相棒と友達と・・・
桃花と柚子は、来靭に連れられて街中をそそくさと歩いていた。
数分歩いた後、ある立体駐車場にたどり着く。
「来靭姉さん・・・どこにいくんすか?」
「うん?ここに私の相棒がいるんだ。」
「相・・・棒・・・?」
「あぁ。そいつを見つけたら、この街からつらかる!案内したい場所は、相棒と一緒に行ったほうが早いからさ。」
そう話しているうちに、彼女達は一台の車の前に到着した。黒色のスポーティーな外車。来靭は腰元につけていた小さなリモコンのようなものを車に向けロックを解除する。
「こいつが相棒。さ、早く乗り込め。嫌な予感がする・・・。」
来靭はそういいながら、桃花を乗せ、柚子も乗せ、自分も乗り込もうとしたその時だった。
来靭のこめかみに冷たい感覚が広がっていく・・・。
「桃花様と柚子様を車から降ろしてもらおうか、来靭・・・。」
助手席の窓ガラスに映ったのは銃を向けた黒髪の男・・・緑虎だった。
緑虎は来靭を助手席まで押し込むと、後部座席のロックを解除。桃花が座る右側のドアを開けて龍鬼が桃花と柚子に車から降りるように促した。
「私・・・降りない。」
「俺も・・・絶対に降りない(怒)」
「早く、お降りください。それに、そのような格好では風邪を引かれてしまいます(焦)」
「大丈夫・・・だから。」
「好きで着てんの(怒)」
「しかし・・・」
桃花も柚子も頑として降りようとはしなかった。
「ハハハ・・・(笑)」
「何がおかしい、来靭(怒)」
「相変わらず、つめが甘いな・・・護衛隊長さん(笑)」
来靭のその言葉と同時に、緑虎は外に弾き飛ばされ、コンクリートの壁にドンッと音をたててぶつかった。
「緑虎!」
「ちょっとそこ動かないでくれる?手もドアから離して。」
龍鬼の背後に、赤い髪の女が銃を突きつけて立っていた。
「いい男ね。でも、女の子にウザイと思われたら、終わりね。」
「私は、桃花様と柚子様の執事です。姫様がどう思われていようとも・・・。」
「そう?じゃ、しかたないわね。」
女は、龍鬼の耳元で何かを囁く。すると龍鬼は気を失うかのようにその場に倒れこんだ・・・。
「龍・・・」
「お兄さんも動かないの(笑)」
動こうとした緑虎の腹をピンヒールで思いっきり踏みつけながら、金髪の女がそういって銃を突きつける。
「どけ、殺すぞ(怒)」
「フフッ(笑)殺すなんて・・・その状態でよく言えたものね。」
緑虎の腹はどんどん黒い血の色に染まっていく。
「お兄さんかっこいいけど、しつこそうだから、きら~い!」
女はそういいながら、腹から足をどかすと、同時にその足ですばやく横から顔に蹴りを入れた。
吹っ飛んでいく緑虎を横目に女達は、来靭の車に乗り込んだ。
「ごめんなさ~い!ちょっと迷っちゃった(笑)」
「私は、お仕事てこずっちゃって(笑)」
「まぁいい。行くぞ。」
まだ状況が把握できていない桃花と柚子そっちのけで、車は出発した。
「あ・・・あの・・・来靭・・・姉さん。」
柚子は、恐る恐る来靭に声をかける。
「どうした、柚子。」
「この・・・女の人達は?」
「あぁ。紹介してなったな。こいつらはあたいのダチ。赤い髪の奴が陽菜、助手席座ってるこいつは月星だ。あと、こいつら“人”でもないし“女”でもないからな。」
「女の人じゃ・・・ない?」
桃花は不思議そうな顔で陽菜のことを見つめると
「そうよ。私達、悪魔だけど“男”なの。でも、心は“女”よ(笑)」
と言い放った。
頭がさらに混乱する柚子を横目に、きらきらした眼で陽菜を見つめる桃花。その光景を見て、ハハハと来靭は運転しながら笑っていた。
「話は~大体、来靭から聞いてるわ。ようこそ人間界へ!」
そういうと、月星はバックからペットボトル2本を取り出し桃花と柚子に渡した。