくる不思議な植物だよ。かわいいけど、繁殖率がものすごいんだよね」
「ああ、浩君が話していたあの植物ね。だけどこの間までその雑草はものすごくひょろっとしていて、まるでもやしか何かが育っているようなものだって言っていたじゃない」
愛ちゃんに言われ、少なからず頷いてしまう。
「あの時は砂の種類が違っていたんだよ。ほら、これが、この間まで入れていた、○○○○○○○っていう土だよ」
自分は近くにおいてあった小さなジップ付きの透明な袋のラベルを見ながら答えた。
「ふぅん。で、今の土はどうしたの?」
「近くのお花屋さんから購入したんだ。それで植え替えてあげたんだよ」
「それでこんなに大きく育ったってわけね」




