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ソード帝国 vs 騎士団殺し  作者: 鷹山ジン
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超電磁男の秘密

戦いには勝ったが倒れたシゲル・ジョー。

二人は命がけで洞窟を進む。

そして…

『分かりました。彼を近場の発電所に連れて行ってあげてください。』


「はい!」


『彼の背中にコネクタがあるはずです。発電所のケーブルを差し込んでください。

数時間経てば、また動くようになるでしょう』


「ありがとうございます!」


「ちょっと待てよ!」


転送機を介した通信中にユウサクが割り込む。


「こいつの体に電気流し込むってことか!?

死んじまうだろうが!」


『彼なら大丈夫です。生き延びたいならしたがってください』


白衣のメガネ男は淡々と続ける。


『ちょっといいかな…アオイさん、だね?』


「はい」


白髪交じりの灰色の髪の中年男が顔を見せる。


『ぼくはカブ。シゲルの父です。

息子を助けてくれてありがとう』


「い、いえ…こちらこそシゲルさんには助けてもらってばかりで…」


『君のお母さんは丁重に保護しているから安心してほしい。

どうかシゲルのバックアップをよろしく頼む』


「はい」


「ちょっと待て毒親!色々聞きてえことが…」


通信は切れた。


「とりあえず、運びましょう。ユウサクさん」


「チッ…はぐらかすのが上手い一家だな!」





発電所内部。


「ここでいいか。人に見つかるとやべえ」


「ユウサクさんの騎士の格好のおかげで、町の騎士には怪しまれず済みましたね。

ありがとうございます。」


「あのなぁ…アオイちゃん…だっけ?」


「はい?」


「君なぁ!こんな奴らのことホイホイ信じるのか!

ハンターと戦って勝って生きてるなんて普通じゃないだろぉ!」


アオイの目がさざなみのように揺れる。


「な!?

さっさとこんな奴ほっといて逃げようぜ!

俺にも残してきた子供がいるから気持ちがわかる!

得体の知れない奴とガキを一緒にいさせられるか!」


「でも…」


「あ!?」


「シゲルさん、私達を守ってくれました…。

信じたいです。優しい人だって」



「くそっ!なんでわかってくれねえんだ!

俺は騎士に戻る!駐屯してる町で王が殺られたって被害届を出せば…

どうにかしてくれるはずだ!」


「私は…ここで待ちます。

シゲルさんが起きるまで待ちます。」


「勝手にしろ!殺されても知らないからな!」




「…ユウサクさん…」


シゲルの体に電気が通電していき、

ボロボロのジャケットの下の傷だらけの肉が徐々に盛り上がっていく。

アオイも気づかなかった。








「よぉ」



銀の腕を上げて、シゲルが出迎える。

まだ発電機に背を向けてうなだれたままだ。



「もうちょっと強い発電機なかったのか。

意識は戻ったけどよ、体が本調子じゃねえ」



「ば、化け物!」


ユウサクが連れてきた兵士が、銃を撃つ。

バチッと音が鳴ったかと思うと、風穴が空いていた。

兵士の眉間に。


「化け物かよ、ほんとに…

まだ3時間も経ってないんだぜ?

体はどうなってんだよ」



「ほらよ」


「きゃ!」


シゲルが上半身の服を脱ぐ。

ジャケットの下からはスレンダーな体が出てきた。


「…意外と普通なんだな。

もっと筋肉ダルマだと思ってたぜ」


「この腕のおかげさ」


銀の腕を宝物のように見せびらかす。


「こいつの装備、もらっちまっていいよな?

町を出歩くにも、その方がいいっしょ。


で、騎士団には戻れたのか?通報は?」


「…まぁ、戻れた。

けど、王殺しの謎のバケモンの話は信じてもらえなかった。

調査隊が向かうってさ」


「まぁそうだろうな。もっと上の奴らしか知らん。

この数年、アサシンみたいにこっそりとハンターと騎士を殺してきた。

大騒ぎになったのはあんたらのせいだ」


「人のせいにするな!本当にあやうく無職になるとこだったんだぞ!」


「落ち着いてくださいユウサクさん。シゲルさんはさっき起きたばかりなんです。

それで、あなたが戻ってからいろいろ話すって…」


「信じてたのか…?俺が戻るって。

ハンター狩りの事を密告して騎士団率いて大手柄狙ってくるとか!

