謝罪と遺書
無音の中
最初に口を開いたのは魔王だった。
「お前にずっと渡したかった物があるんだ・・・」
魔王が胸元のポケットから出したのは、白い封筒と少し錆びたピンだった。
「鱗禄の遺品だ。手紙は執事長室にあったのを龍鬼が見つけた。俺とお前、あいつらの4通、きちんと揃えて入ってたってよ。」
そこにあったのは、間違いなく鱗禄の繊細な字だった。
「俺のせいなんだ…あいつが死んだのは・・・すまない!」
魔王は、来靭に深々と頭を下げる。
どうしながらも冷静にその姿を見つめる来靭がそこにいた。
魔王と鱗禄、そして仲間達は天界に突入すると天使の集団に遭遇。そのまま、戦闘状態になだれ込んだ。
鱗禄は、腰元にさげていた剣を出すと、風が通過するかの如く天使達を始末いていく。
魔王も剣に魔力を溜めながら、天使達を始末していくのだが・・・
「魔王様!」
鱗禄が、魔王を庇う様にして立ち塞がった瞬間、無数の矢が彼の身体を貫いていった。
魔王は、周囲を囲んだ天使達を一気に振り払うと、結界を張り、鱗禄の怪我を治そうとしたのだか・・・
「私は・・・どうなっても構いません・・・魔王様は早く・・・作戦を・・・」
「鱗禄、お前な!」
「私は・・・執事です。魔王様を守り、サポートする為にいる存在なのです・・・」
鱗禄はこう言いながら立ち上がった。
「魔王様は…生きてください・・・この争いを止める・・・為に・・・」
そして、鱗禄は結界を飛び出し、敵陣に乗り込んで行った・・・
来靭へ
この手紙は、私からの最後の言葉だと思ってください。
必ず主となる方を守りなさい。
貴方は、頑張りすぎるところがあります。それに技術が伴わなくて、空回りしていた事もありますね。
厳しい言葉なのかもしれませんが、それが私の中に映る貴方です。
しかし、それが貴方の良い部分なのだと思います。
気持ちを読み取り、答える事のできる目を貴方は持っています。だから、少々型破りでも構いません。
貴方らしく、主となる方の気持ちを汲み取って差し上げなさい。
そうすれば、きっと貴方は良いメイドになれますから。
「執事長・・・」
来靭は、手紙を握り締めながら泣き崩れた。
その頃
「むにゃ・・・」
「やっと起きた(笑)」
桃花がゆっくりと眼を覚ます。
しかし、あのくまの人形がないことを思い出すと、今にも泣きそうな状態であった。