前編
2話完結です。
「パパ、行ってきます」
「ケイシー、本当に1人で大丈夫かい?」
駅の構内で心配そうな父を見る。
「私も15歳になったのよ。来年は王都の学園に行くんだから大丈夫よ」
心配そうな表情の男はケイシーの父親だ。列車に乗り込もうとする娘へ1通の手紙を渡す。
「親友の家についたら渡すのだよ。しかし、本当に大丈夫かい?」
ケイシーは問題ないと父親に告げ、手紙をカバンの中に入れる。そして出発を告げるベルが鳴る。
「出発だね。ケイシー乗って。楽しい王都になる事を祈っているよ」
「パパ、お土産を買って帰るわね」
列車の扉が閉まりドア越しに父へと手を振る。そして、ケイシーを乗せた列車はゆっくりと走り出すのだった。
「さて、私の席は……」
車内を自分の席を目指して歩く、途中で車掌に会うと席を教えてもらい席に着く。
「後戻りは出来ないわ」
ケイシーは窓の外を眺める。
ケイシーが列車で向かう先は王都だ。ここ数年で交通の便は整い、港町から王都まで馬車ならば5日間はかかる道のりだったが、列車ならば出発した日のうちに王都へと到着するのだ。
「もう私の街を出ちゃったわ」
今回、王都へ向かうのは、婚約者と直接会い、2人の関係性をはっきりさせるためだった。
窓の外を眺めながら婚約者ユリウスを思い浮かべる。
ケイシーにとって2歳年上のユリウスは、優しく面倒見の良い兄の様な存在であり、初恋の男性だ。婚約後、ユリウスが王都の学園に進学するまでは仲良く過ごし関係性は悪くなかった。
列車はケイシーとユリウスが生まれ育った港町を出てゆっくりと海岸線を走り、トンネルの中にはいる。
車内には淡い光が差し込み、窓は鏡の様に自分を写す。
今日のケイシーは、卸したてのワンピースと使用人が結った栗色の髪は、いつもより少しだけ大人の女性へと変えた。窓に映る自分を見つめた。そして、胸のブローチが車内の光でキラリと光った。
ブローチを外し眺めながら瞳を閉じる。そしてブローチを握りしめユリウスとの関係を整理する。
ケイシーが13歳の時に幼馴染だったユリウスと婚約した。ユリウスは港町の領主である侯爵家の三男で人柄もよく穏やかな15歳の青年だった。
ユリウスは中学を卒業後、王都の学園で経営学を学んでいる。
順調だと思っていた関係に翳りが見え始めたのは、ユリウスが王都に行って半年が経った頃だ。月に2回の手紙が1度になった。婚約して2年が経つと手紙の返事は1.2か月に1度だ。最後の手紙は2ヶ月前の6月、ケイシーが15歳の誕生を迎えた月だ。
プレゼントに同梱されていた手紙には、誕生への祝いの言葉、8月からの夏季休暇には忙しく帰省できない事の謝罪の他に、王都の友人と一緒に選んだ事が書かれていた。
ケイシーはユリウスからのプレゼントと手紙に記されていた『一緒に選んだ友人』が気になっていたのだ。今までに届く手紙にも『友人ができた』『友人に観光案内してもらった』『友人らと旅行に行ってきた』と書いてあった。王都の学園に進学してからのユリウスとは、物理的な距離以上に何か他の距離ができているような不安に襲われていた。
ケイシーは考えた。ユリウスが忙しいなら自分から行けばいい。そして、この漠然とした不安を取り除くため、夏休みを利用し王都に行く事を決心したのだ。
もちろん、両親は反対した。ユリウスの両親に確かめると言ってくれたが自分で確かめると言い張り、今回王都行きを決めたのだった。両親は友人の家への滞在を条件に王都行きを許したのだった。
先月、ケイシーはユリウス宛てに王都へと行く事と滞在先を手紙で伝えたが返事は来なかった。今回の王都での2週間の滞在が自分にとっての転機となる。
無意識にブローチを強く握っていたが、突然明るくなった車内にハッとし手の力を抜き窓の外を見る。
