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洞窟

この洞窟は一体何?


※魔法の図書館(Telebookまたはlovely loveのニックネーム)で投稿している作品です。

洞窟


『ここは、どこなのだろう?』


目を覚ました自分の目に映し出された場所は、見たことの無い岩肌がむき出しに晒された洞窟の中だった。


そして、何故だかわからないが、人々が列をなして進んでいるのだ。そこに不気味ながらに声だけがこだましている。一体何故こんなところにいるのか?疑問だけが自分の頭の中でぐるぐると駆け巡る。


この列の先に何があるのか興味があり、自分も自然とその列に加わって並んで少しずつ、少しずつ前に進んで行く。どれくらいの時間が過ぎた事だろうか。。。


ついに自分があと2番目になった。自分の前の人が前に進む。自分は大きい斧のようなものを構えた門番らしき2人の大男に阻まれた。

「おまえの順番は次だ。もう少し待て。」


この大男の1人が言い放った。


『えらそうな態度を取る奴だなぁ?嫌な感じ。。。』


自分はチラッとその大男の顔を見てすぐに目をそらした。


それもそのはず、よくよく見てしまうとやばそうな感じの形相をしていたのだ。


それから自分の前にいる人に対して、訊いている内容がはっきりと聞えてきた。


「おまえは今までの人生において、何か悪いことをした覚えはないか?」


その人は、その問に対して、『ありません。』と応えていた。


すると、即座に『嘘をつくな。』と言い返されている。


しばらくのやり取りの後、その訊いた者が手を挙げると、即座に右手にいる恐そうな者に連れて行かれた。その先はどんなことが待ち受けているのだろう。順番を待っているだけで、ハラハラドキドキしてしまう。


自分の今までの人生を振り返る。


『自分のこの人生において、悪いことをしなかったなんて。。。、そんなことがあるわけないではないか。。。』


そして、ついにその声の主が見えた。


「次。」


ついに自分の番が来てしまった。自分はその声の主の前に進み出た。


「おまえは今までの人生において、何か悪いことをした覚えはないか?」


自分は出来るだけ正直に返事をするように心がけることにした。


「もちろん、ありますよ。嘘をついたことがあります。でも、あれは、人を傷つけないようにするための良い嘘だったと思いますが。。。」


「それは、どんな嘘だったのか思い出せるか?」


「はい。もちろんですよ。」


自分は不思議と落ち着いて、はっきりと応えていた。


「それじゃ、聞かせてくれ。」


「あの時、自分は。。。」


話し始めようとして自分はふと頭の中をよぎるものがあった。


『このまま正直に話して良いのだろうか?』


とまどう自分に対して急かしてくる。


「ほら、早く、どんな風に嘘をついたのか話せ!!」


「それは、。。。言えません。」



なんでだか、自分は強要されて話しをしたいと思わなくなってしまった。


「なんで、言えんのだ。嘘をつくことは、悪いことぐらい知っているだろう?」


「そんなことは、もちろん、誰だって知っていることでしょう。」


「だったら、話せ。」


「なんでそこまで強要されなくちゃいけないんですか?プライバシーの侵害ですよ。それに、自分はこの場では、嘘をついているわけでもありませんし。。。」


「そうか、そうか、わかったよ。それじゃ、他に何かあるか?」


「そりゃ、人間ですから幾らでもありますよ。」


「なぬ。そんなにあるのか?」


「まあ、全部は思い出す事はできませんが、かなり、あったように思いますが。。。」


「そうか、そうか。やはり、おまえはそうとう悪い奴だったんだな?」


「ええっ?そんなに簡単に悪い奴だなんて決めつけないで下さいよ。」


「いや、いや、おまえのことは全てわかっている。冗談だよ。実はおまえのような些細な悪いことをしたやつは、自己申告制で行き先を決めてもらっている。」


「自己申告制で、行き先を決める?」


「まあな。。おまえの場合、今までに大した悪さをしていないようだから、どこの行き先でもよいから、あそこに見える洞窟から1つを決めてもらう。ただし、選んだからには、今後100年間そこで過ごしてもらう。さて、おまえの行き先はどこにするんだ?」


「ちょっと、待ってください。じゃあ、なぜ、先程の人は連れて行かれてのですか?」


「ああ、あいつの場合は人間界で大罪を犯してきたからだ。ここでは、何もかもお見通しなんだよ。」


「そうだったんだぁ。。。それでも、。。。」


「この後に及んでまだ何かあるのか?」


「はい、ありますよ。」


「なんだ?早く応えろ。」


「自分はなんでこんなところにいるのか、さっぱり分らないんですよ。」


「なんだ、そりゃ?」


「だって、気付いたらここの洞窟にいたんですよ。」


「そりゃそうだ。ここは、ささいな悪事でもしたことがあれば、来てしまう場所だ。そんなやつらが通る場所だからな。」


「と、言う事は。。。」


「そうだよ。む、む。おまえは何も分かっとらんな。」


「何が、分かって無いと言うのです。別に、嫌な事はわかりたくもないけど。。。」


「ここで、行き先を決めなければ、どうなっても知らんぞ。」


「どうなると言うんです?」


「そうさな。だったらおまえの場合、ここにある牢獄に放り込んでやる。」


「そんなぁ。。。やれるもんだったら、やってみればいいじゃないですか!!」


売られた喧嘩は、買うしかない。言うことだけ言って、自分はぷいっと、そっぽを向いた。


「。。。。。」


しばらくたっても、相手からなんの反応も返ってこないので向き直ると、言い争っていた相手がそこにいなかった。


そして、自分の様子を見ていた別の門番らしき者が言った。


「今までおまえが言い争っていた相手が、どこに行ってしまったのか知りたいかい?」


「そりゃ、もちろん知りたいですよ。」


「それじゃあ、教えてあげよう。あいつは、さっきここの世界に『牢獄』があるはずもないのに有るなんて嘘をついたから、連れて行かれたよ。ここに『牢獄』なんて生易しいものがあるはずないだろうが、。。。あるのは、もちろん、。。。」


自分は相手の言葉を遮り、気になることをすぐに訊いていた。


「連れて行かれた?行き先はどこなのか知っていますか?」


「ああ、知っているよ。あいつはあの洞窟に連れて行かれて、今頃は嘘をつけないように舌を抜かれてるんじゃないかな?嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれちまうからな。気を付けた方が身のためだよ。」


それを聞いて自分の背筋は、『ぞぞっ』としてしまった。ここの場所では、いっさい嘘をつかずにいて良かったと、つくづく思ったのだった。


その後、その門番らしき者に洞窟を選ぶようせかされ、自分はやむなくひとつの洞窟を選んだ。


ただ、自分はひねくれ者だから、横にそれている洞窟を選んで進んで行った。


その選んだ洞窟の先は、。。。


そこには、ものすごく恐ろしい光景が広がっていた。


自分の目に飛び込んできた光景は、広大な針の山を歩く人々が。。。。


すぐさま自分は後ろを振り返り、入り口の方に向かって、大声で叫んだ。


「あのぅ?。。。進むべき洞窟を間違えちゃったようなので、他の洞窟に変えてもらえませんかねぇ?」




― F i n ―





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