奇妙な魔法使い マイノス << マール 13歳 >>
私たちの村に、その男がやってきたのは、3日前のことです。
お父さんの話によると、酒場にお酒を配送した時に、その男を知ったというのです。
店主に酒を渡して、代金をもらった時、入り口の扉がギィと開いて、その男が倒れ込んだというのです。
息はしていたようで、「大丈夫か??」と聞いたら、「大丈夫だ。少し休ませてくれ」と言ったので、身なりが私たちとは違う、何か上等な服を着ていたので、ろくでなしではないと判断して、お店の片隅で休ませたようです。
男は遠い国から来たとだけ言ったあとは、この世界を観察するような目で見るだけで、言葉を発しなくなったようでした。
お店が開く夕刻になり、ホールにスタッフも集まり始めた頃、男は「私が最初の客になろう」と、金貨を1枚出したので、店主は「いくら腹が減っても、そんなに飲み食いしたら、身体壊しちまうよ」と受け取りを拒否して、その日はタダで食事を与えたようでした。
「店主は金持ちには優しい」と、お父さんは笑って言いました。
男はしばらく飲み食いして、店に人が集まりだした時に、店主にここに来ている人の中に、私の屋敷を作ってくれる人はいるかと、たくさんの金貨を見せたそうです。
店主はびっくりして、その金貨を目指で数えたら、酒場が軽く10棟も出来るくらいの数だったということです。
「あんた、そんなもの見せて、襲われる危険があるが、大丈夫かい?」と聞いたら、「私の身体に触れることが出来る人はいない」と、左の手のひらを上に向けたそうです。
それから、何やら不思議な言葉を発し始めたら、青い光が彼の周りに現れて、彼にも金貨にも触ろうとしても、店主やお父さんの手は溶けてしまうように、すり抜けてしまったそうです。
お父さんや店主がびっくりしていたら、柄の悪い大男がやってきて、拳で彼の顔を殴ろうとしたのですが、それもすり抜けてしまったようでした。
男は「こうすることも出来る」と言うと、左手のひらを下に下げると、大男の右腕は聞きたくもない奇妙な音をたてて、肉片と血液に分解されてしまったとのことです。
大男は叫び声を上げて気を失いましたが、男は「すぐなら治せる」と、今度は左手のひらを上に向けて、右手を添えるように近づけると、大男の手は元に戻ったのでした。
大男が失神した状態は、しばらくは戻りませんでしたけれども。
それ見た店主は、男に大工の棟梁を紹介して、男はそれから隣の宿屋で休んだようでした。
彼は別れ際に、店主とお父さんに、名前をマイノスと伝えたそうです。




