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あれから四年…



あんなに上手くいっていた二人の関係に微妙な空気が流れ始めのは新生活が始まってからだった。

俺は研修のため3月中旬から会社に行き始めた。研修日初日、慣れないスーツに香奈に貰ったネクタイをしめて会社へ初出勤した。


そして4月になると仕事も本格的になり帰りも遅くなりはじめ、県外の大学に通い始めた香奈とも時間が合わなくなり、自然と逢う時間も少なくなった。


久しぶりに時間が合うと食事をし、その後手をつなぎながら街を歩いた。

時には一人暮らしを始めたお互いの部屋へ行き、夢中で抱き合った。


しかし久しぶりに逢うと、待っていたかのように深緑の彼女が姿を現す。香奈も努力しているがだんだんそれも疲れてきているようだった。そして正直俺もうんざりしてきていた。



「香奈は俺のこと本当に好き?」

うんざりした気分でつい口から出てしまった言葉が、香奈を深く傷つけたのは言うまでもない。


「なんで?なんでそんなこと言うの?あたし紘平が好きだよ」

薄緑色の瞳に涙を浮かべ香奈が俺を見ている。


「ごめん」

あまりに突然すぎる言葉に、俺自身も驚きうつむいて謝った。

「……正直あうたびに現れるのがしんどいんだ。香奈が頑張ってるのは分かってる。だけど……」


「紘平とあうとすごくうれしい、でも同時に出てこないかって毎回すごく不安なの。紘平とあってる時少しでも意識が飛んでるとすごくやなの、気がついた時の紘平の顔を見るのが怖い。こんなあたし嫌いだよね」


香奈は瞳にたまった涙を流して謝った。

「ごめんね……」


「俺香奈が好きだ」

人気もまばらな公園のベンチで、涙を流す香奈の手を握りしめ肩を抱き寄せた。

「なんで……前世なんて消えてなくなっちゃえばいいのに。なんで邪魔するの……もうやだ」


香奈は自分の頭を拳で叩きだし、俺はその手首を掴んで止めさせた。俺の胸元に頭をつけ「もうやだ」と泣き続ける彼女を抱きしめ、事の発端を口にした自分を責めた。




その日を境に、お互いの時間が忙しくなり自然と二人の距離はあくようになった。会えるのは二週に一回、1カ月に一回とだんだんとあう時間が開き、やがて俺らは自然に別れた。



一度メルアドが変わったとメールが来たが、それ以降全く連絡を取ることはなかった。





高校を卒業し2年たった年の暮れ、久しぶりに正士から誘われ居酒屋であった。



「やっと就職決まったよ。来年からは俺も社会人だ、お前と一緒!よろしくな」

ビールでひとまず乾杯をしお決まりの近況報告をした。


「で、お前秦野とはまだ続いてんだろ?」

「別れた」

「あっそうなの……わりい」

「いや、もうしばらく経つし……」


香奈と自然消滅してからだいぶたった。だが、俺は携帯から彼女のアドレスと携番を消すことはできなかった。しかも彼女から連絡が来る事を少しだけ期待している自分がいるせいか、アドレスはずっと変えずにいる女々しい俺。



「新しい彼女は?」

「まだ。仕事忙しくてそれどころじゃないし、欲しいとも思わない」

「そっか、やっぱり仕事って大変だよな。ヘラヘラしてられんのも今のうちだな」

ジョッキを空けていると、正士の携帯に電話がかかってきた。

話をしている内容と正士の顔から想像するに、電話の相手は女らしい。


電話を切った正士に「彼女か?」と聞いてみた。するとやや赤い顔で笑い頷いた。


「なんだよ言えよ。でどんな子?」


興味津々で正士に聞き始めた。正士は恥ずかしながら嬉しそうに彼女のことを話してくれた。そして聞いてびっくり。相手は高3ん時の文化祭でアドレスを聞いてきた彼女だった。合コンで偶然あいつき合うようになったらしい。


「お前尻に敷かれそうだな」

「そう思う?実はそうなんだよ。もう彼女可愛くてっ」

デレデレと鼻の下を伸ばしながら一生懸命話す正士が面白かった。



その後、俺にも彼女らしい子ができたがなぜかあまり続かなかった。





そして香奈と自然消滅的な別れ方をしてから4年が経とうとしていたあの日、街で偶然彼女にあった。



偶然見つけた顔に俺は驚き足を止めた。

出張で来たこの街。会社へ帰る途中寄った店を出るとよく知る彼女の顔があった。


なんでこんなところで……。



「こうへ……町田くん」


彼女も驚き足を止めた。

もう『紘平』とは呼んでくれないんだ……。そうだよな、ずっと前に別れてるし。ちょっと期待した俺は情けなさに悲しくなった。バカか俺は……。


少し寂しい気持ちで彼女を見て俺も「秦野久しぶり……」と言った。


何だろう。

彼女が微笑んだ時、なんだか違和感があった。

もう一度秦野を見ると、あんなに綺麗な薄緑色した瞳が黒かったのだ。


そして左手の薬指には指輪が光っていた。



「結婚したんだ。おめでとう」

香奈は左手の薬指を隠すように右手を重ねると小さな声で「……うん」と言った。


なんでだろう?

おめでとうといった割りには心の中がもやもやとし、素直に祝福できていない俺がいた。

祝福してあげなければいけないのに気持ちがそれを拒否した。



「来月の同窓会来る?」

そんな気持ちが顔にでないように話題を変え話しかけた。


「うん、行くよ。町田くんは?」

「俺も行く予定」

「楽しみだね」


短い会話をして俺達はそれぞれ帰った。





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