王立騎士団リーダーのセルバートの村に着く << マイネ 2 >>
ゲームの中の出会い << マイネ >>
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僕とフェアリーは村の明かりを目指して歩いた。
たどり着く頃には、だいぶ夜も深けていたが、明かりは少しも減っていなかった。
村には多くの人が集まっていた。
突如、僕たちの後ろから、馬に乗った女性が駆け抜け、村にいた村民に駆け寄った。
「セルバートは無事なのか!」
その声はとても澄んでいて大きく、村中に聞こえるような声だった。
「イザベラか。ああ、大丈夫だ。王国政権にやられた。せっかく王のためにギルドまで作ったんだが、王のやり方に異議をとなえたら、即座に政権を追放され、これだ」
傷だらけの男が、破壊された村を見回しながら話している。
その男の声も大きなものだ。
よく聞こえた。
「幸いギルドの仲間への攻撃はなくて、まだ良かった。ゴールネス、みんなを集めてくれて感謝するよ。みんな、復旧を手伝ってくれて、ありがとうな」
傷だらけの男が、隣りにいる大男と、集まっているギルドメンバーに話しかける。
「王立騎士団。このギルドの私たちのリーダーはあなたです。誰がこの国の王に相応しいかは、これから明らかになります」
ゴールネスと呼ばれた、商人風だが精悍な大男は、セルバートという名のリーダーに、畏まって答えた。
大人たちの会話を、フェアリーと私は耳を澄まして聞いていた。
「この村は襲撃を受けたみたいね」
フェアリーは僕に耳打ちした。
「ここはギルドリーダーの村みたい」
フェアリーは僕にだけ聞こえるように言ったが、村の人は僕たちに気づいたようだった。
「あなたは歓迎されるわよ」
フェアリーは村の人に警戒はしながらも、たぶんねと、僕にウインクした。
「どうして?僕は子供なのに?」
僕はフェアリーに聞いた。
「子供だからよ。子供のあなたは村を持たないから。NPCより強い、プレイヤー級の強さを持つ将校が来訪したからよ」
※NPCはゲーム用語で、ノンプレイヤーキャラクターの略。プレイヤーが直接操作しないキャラクターを指す。日本ではモブキャラとも言われ、ゲーム内の村の人などの脇役を指します。
フェアリーは話を続けた。
「このゲームでは、各プレイヤーが村を育て、何名ものNPCの将校を獲得して、その将校に兵を預けて軍団を編成し、育成していくの。あなたは賢い人ね、ここまではわかるわよね?」
その辺りは、ゲーム開始前に説明文を読んでいたので理解出来た。
僕は人の話をよく聞く、良い子供であろうと意識した。
「プレイヤー自身は、NPCの将校よりも強く設定されているの。でも大人の各プレイヤーは、自分の村を持って育てているから、他人の村には所属しないの。ところがあなたは子供で、村を持たないから、あなたが望むなら、いつまでもこの村にいることも出来る。あなたは大人たちの助っ人として、ゲームを遊ぶことが出来るの」
フェアリーの話はわかりやすかった。
つまり僕は、大人ゲーマーからしたら、強いNPCのようなものかな。
でも・・・僕は普段から大人に怒られてばかりだったので、フェアリーに聞いた。
「ちやほやしてもらえるかな?」
たぶんねと、フェアリーは前を見て言った。
「セルバートさん、ご来客のようです。敵ではなさそうですな」
人足に指示を出していた老将が僕たちに気づき、セルバートの側に歩み寄った後に、僕たちの方に歩いてきた。
「小さな来訪者さん、こんばんは」
老将はライゼンと名乗り、僕たちに話しかけてきた。
僕は口がアワアワしたらいけないと思い、フェアリーを見たら、彼女はにこりと笑い、大人の相手をしてくれた。
僕たちが冒険者であること、滞在する場所を探していることなどを話してくれた。
その時、僕は意識を突然失った。
ゲームのログイン制限が来て(1時間のようだ)、リアル世界に戻ったようだった。
ゲームの余韻は消えなかった。
母親の、ご飯よという声がしたから聞こえてくる。
僕は気分の良さを失いたくないので、大きな声で返事をして、食卓に向かった。
フェアリーが隣で笑顔で見送ってくれている気がした。