墓地の碑文 << フェアリー 美和 >>
墓碑には、こう書かれている
あの日、私たちは人生の分かれ道にいた。
誰も知らない異世界への冒険を選んだ人がいた。
慎重に、好奇心を抑えた人もいた。
あの日、私たちの仲間は人生の分かれ道の選択を、私たちに伝えた。
自分が信じる道を選び、それ以外の道を捨てた。
決断を先延ばしする人がいる中で、彼は先陣を切って駆け出した。
昨日、好奇心と冒険心を抱いて旅立った勇者の屍が、今日ここにある。
私たちは力の限り助けようとしたけれど、龍が賜る死を逃れるすべはなかった。
私たちは恐怖し、冒険の扉を封印した。
異世界で亡くなった兵士たちの魂は、ここにはないだろう。
いくら治療しても、負傷兵は誰一人回復しなかったのだから。
勇者たちの魂は、今なお巨大なドラゴンと戦い続けている。
あの日、冒険に旅立った者たちは、誰一人後悔などしていなかったのだ。
私たちがそのことに気づくとき、冒険の扉は再び開かれるだろう。
先に旅立った仲間が私たちを迎え入れ、手を取って新しい世界へ駆け出すことだろう。
墓碑が完成したというので、ザラがセルバートとマイネと私を誘ってくれて、見に来ていた。
「セルバート。あなたは王国の平和を願いました。そのおかげで、多くの人が死なずに済みました」とザラは言った。
「そうだ。だが冒険をしてきたから、ここまで来れた。死を恐れずに先陣を切って駆け出した勇者たちのおかげでもある」とセルバートは言う。
「たまたま成功しただけかも知れません。運が悪ければ、ここに眠る兵士たちのように、破滅していたかも知れません」
「彼らは後悔しただろうか?この墓碑も言うように、きっと後悔はしていない」
真っ赤な夕日が墓碑を照らし、その向こうに1000匹の赤とんぼが飛び交っていた。
マイネがそれを指を指し、ザラがそれを見て微笑む。
セルバートが私を肩に乗せる。
私は祈りの魔法を唱えずにはいられなかった。
時が止まりますようにと。
第一部完
あの時、君はそこにいた → 剣と魔法の王国戦争




