日本人のクレーム気質は商売にどう影響するのか? 海外のように褒めまくれば良いのか?
通販サイトや映画、ゲームなどのレビューで、日本人は低評価やクレームが多いと耳にします。
海外の人はサービスや商品を褒める内容が多いのに、日本人は余り褒めないとも。
このなろうでも批判の感想に嘆く作者は多いようで、褒めて伸ばそうぜという趣旨のエッセイも目にするところです。
それでは、提供されるサービスに対しては手放しで褒める方が良いのか、気になった点はどしどしクレームとして挙げるべきなのでしょうか?
答えはその商売が続いているかどうかで、大まかに判断出来ると思います。
なろう界隈で言えば、感想欄では大絶賛されていたのに全く売れず打ち切られた作品よりも、批判の嵐だったのに売れたので続刊が出続ける作品の方が正しいと言えるでしょう。
これは何もなろうだけではなく、他の商売でも言える事だと思います。
「若者に大人気の○○」とテレビでは盛んに言っていたのに、いつの間にやら閉店している某国の商売なんて正にそうですね。
いくらでも盛れる高評価やレビューなんて大して意味はなく、長期的な売れ行きこそが正しい評価だと思います。
まあ、自社買いとか色々と誤魔化す方法はあるでしょうし、売り逃げ的な商売方法もあるでしょうが。
さて、褒めない消費者が多いという日本の商売事情に関し、一つの事例を挙げたいと思います。
老舗の数です。
ご存知の方もいるかと思いますが、創業が古い企業の数で日本は世界でもダントツです。
創業が500年で約30社、200年では約3100社もあるようです。
200年以上経営を続けている企業は世界全体で5500社のようなので、日本が半分を占めている事になります。
驚きですよね。
移民がそこまで多くない日本人の民族性は諸外国よりも余り変わっていないと思いますので、クレーマー気質の筈の日本人を相手に、どうして日本の企業は世界でも異様な程に長くその経営を続けられているのでしょうか?
あくまで私個人の意見ですが、サービス提供者においては寄せられるクレームに真摯に対応してきたからで、消費者においては文句を言いつつもしっかりと買い支えてきたからです。
つまり、褒めても買わないヤツは単なる冷やかしで、提供されるサービスに対しキツイ事も言うけど金払いが良いのは確かな客だという事です。
褒める人の多い外国に老舗が少ないのは、結局のところ褒めるだけで買わなかったからであり、褒めない筈の日本に老舗が多いのは、口に出さないだけで買うという行動によって店を支持しているという事でしょう。
まあ、戦争の影響もあるのかもしれません。
戦争で物理的に店と人がなくなった場合はやむを得ないです。
戦争と言えば、日本人の民族性が敗戦によって変わった可能性はあるのでしょうか?
戦前戦中の漫画は戦争万歳だったのに、負けた途端に戦争は悲惨とか戦争反対になったとか、そのような論調を見た事があります。
そうなると結論は全く違ってきます。
昔はそうであったかもしれないが、今は違うという事になりますから。
しかし、江戸時代の武士の日記などを見ると、日本人はあんまり変わっていないようなのです。
参勤交代では多くの地方武士も殿様に従って江戸に滞在しました。
当時の仕事は随分と緩かったようで、役職にもよるのでしょうが半日も勤務すれば良かったようです。
妻子を地元に残しての江戸在住だけれども遊び回る程の金はない貧乏武士の多くは、その日の食事を楽しみとして江戸の町を過ごしていたようです。
単身赴任の武士や独身者(武士だけでなく町人も)が多かった江戸では屋台や総菜屋が多く、そういった男達が炊事をする必要はなかったのですが、そういう江戸の中でどこの飯屋の何が旨かっただの、サービスが悪いだの女中の器量がどうのと、そのような内容をこまめに日記に記していました。
江戸の武士も今のサラリーマンも余り変わりませんよね。
ですので、日本人の民族性は敗戦によってそこまで変わっていないと結論付けます。
つまり、日本人は昔からクレーム気質であったが買って応援してきた、という事です。
老舗の数を論拠とすれば、日本の消費者の行動こそが正しいと言えます。
子供には褒めて伸ばすのが正しいのでしょうが、大人の場合は賞賛が当たり前になって精進を忘れてしまう、のではないでしょうか。
初心忘るべからずというヤツですね。
とはいえ何事にも限度があり、何でも許される訳ではないのは皆様ご承知の通りです。
また、日本人がクレーム気質だったからこそ日本の商売は上手く続いてきたと書くと、だから読んだ作品はボロクソにしていいのだと思われましたらご注意下さい。
そんな訳はありませんから。
私を含め、なろうで活動している作者の殆どがアマチュアだからです。
たとえ書籍化を目標としていたとても、あくまで無料で作品を発表しているのですから、書店で買った本を批評するのとは意味が違います。
多くの場合、アマチュア作家にクレームは不要です。