トンネルを抜けたの窓の向こうは、夏の日差しを受け大きく育った向日葵畑と雲1つない青空が広がる。
ケイシーはブローチを眺めながらぽつりと呟く。
「ユリウスは何故、この色を選んだのかしら」
ブローチの中央にはピンク色の石がついており、石の周囲を可愛い小さな花の細工で囲っている。今までユリウスからのプレゼントは、ペンや髪留めであった。そして色はいつも決まっていて、大好きなユリウスの瞳と同じアイスブルーだった。
ブローチを再び胸に飾り、外の景色をぼんやりと眺める。
列車はスピードを緩め、大きな街で停車する。客の乗り降りを眺める。ケイシーのお腹から可愛らしい音が鳴る。時刻はお昼だ。屋敷の使用人が持たせた飲み物とサンドイッチを食べながら、行き交う人々を眺めた。
その駅から乗る沢山の手荷物を持つ40代位の夫婦と同席になる。
車内を見渡すと席は空いている。何故、同席なのだろうかと向かいに座る美しい夫婦を見つめる。ケイシーは夫人と目が合い顔を赤くし頷いた。
父から言われていた事を思い出す。父からは「王都には優しい言葉で連れ去ろうとする悪い人もいる。知らない人には気を付けて。自分の名前と出身は話さない方がいい」と言われていた。空いている席に荷物を置いていいことを伝え、瞳を閉じ列車の音を聴く。
ケイシーは、列車のカタンコトンと一定のリズムと心地よい揺れに眠ってしまったようで、夫人に声を掛けられて目を覚ます。列車はもうすぐ終点の王都に到着するようだ。本日は、父の親友の家に向かうのが目的だ。
到着した王都、駅の改札口を出ると目の前には大きな建物が並ぶ。
「大きい……でも綺麗……この街にユリウスがいるのね」
よく晴れた青い空と太陽が街を輝かせていた。駅前にある大きな時計は15時であった。
同席した夫婦は、ケイシーに目的地まで送ろうかと言ってくれたが丁重に断った。父からは「知らない人には着いて行かない様に言われていたからだ」残念そうに夫人は、駅前に停まる立派な車へと乗りこむのだった。
近くにベンチを見つけ座り通り過ぎる人達を見つめる。日差し除けの帽子を被り立ち上がる。
ケイシーは来年からはユリウスと同じ学園に通う事となる。来年はユリウスと仲良く登下校したり、街歩きができると想像する。嬉しい気持ちと同時に少しの不安が胸をチクリと痛ませた。
駅で交番の場所を聞き、歩き始めるケイシーは通りの店を窓越しに眺める。通学路には子物屋が沢山あると手紙に書いていた。
行き交う人々は家族連れ、老夫婦、恋人達が楽しそうに歩いている。
「この道をユリウスは誰と歩いているのかしら。1人? それとも友人?」
10分程歩くと大きな建物が見えた。
「駅員さんは通り道に大きな図書館があると言っていたわね」
建物の前で一旦足を止める。
「ここがユリウスの手紙にあった図書館ね。確かに大きいわ」
放課後、図書館で勉強している。沢山の本がありケイシーも楽しめるだろうと。王都に行って最初の手紙に書いてあった。
ここで勉強したり、資料を探すユリウスを想像する。しかしケイシーの頭の中には誰と来ているのだろうか、誰と勉強しているのかと、不安の方が頭をよぎる。
大きく深呼吸し再び、歩き始めるケイシーは思う。王都の人は歩くのが早い、どんどんと追い抜かされ、時にはぶつかってしまう。時折、舌打ちまで聞こえ、港町の活気とは違う人の多さと冷たさに王都には来るなと言われている気がして悲しくなってしまった。そして春からの王都生活に不安を覚えたのだった。
ケイシーは15分程歩き、警官に教えてもらった一軒の大きな屋敷の前で立ち止まる。立派な門に手入れされた花壇には沢山の向日葵が咲いてる。
「さすが王都ね。案外パパの親友って凄い人だったりして」
ドアノッカーで訪問を知らせる。
ドアを開け対応するのは老人の執事であった。鼻の下には髭を蓄え、背筋を伸ばしピシリと立つ姿に圧倒される。ギロリとケイシーを見る。
