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王立騎士団の分割と、島ギルド・マイノスとの出会い << マイネ 5 >>

ゲームの中の出会い  << マイネ >>

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王立騎士団リーダー セルバートの村に着く << マイネ 2 >>

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国語の授業とセルバートの家 << マイネ 3 >>

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魔道士ヨーネスとの出会いと、王立騎士団の役員紹介 << マイネ 4 >>

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 王立騎士団と王国政権に和平が成立したことにより、王立騎士団に束の間の平和が訪れた。


 王立騎士団は勢力拡大に積極的だったので、王国政権と戦争中も、周辺の砦や小都市への侵攻を続けていたが、最も大きな敵対勢力が無くなったことで、その後の方針を考える時期にきているようだった。


 その一つの案として、イザベラをギルドリーダーとして独立させ、ゴールネス率いる商人ギルドと同様の、サブギルドをもう一つ作る案が浮上していた。

 イザベラのセルバートへの忠誠心は、他のプレイヤーとは別格で、彼女の死を恐れぬ戦いぶりは、彼女の下で戦いたいという狂信的なプレイヤーも増えていた。

 セルバートにとって、戦闘に熱狂的なプレイヤーは、自分の下で働かせるよりもイザベラの下で働かせた方が扱いやすいことからも、自分のサブアカウントで作ったサブギルドを与えても良いと考えるようになっていた。

 ただもう一人、ロゲルナという軍事担当者も、サブギルドの設立許可を求めていたので、さすがに3つのギルド分割は勢力を弱めかねないと二の足を踏んでいた。


 そんな中、ギルド本拠地近くの小都市スアンに、ダンジョンイベントが度々報告されるようになってきた。

 王立騎士団は、近隣の小都市スアンのも含めて、各地のダンジョンに部隊を派遣した。

 ヨーネスも魔法都市ライツ近郊のダンジョンに旅立つことになり、僕とフェアリーは、今後どうしようかと改めて話し合った。


 「ヨーネスは、ダンジョン探索を終えたら、またセルバートの村に戻ってくるといっていた」


 僕は食堂でオレンジジュースを飲みながら、フェアリーに話した。


 「どうだろうね。ヨーネスはかなり強くなったわよね。今じゃセルバートより強いかも知れない」


 フェアリーは周囲の人に聞こえないように小声で話した。

 僕も少し声を潜めて話した。


 「うん。相当課金しているね。でも僕は無課金だから、彼のようには強くなれないな。彼くらい強いと、この村にいる必要もなくなってくるかもね」


 僕が言うと、フェアリーは同意しながらも、こうも言った。


 「ダンジョンイベントは、無課金の人でも急激に強くなるチャンスがあるわよ。私たちもどこかに行かない?」


 僕は嬉しくなり、「うん、行ってみよう。来週あたりに行ってみようか」と、心を弾ませた。


 一方、現実世界の学校の方は、特に変わったことはなかった。

 勉強は得意とまでは言えなかったが、苦手ではなかった。

 日頃から勉強するように言われていたので、テスト前は勉強した。

 そして中の上くらいの成績は取れた。

 ただテスト前しかしなかったことが、その後、僕を苦しめることになる。

 部活の方は相変わらずだった。

 インターバルで走らされる日々。

 しかし新入生でも、運良く運動が苦手な子も何名かいて、私が最下位ではなかった。

 それにしても苦しさは変わらなかった。

 夏休みを前にして、そんな日々が続いた。

 僕の心の中は、もうゲームに支配されていた。



 それから週が変わり、新しいダンジョンイベントを調べてみたら、難易度設定のない、特殊なイベントがあることに気づいた。

 それは、大陸の東側にある島にダンジョンが発見され、その調査の依頼だった。


 「幻想ダンジョンて書いてるね」


 僕は依頼書を見て、フェアリーに「なにそれ」と聞いた。

 フェアリーも詳しくは知らないようで、役所の人に聞いてみた。


 「幻想ダンジョンは、時期をずらして、多くの場所で見つかっています。一旦攻略されると、その種類の幻想ダンジョンは発生しなくなるようです。資料を見ますと、過去に2種類の幻想ダンジョンは発生していますね。どちらも階層は浅く、幻想ダンジョンの名前の通り、攻略されるか、一定期間が過ぎると消滅するようです」