考えなかったのかよォ!?」


「ああ、あんたいいやつだから無理だね。

アオイを巻き込む気はないんだろう?

それにおれを狩ろうとするならそっちが死ぬ。」



「チクショウ!お見通しってわけかよォ!」


ユウサクがヒステリーを起こす。


「落ち着け。お前らの知りたいことを教えてやる。」



「…じゃあ私から。

シゲルさんは、いつから戦い始めているんですか?」


「親父に改造手術を受けてすぐ。

もう5年くらいだから…22か3か?」


「お前の歳なんか聞いてねえよ!」


「…やっぱり、おじいさんの仇の為に?」


「まぁそれが第一の理由だな。

だからお前らを守るのは二の次以降になる。

せいぜい自分の身は自分で守れ」


「…その馬鹿力はどこから出てくるんだ?

それに、俺らがいると本気が出せないって言ってたよな?

実はそんな強くねえんじゃねえの?」


ばちり。


「ひっ」


左手をかざすと、ユウサクの背後の発電機が狂って暴走を始める。

過剰発電、放電を繰り返すそれのケーブルを背中の穴に差し込む。


「ふー」


「シゲルさん…その背中…」


「ああ、改造手術の弊害だ。

人間を越えた馬力を出せるが、定期的な充電と増力剤…注射が必要になる。

注射はなるべく放電バリバリしないように抑制剤も兼ねてる」


「お前…そんなに今強い電気浴びて大丈夫なのかよ」


「お前ら普通の人間にとって温泉みてえなもんだ。心配するな。

ああ…でもな。お前らのせいで本気出せないっていうのは本当だ。

いざって時に大技が使えずコウモリごときに無様を晒すハメになる。

クモ野郎は電気なしの力業で余裕だったがな。


戦闘に関しちゃ足手まといってこと。」



「…」


アオイは俯く。

やはり大人しく、母と一緒に転送してもらった方がよかったのだろうか?


「…そうだ。コウモリの人と話していた、

第一世代とかってなんなんですか?」




「第一世代は、ウィリアムのクソ野郎が作り出した最初の人間融合ハンターだ。

力は強いが、研究の初期の初期に作られたから寿命は人間時代より短い。

思いっきり火をつけたタバコみてえなもんだな。

味は濃いが、すぐ燃え尽きる」


シゲルはライターの火力をフルパワーに調整してタバコに火をつける。


「じゃあよ、第一世代が死ぬまで待ってから狩りを始めりゃいいんじゃねえか?

なんでわざわざ強い奴らに挑むんだよ。

正気の沙汰じゃねえぜ」




「あほう。ウィリアムの暴治するソード帝国は盤石だ。

第一世代…十三使徒どもが寿命で死ぬ前に改良型が作られたらいよいよ『詰み』だ。

おれ一人じゃ手に負えなくなる。

噂じゃ一応十三使徒トップのウィリアムだけはハンター化してないらしい。

十二の使徒が死んでもウィリアムを護るガードハンターどもは次々と量産されていくだろうぜ。

早いうちに奴の首を取るのさ」



「それと第二世代。パワーセーブして寿命も延びた改良型だ。

いや、パワーがないって意味じゃ改悪、劣化ってとこか?

クモ野郎なんかはおれを貫く力がいまひとつ足りなかった。

だから第二世代の中でもミソッカスだろう」


「…マジすか。あれで?」


「シゲルさんは、第何世代なんですか?」


「親父やじじいとウィリアムの研究は違うから単純に比較できない。

まぁ第一世代に近いが、部分的に体を機械化して寿命なんかは補ってる…はずだ。」


タバコの灰が崩れ落ちる。


「俺の寿命が尽きるか、ウィリアムの首筋に喰らいつくのが先か。

一人でやってた方が効率はいいな、正直」



「…助けてもらった恩は返したい…です」


涙目になりながらアオイは声を絞り出す。


「じゃあこれ」


血だまりから兵士の拳銃を拾う。


「狩る対象のハンターや横暴な騎士どもはクズだが、命を奪うのには変わりねえ。

アオイの命もだ。

狩られないように最大級の努力をするんだ」


アオイに血まみれの銃を手渡す。

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