「初めまして、本日よりお世話になる、ケイシー・ランチェスターです。父から手紙を預かりました。これは港町で一番美味しいお菓子です」
名を伝えると執事の目元は下がり、手紙と手土産を受け取り、ニコニコとケイシーを応接室に案内する。
「旦那様、奥様。大変可愛らしいお嬢様が到着しましたよ」
「初めまして、ケイシー・ランチェスターです。本日よりお世話になります。滞在中はご迷惑をおかけしないように努めます」
直角にお辞儀するケイシーであった。
「顔を上げて。同席したお嬢さん」
ケイシーは顔を上げ屋敷の主人を見る。
「あっ……」
そこには列車で同席だった夫婦がいたのだ。公爵夫婦は父からの頼みで、滞在許可だけではなく、心配し途中の駅から同席してくれていた。さらに駅から車で送ってくれようとし、ケイシーが断ると屋敷まで無事に到着できるよう護衛をつけてくれていた事を教えられた。列車内と駅前で夫婦を怪しんでいた事に恥ずかしくなる。その上、1人旅を心配した両親も護衛を同乗させていたことを知り、嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなる。そして、王都の人の多さに圧倒され恐怖を感じていたが、自分を心配し見守ってくれる人達がいた事に安堵し涙をこぼすのであった。
「公爵様、ありがとうございます」
ケイシーは思う、沢山の人に心配をかけての王都旅行となった。必ず王都でユリウスと直接会い、関係をはっきりさせようと誓うのであった。
ケイシーは夫人に屋敷内の説明を受ける。そして滞在する客室を案内された。そこで夕食まで休むように言われるも窓の外は明るい。
「明日から王都観光ね……ユリウスに会えるのかしら」
◇◇◇
「おばさま、行ってきます」
公爵夫人はケイシーを見送る。茶の準備をして応接室にいる夫の元に向かう。
ケイシーは王都に来て12日目を迎えたのである。そして、夕方に必ず行く公園がある。
ケイシー滞在先の公爵家ではケイシーが婚約者との関係を見つめ直している事を知り見守る事にしていた。
「あと、2日ね」
「そうだな、気持ちの整理が着いたのだろうか」
「ケイシーちゃんなら乗り越えるわ」
「そうだな」
◇◇◇◇
ケイシーは公爵家を出て、図書館への道を歩く。
大きな道路を挟んだ通りの向こう側からは、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。下校する学生たちだ。交差点で立ち止まる。人通りも多くなってきた。王都に到着してから自分が歩くのが遅いと自覚している。邪魔にならない所で信号待ちをしながら学生達を眺める。
港町で、ユリウスと共に下校した日を思い出す。手を繋ぎドキドキしながら歩く帰り道と寄り道し買い食いした日を懐かしむ。
ユリウスも誰かと下校しているかもしれない。一瞬、下を向き自分の靴を見つめるも再び前を向く。
ケイシーは、下校する学生らを見ていると男女数人のグループが楽しそうに話をしながら歩いているのが見えた。その中に、キラリと光る髪が見えた。
仲良く歩くグループの中に婚約者であるユリウスを見つけたのだった。
「あれは……ユリウス」
遠目でもわかる昔から変わらない大好きなユリウスだった。
ユリウスは友人達と楽しそうに向こう側の歩道を歩いていた。そして、一瞬行き交う車越しにユリウスはこちらを見た。ケイシーは自分に気がついたのかと思い、ユリウスの名を叫ぼうとした。
しかし通りの向こうでは一緒に歩くグループの1人の女生徒がユリウスの隣へ近づくのが見えた。その女生徒は甘えるようにユリウスの腕の中に収まり抱きつく。ユリウスはゆっくりと歩きながら女生徒と話し出しながら横断歩道を渡る。
――ねぇ、ユリウス……その人は誰なの?