 役所の人の説明を聞いて、僕とフェアリーは依頼書にサインした。

 フェアリーの字は小さくてとてもかわいいものだった。


 「東の島へは、東南にある青の港から船が出ているみたい。そこは鷹の目ギルドが支配している領域ね」と、フェアリーは言った。


 「王立騎士団以外のギルドと接触するのは初めてだね」


 そして僕は、楽しみだねとフェアリーと笑顔を交わし、旅の支度に取り掛かった。


 まず最初に考えたのは、セルバートの許可があれば、僕は部隊の将校として、兵士を引き連れることが出来るということだった。

 今までは経費の関係上、単独でゲームプレイをしてきたことが多かったけど、兵士を引き連れて行動することも何度かはあった。

 僕は大人と接するのは苦手だったが、ゲーム上の兵士はただの数字でしかない。

 付き合いに困ることはない。


 「どうしようか」


 僕はフェアリーに相談した。

 フェアリーは僕に、兵士を率いるメリットとデメリットを改めて教えてくれた。

 兵士を率いると、戦闘では当然強くなる。

 ただ、兵士を率いた場合は、他の人からは警戒、もしくは敵対される可能性があるということ。

 今回行く先は、別ギルドの支配領域なので、戦闘になる危険がある。

 またその場合、警戒しながら移動しなければならないので、移動速度が遅くなる。

 今回のような遠方のダンジョン攻略イベントでは期限があるので、兵士を随伴することは適さないと教えられた。


 「なるほど」


 僕は次に移動経路について、フェアリーと話し合った。


 「青の港までの行路は、まず小都市スアンから南方にある工業都市フレアまで行く。そこから東の小都市ツガイを経由して、大港テティスに行き、東岸に出てから南下して青の港に行くルートと、大都市フレアの南方の通商都市クロスを経由して、東側に進路を変えて青の港に行くルートがある」


 僕が地図を見ながら言うと、フェアリーは言った。


 「北側のルートは、小都市ツガイ付近の地図が完成していない箇所が随分あるのよね。距離、それと地図の完成度から見ても、南方経由の方が早そうね」


 僕も同感だったので、そのルートで行くことにし、セルバートへ伝えるために一旦彼の村へ戻り、彼からも賛同を貰って、僕たちは旅立った。

 セルバートの村は、小都市スアンのすぐ近くだったので、その間の往復では危険な目にあることはなかった。

 ただスアンを出てからは、1時間もしないうちに野犬の群れを発見して、肝を冷やした。

 幸い、後から来た商隊が行路が同じだと言って、同行してくれることになったので、僕たちは安心して旅を続けることが出来た。


 「野外での獣やモンスター、野盗との戦いの訓練を一切しないで旅に出たのは、順序を間違えたかも知れないわね。野犬とはいえ、数が多くなればあなたはすぐに食い殺されるわよ。私は飛べるから逃げれるけど」


 フェアリーは急に他人事のように言い始めたけど、僕は現実世界ではそういう裏切りには慣れているので、黙っていた。

 君は僕を守るって言ったよね?とか言い返しても、意味がないことはわかっていたので、時々目を閉じて、野犬の群れと戦う自分をイメージして、少しでも生存確率を高めることを心がけた。


 商隊の行動に合わせたので、僕たちはゲーム内時間で10日ほどかけて通商都市クロスに到着して一泊し、すぐに青の港へ向かった。


 また10日ほどかけて青の港に着き、商隊とは別れた。


 商隊の人たちは、青の港から、船で南へ行くとだけは教えてくれたが、それ以外のことは、何を運んでいるとか、どこに所属しているのかという情報は、話をはぐらかされて教えてくれなかった。


 通商都市クロスにしても、青の港にしても、ゆっくりと見学する時間はなかった。

 商隊の馬車に乗せてもらえなければ、そもそもイベントの期日内にダンジョンに到着することすら不可能だったと思う。

 それ以前に、食料がすぐに尽きて、通商都市クロスに到着する前に、野垂れ死にしていたと思う。


 フェアリーは大人で、僕よりずっと賢かったけれど、完璧な大人ではないこともわかってきた。

 もちろん、そういうことは、僕は決して口にすることはなかったけれどね。


 僕たちは青の港で一泊して、食料などを補充して、次の日の夕方の船で島に向かった。

 鷹の目ギルドと接触することはなかったけど、港を守る衛兵はいたので、その人たちは鷹の目ギルドの兵士なのかなとは思った。


 2日ほどの船旅を終えて、僕たちは島に上陸した。


 島には、島ギルドという小さなギルドが一つあり、そのリーダーのマイノスという男の村を僕たちは訪ねた。


 「小さな冒険者さん、妖精さん、ようこそ」


 僕は子供だから、小さな冒険者だけど、マイノスという中年男性も小柄な人だった。

 とても疲れた感じの男だったけど、隣にいたマールという女性将校は、テキパキとして感じよく僕を迎えてくれた。

 聞けば、歳は僕より1つ上とのことだ。


 マイノスさんの村は、まだ建設されて間もない感じがあったが、とても発展していた。

 大陸から移民してきたそうだ。

 その村はセルバートの村ほどではないけど大きく、魔術院はとりわけ大きな建物だった。


 「たぶんヨーネスと同じくらい魔力がある」


 フェアリーはそう僕に耳打ちした。


 島に幻想ダンジョンがあることは知らなかったようで、マイノスさんがギルドのメンバーに尋ねて回ったら、マフナドというギルドメンバーが、青の港に報告していることがわかった。

 マフナドは、僕らとマイノスさんを島の東岸に案内した。

 島内からは見えなかったけれども、船を出して少し北上したら、岸壁の中に大きな洞穴があり、船のまま中に入れそうだった。


 マイノスさんは一旦ギルド拠点に戻り、ダンジョン探索の準備を通達した。

 出発は翌日とのことだった。


 その日はマイノスさんの村に泊めさせてもらった。


 マイノスさんは大陸の様子を僕に聞いてきた。

 僕は青の港はすぐに通り過ぎてしまったので、鷹の目ギルドのことはよくわからず、王立騎士団のことだけ、少し話した。

 といっても、裏切りにならない程度だけどね。

 ただマイノスさんは、自分の村やギルドの様子について聞いてきたので、これが王立騎士団との比較になっていることを、フェアリーに後から指摘され、返答に失敗したと反省した。

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