伝記の一章
※これは、私の知人が私の世界観で執筆してくださった吸血鬼物語です。
※この作品は完成しており、すでに最終話までの掲載予約も済んでいます。私の、他の作品のように永くお待たせすることはありませんので、その点は安心してご閲覧ください。
※本作品は来月31日に全話アップ完了予定です。
古の昔、
大陸全土を支配した巨大な帝国が存在した。
その帝国の支配者には、一人の美しい娘がいた。
皇帝はその娘、すなわち帝国皇女を目に入れても痛がらない程に溺愛していた。
しかし皇女は、11歳の誕生日に病没してしまう。
皇女の清らかな御霊は、天帝を頂点とした天空の神々に気に入られ、
すでに天に召されていたため、
いかなる高徳の僧侶によっても皇女が復活することはなかった。
しかし皇帝にそんなことは関係なく、
皇女の蘇生に失敗した僧侶はことごとく処刑された。
やがて皇帝の怒りを恐れ、皇女の蘇生を引き受ける僧侶はいなくなった。
それでも諦め切れなかった皇帝は、帝国全土の魔術師や錬金術師を集め、
死者蘇生の秘術を編み出し、皇女を冥府より呼び戻そうと試みた。
そうして皇女の死後、ちょうど7年の歳月の果てに、夥しい“実験”の末に死者蘇生の秘術は完成し、
氷柱の中で保存され、生前の美しさを微塵も損ねていない皇女の亡骸に、
皇女が生きていればちょうど18歳の誕生日となる日の前日に、
死者蘇生の秘術が施されることとなった。
はたして秘術は成功し、亡骸であった筈の皇女の瞳がゆっくりと開いた。
皇帝は皇女の蘇生に泣き叫び、皇女に抱きついた。
抱きついた“もの”が、
娘どころかすでに人間とすら呼べないものになっていたなどと夢にも思わずに。
禁忌の領域をすら省みぬ魔術、数多の命を代償とした実験。
そうして編み出された秘術によって目覚めた“皇女”は、目覚めてよりまず、抱きついてきた者の顔を握りつぶすことをその一とした。
その場に居合わせた魔術師たちが悲鳴を上げたが、次の瞬間には巨大な魔力のうねりを放ち、そのうねりにてことごとくを肉片として消し飛ばすをその二とした。
そうした後に天に向けて咆哮し、
帝都のありとある者の血を啜り、己が眷属に堕させるをその三とした。
彼の者、天の祝福と地獄の呪詛をもって螺旋とする存在なれば、
剣は元より悠久たる時の流れすらこれを滅ぼすに値わず。
かくて、世に不死の“真祖”誕生せり――
『帝暦の落日』より抜粋