ケイシーの心臓はバクバクと音を立てる。
通りの向こうにいるのは確かに婚約者のユリウスだ。ユリウスは横断歩道を渡り終えると立ち止まり、女生徒と手を繋なぎ歩き始める。ケイシーがここ数日間、毎日見る光景である。
素直に感じたのは、ユリウスと女生徒の髪に太陽の光が反射し、キラキラしていて綺麗だと他人事の様に思えた。
毎日、あの2人の姿を見ている時は頭の中は真っ白だった。ただ自分の心臓の音だけがドクドクと頭に響いている。
ユリウスが王都に行ってから頻繁に来ていた手紙は少なくなった。ユリウスが1年生の時は長期休暇には港町へと帰省していた。それが冬休みは課題があるからと短期間の滞在だった。春休みは新学期の準備があるからと帰省はせず、今年の夏季休暇も戻らないと手紙に書いたユリウス。戻らない理由とブローチを誰と選んだのかがわかった。
あの女生徒は、ただのクラスメイトではない。
『ユリウスは王都で恋をし楽しんでいる』それが答えだと理解した。
小さく震え動けない。何もない空間にただ1人だけいる感覚だった。チカチカとする視線の先には幸せそうに歩く恋人。しかし男性側は婚約者ユリウスだ。
2人は公園に向かい歩き始める。ケイシーは横断歩道を渡たりユリウスの方へと向かう。昨日まではただ見つめるだけで終わっていた。しかし、今日は違った。
ケイシーの心の中は混沌とした状況だ。
幼い頃から一緒に遊び、婚約者となった。いつも優しく笑顔のユリウス。王都に行く際、沢山勉強して一緒に商会を継ごうと言っていたユリウス。優しく頭を撫でるユリウスの大きな手が大好きだった。私に向けられいた笑顔も、優しい手も今は私ではない女性に向けられている。彼のアイスブルーの瞳が見つめる先は自分ではない。
彼は私の……私の婚約者なのに。
本当ならば、不安は杞憂として終わるはずだった。
ケイシーの実家は、港町で1番大きな商会の一人娘だ。その為、商会との縁を結びたい侯爵家からの打診で、幼馴染であったユリウスと婚約した。ケイシーが王都の学園を卒業後、ユリウスが婿入りする形での結婚となる。
ケイシーは、ユリウスが彼女をどうする気なのか、自分との関係をどうしたいのかわからなくなった。わかっているのは、ユリウスは王都で浮気をしているという事実だけ。
ガラガラと何かが崩れ落ちる感覚に襲われる。
ユリウスと友人らは公園へと向かう。
ケイシーは、ユリウスの元に向かおうと足を一歩踏み出そうとするも、その足は震え、フワフワと宙に浮いているような感覚であった。周りの音は何も聞こえない。聞こえるのは自分の心臓の音とズキズキと痛む心の音。そして視線の先に見えているのは、自分以外の女性に楽しそうに笑いかけるユリウスの姿。
先を歩く友人らは大きな声で2人に声を掛ける。
「ユリウス、マリア。またな」
友人らに手を振る2人は、再び見つめ合う。
そして、奥まったベンチに座るユリウスは隣に座る女性徒に制服の襟を捕まれ2人は口付けを交わした。抱きしめ合う2人が丸見えだった。その姿を見て涙が溢れる。
ケイシーは勢いよくグルリと方向を変え踏み出したのと同時に1人の男に腕を掴まれ我に返るのだった。
「おい、危ないぞ。どこを見ている」
腕を掴まれたケイシーは男の顔をみる。
「ジョシュア様……」
「ケイシー、今日はこの距離まで来れたのか?」
「明日、家に戻ります。結局、ユリウスからは何も連絡は来ませんでした。王都からも手紙を出したのですがね。やはり、あの2人は恋人なのですね」
「すまないな」
「ジョシュア様……いいのです。見てください、彼らは幸せそうです」
ジョシュアは先日、クラスメイトのユリウスに遠回しに故郷の事を尋ねたのだった。ユリウスは卒業後に地元に戻り、幼馴染の両親が営む商会を譲り受けると話していた。それにマリアは自分も着いて行くといい、否定するユリウスを無視してマリアは向こうで一緒に暮らすと話していたのだった。
ジョシュアは、この事を両親に話していた。ケイシーに話すかどうか判断を待っていたのだ。
