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おまじない

こんなおまじないは、。。。

い、か、が?

※魔法の図書館(Telebookまたはlovely loveのニックネーム)で投稿している作品です。


おまじない


『ここに明るい色の、このものをこのようにおまじないを言いながら、置くと魔よけになり、幸運を導きます』


そこは、駅前の出店だった。しかし人だかりが凄い。どうも、有名なおまじない師のようだ。


私は、お店の前を歩いて通り過ぎようとした時に、大勢集っている向こう側からの声に導かれて、つい立ち止まってしまった。


『なんだか、いかがわしいようでもある』


そう思いつつも背伸びをして、しばらく見ていると、そのお店の女性はぶつぶつとおまじないを唱え始め、人を押し分けて店の両脇にかわいらしい鳥の置物を置いた。


「これだけで、幸運を導いてくれます。そして、なによりも、その家に相応しくない人やものなどが入ってこないようになります。例えば、押し売りのような人達も近づけなくなりますし、カラスのような鳥も家に近づけなくなります。ただし、家に帰られてから箱を開けてください。そうしないと、効力がなくなりますので注意をお願いします。なにかご質問はありますか?」


すると、どこからか質問の声が上がった。


「これは、あなた独自で作ったものなのですか?」


「ええ、そうですよ。自宅でこつこつと作り上げました」


再び、違う人から質問が投げかけられた。


「なんで、鳥なんですか?」


その女性は、不適な笑みを浮かべながら応えてくれた。


「良い質問ですね。それは、ここから嫌なものを『トリ』除いてくれる。また、良いものを『トリ』込んでくれる。と、ちなんで鳥が選ばれました」


「おお、なるほど。。。」


ほとんどの人達がそれを訊き、どよめき、頷いていた。


その女性は、その様子を見ながら続けて、言った。


「他にご質問はありますか?無ければ、どうぞ、購入していただける方はこちらにお並びください。手作りですから、あまり数がありません。ここにある箱の数だけで終りです」


限定とか、数がないという言葉のあおるような言い方に、つい乗せられてしまうのが、人間の性だ。


すると、すぐさま、人々はこぞって買うために列を作り始めた。


「この商品を買っていただいた方に限り、このおまじないの記載している説明書を差し上げます」


私もつい、つられて列に並んでしまっている。


8分ほどして、私の番になった。


「おいくつ必要ですか?2ヶで1セットになります」


「1セットでおいくらでしょうか?」


「¥1,980です」


「それでは、1セットだけお願いします」


「ご親戚などに配られてはいかがですか?」


さすがは、商売人だ。勧めることを忘れていない。


「いいえ、1セットだけで結構です」


意思を強固に、私は1セットだけ購入した。


それらは、白い小さな箱に入れられておさめられていた。


辺りを見渡しても、ほとんどの人達は1セットづつ購入していた。


早々、私は家に帰り、小さな箱から、かわいらしい鳥の置物を取り出した。


最近あまり良いことがなくて、悩んでいたところだった。気持だけでも、明るくなりたい気分だった。そこに丁度、このようなものを売っている店に出くわしたのだった。


何という偶然。何という幸運。


にんまりと微笑む私に、心なしか嬉しさの込み上げてくるのがわかった。


「これを置けば、家に相応しくない人やものが入ってこないようになるんだぁ。。。まあ、嘘でもいい。試そうじゃない」


そして、あの店の女性から手渡された鳥の置物と、箱の中にあった説明書を持ち、玄関の外に出た。


説明書を見ながら、ゆっくりとおまじないを唱え始める。


そして、その置物を玄関の両脇に置いた。


『これでよし。これで、幸運だけが私のところに舞い込んでくるようになるんだ。ふふん』


そう思いながら、このかわいい置物を置いただけで、いささか気持が明るくなったように思えた。


そして、家に入ろうとした瞬間。。。




『えっ、えっ??』


どうも、おかしい。


家に入ろうとしても、入れないのだった。


いくら、頑張って入ろうとしても、家の周りに見えないバリアか何かができたように、一歩も近づくことが出来なくなってしまった。


どうあがいてみても、無駄な努力に終ってしまうのだった。




そして、ハッと、気が付いた。


『もしかして、この家にとって私は。。。。?』




― F i n ―




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