出会い << フェアリー >>
いつの頃からだろう。
地下鉄のある駅で、誰かに会う。
ずっとそんな気がしていた。
夢で見たのかな?
それとも何かのドラマで見た記憶を、自分のものにしてしまったのか?
ただその駅は私の住んでいる場所からは遠く、職場も違う場所なので、普通に生きている分にはその駅に行くことはない。
今日は夕方からアルバイトなので、昼までに一度見に行ってみようと思い立った。
駅はとても古びていた。
確かに私がイメージしていた駅に近い。
そう、この辺りにベンチがあって、人の流れがこうあって、あれぇ、見たことあるのかな?
自分のイメージしていたものと近い部分もあれば、違う部分もあり、うろうろしながら調べてみたけれども、誰とも会わない。
昼食を食べてないことを思い出して、ランチタイムを取り、また駅の中を散策する。
そろそろアルバイトに行こうと、駅のホームを歩いている時、駅の広告板に私のやっているスマホゲームの広告があった。
『剣と魔法の王国戦争』
私は学生時代の友達に誘われて、バーの手伝いをしている。
今日の夕方も、そのお店に行って仕事をする。
そのお店では、あるスマホゲームが流行っていた。
『剣と魔法の王国戦争』
バーの手伝いに誘ってくれた友達の妹が勤務している会社が、取引している会社のゲーム。
友達の友達の友達繋がりみたいな話。
外国のゲームで、一般的にはほとんど知られていないと思う。
ゲーム内のチャットは自動翻訳を使用しているから、外国語のできない私でも遊べるけど。
そのゲームの広告を閉まるドアの中で見ていたら、その広告に小学生か中学生くらいの男の子が気づいて、スマホをかざしているのが見えた。
何か根暗そうな男の子。
QRコードを呼んだのかな?
動き出した電車の中で、私はこれからアルバイトに行って、いつものように時間が流れて行く、そんなことを思った。
今日の目的は未達。
結局、誰かに会うことはなかった。
その時、思ったの。
こういうゲームって、同じ時期にスタートしたら、一緒に遊ぶことが出来るわよねと。
バーでスタッフやお客さんとゲームを始めたときは、同じ王国にいて、ギルドを作って一緒に遊んでいるものね。
可能よね。
あの子と遊ぶのも。
街中で一瞬だけ見かけた、年齢も離れた男の子と一緒にゲームを遊ぶ。
なんか面白そう。
私はゲームを立ち上げて、サブアカウントを作ってゲームを新たに開始する。
人種選択で選択肢がある。
フェアリー?
そんなの前あったっけ?
とりあえず、フェアリーを選択してみよう。
ゲームスタート。
職場に付くまでに、あの男の子に出会う機会はなかった。
私はあの子と会える確率を高めるため、村を作らずに、周辺地域の探索を繰り返した。
少し早めにバーについて友達を待つ間ゲームをしていたら、遂にそれらしいプレイヤーを発見した。
話しかけてみる。
マイネという名前の子。
友達が来て、お店の鍵を開ける。
私は友達に、この面白い状況を話した。
今日から面白くなりそう。