ケイシーは歩き出す。向かう先はただ一つ。
「あの……ユリウス様?」
ユリウスは声をかけられた方向を見る。
「……いや……あの……ケイシー……」
ユリウスは青褪める。何故なら、自分の隣のマリアと距離をとる。
「ケイシー……いつここに?」
「それは、いつから王都にいるのか? ですか、それとも2人の状況をいつから見ていたのかですか?」
「いや……それは……」
ケイシーは12日前から王都にいて、2人が手を繋ぎ下校するのを見たのは10日。2人が公園で仲良く過ごしているのが見えたのが5日間。2人が口付けを交わすのを見たのは3日間だと心の中で叫ぶ。
「ケイシー……誤解している」
その時、マリアがケイシーに声を掛ける。
「貴方がケイシーちゃん? 可愛い子ね〜。ユリウスの幼馴染だと聞いたわ。そのブローチは気に入った? 私とユリウスで選んだのよ」
ケイシーはマリアの顔をみる。目の前の女性は、ブローチの石と同じピンクの瞳であった。マリアはケイシーに会えた事を喜んでいる。
優しそうな人柄が表情に現れているマリア。その横には青褪めるユリウスがいた。
「卒業したら私もユリウスの故郷へと行くの、そしてね。け――」
途中で話を遮るユリウスであった。
「ケイシー……私の話を聞いてほしい」
「ユリウス。明日、帰るのさよなら。お幸せに」
ユリウスは、その場を去るケイシーを追いかけるのだった。
「ジョシュア……もしかして、ユリウスは」
「俺の口からは言わない。恋人のユリウスに聞いたら?」
ジョシュアもゆっくりと歩き出すのだった。
◇◇◇◇
「ケイシー、待って……これには」
ユリウスは自分の元を去るケイシーを呼び止める。
「……ユリウス? 何? 誤解と言わないよね。毎日、手を繋いで帰り。公園ではキスをする仲なのでしょ」
「……何故、言ってくれなかった?」
「言う? 手紙を出したのよ。ここに来る前も王都でもね。他に好きな人ができたのなら……何故言わないの? 彼女をどうする気だったの? 貴方は婿に来る事で商会を……もう終わった事ね」
「僕は……」
「ユリウス婚約は解消よ。彼女と共に生きればいいのよ。彼女を愛しているのでしょう?」
「ケイシー、ごめん。聞いて、僕はマリアとは――――」
「言わないで、聞きたくないの。私はユリウスが大好きだったの……さよなら」
走り去るケイシー、ユリウスはその場で立ち尽くす。
「おい。ユリウス」
「ジョシュア、知っていたのか?」
声を掛けたのはジョシュアであった。
「ケイシーは男の実家で過ごしているからな、最初は遠くから泣いて見つめていた。 心配した両親から監視役を頼まれた。今日は自分の気持ちにケリをつけたのだろうな。婚約者……いや、男としてケイシーに対して失礼ではないのか? マリアにもだ」
「俺は……ケイシーは可愛い妹みたいな存在で――マリアともその様な関係ではない」
「ケイシーが婚約者だ。不安にさせるな。お前は婿入りの予定だろ」
「ケイシーなら……」
「自分を好きなら他に恋人を持つ事を許すと? 夫が恋人を愛するのを側で見る事が幸せだと?」
「……マリアとはそんな関係ではない」
「じゃあな」
ジョシュアはその場を後にした。
ケイシーが王都から故郷へと戻りすぐに婚約は解消ではなく白紙となった。すぐにケイシーからの手紙を読む。自分を気遣う気持ちと会えない寂しさ、同じ学園に通うのを楽しみにしていた事が綴られていた。
両親は自分を叱った、しかし勘当はされなかった。ケイシーから幸せな2人を応援してほしいとの願いから婚約を白紙として欲しいと願ったのだと言う。そしてケイシーは、王都の学園には入学しては来なかった。卒業と同時に15歳年上の男性で故郷の港町とは正反対の南国の街へと嫁いだ。
ケイシーの実家の商会はケイシーの従兄弟が後継者として育てられる事になった。
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