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【第九話】 -少女-



今は何歳なのか……当然そんなことを聞かれても俺の年齢は変わらず三歳であるが、ラフィはそんな言葉は聞きたいがためにこのような質問をしたわけではないのはわかっている。


「…………」


押し黙ってしまう。

このまま本当の事を言ってしまっても良いのではないか、そう思い口を開こうとしても、俺の口から言葉が発することはない。

喉から口にかけての寸前のところで突っかかる謎の突起物があるかの如く、言葉が詰まる。


「……悪いわねジェイク、変なこと聞いちゃって…今日はもう寝ましょう」


俺の沈黙に耐えられなくなったのか、半ば強制的に椅子から抱き抱えられ、俺の寝室まで連れて行かさせる。


「……まって、まだ」


「どうかしたのジェイク?」


「あ…いや、えっと」


またもや寸前のとこで言葉が詰まる。

なんで詰まる、やましいことなど一つもないではないか。

なのに何故…俺はこんなにも本当のことを言うのを躊躇い、()()()()()()()()()()


「おやすみなさいジェイク」というラフィは言い残してドアを閉めたその瞬間、ラフィが誰にも聞こえないぐらい小さな声で言った


「いつか、必ず打ち明けてね」


こちらに期待しているような、願望のような声だった。


────

──


俺が最初のミャーガレット祭に参加をしてから、2年が経過した。

俺の遂には五歳になり、今振り返ってみればあっという間に思えてきたがやってきた人生は魔法を研究していた時ぐらいに濃密な時間だった。


そして遂にと言っていいのか、2階にある大量の本200前後がついに底が見え始めた。


最近読んだ本に面白いことが書かれており、それはこの世界の時期の状況についてだ。

世界の一年は400日、そしてそこから世界の状況は大きく四つに分かれる。


まず1日から100日の間は『魔性期』。

この間は魔物が活性化しているらしく、普段魔物の被害が少ない街でも警戒が解けない状況になっている。

幸いこの街にそのような被害は出ていない。

そして今までもそのような被害を感じたことがなかったので、ここ周辺では起こらない現象なのだろう。


そして101日から200日の間は『食物期』。

この間が一番長く、気温が他の時を比べて少し高くなり、この時期はよく作物が育つのだとか。


そして201日から390日は『沈静期』。

一般的に気温が他と比べて落ち、地域によっては雪が降る状況だが、俺のいる地域はまるっきり降らないのが少し悲しい部分もある。

この時期は逆に魔物が沈静化されており、一番安全な時期になっているのだと言う。


そして一番気になったのは391日から400日目は『魔法期』と呼ばれている。

この時期というのが一番謎なもので、魔法使いが一番強くなる時期と記載されていた。

この10日間だけは大気の魔力量が多くなっているのだと思う、何故だかわからないがな。


さて、長々と自分の頭で読んだ本の整理をしながら、俺はミャーガレット祭が行われた街を歩いている。

ミャーガレット祭当日の夜のことで、母ラフィと気まずい感じになるのではないかと思っていたのだが、意外にもあっけらかんというか、特に気にしていない様子だったので、俺もそれに従って気にしないことにした。


「……ん」


今日はミャーガレット祭が行われた街に買い物に来ている。

ハックとラフィは外せない用事があるのだとかで、朝早くに俺を置いて二人で出て行ってしまった。


そしてその時に買ってきて欲しい物があるとラフィに頼まれ、こうして街に出向いているというわけだ。


毎回思うのだが、二人は少し俺に甘えすぎなのではないか、俺がもし普通の子供なら、身体中が干からびるぐらいに泣いている所だ。

いや、微妙なところか。


そして頼まれたものを買って家に帰り、ゆっくり本を読もうとしたのだが…


「えっぐ…ひぐ…なんで」


「……」


視界の端の方地面位の端に座ってすすり泣いているにいかにも訳ありな少女を写してしまったために、少女の目の前で足を止めてしまった。

ここまで来たからには放ってくという選択肢もあるが、それは俺の心が苦しい。


「……あ、あーと」


何を緊張しているのだ俺は、相手は俺と同い年ぐらいの子供、俺の精神年齢を含めれば70歳以上も差が開いているのだ。

大丈夫だ、落ち着いて大人の余裕をもって話しかけるんだ。


「大丈夫ですか?何かあったんですか」


「…………」


俺の言葉に反応した少女は顔を上げ、俺の顔を見た途端また俯いた。

聞こえていたと思うのだが、それに家族がないというわけではないだろう。


少女の髪の毛はきれいな短めの茶髪で、服装も清潔感の気が立ち込めているため、恐らくは家出と言った感じの少女だと思うのだが…


「お、おーい…生きてますか?死んでますか?」


「…………」


無反応、この女無反応である。

何度声を掛けても反応がない、それすなわち俺の手助けなどいらないという意思の表れであろう。

なら仕方がない、申し訳ないがこの少女を置いて家に帰るとしよう。


「ちょっとどこ行くの」


「ぐえぁ」


帰ろうと足を動かした瞬間、いきなり先ほどの少女から服の首根っこをつかまれ、まだ泣き止んでいないような震えた声で話しかけられる。

一瞬死んだかと思ったじゃねーか、なんだこのガキ。

さっきまでは反応しなかったくせして俺が離れたら引き止るのか。


切れる一秒前まで行っている頭の沸点を何とかギリギリで留め少女に話しかける。


「えっと…生きていたんですか?」


「当たり前でしょ、目付いてないんじゃないの?」


研究魔………まぁまぁ落ち着け、俯瞰をするんだ。

目の前にいるのは少女、しかも少し泣いていた余韻が残っている訳ありで可哀想な少女。

それを踏まえて、今の俺はどう見えている?子供の我儘っぽいところに怒りを感じて魔法を放とうとしている大人げない奴だ。

そうだ落ち着け。


「すいません、反応がなかったので」


「反応がなかったら、反応が返ってくるまでそばにいるのが常識でしょ」


「はぁ」と目の前の少女は何かに失望したような顔でため息を吐いた。

あぁ…そうか、うーむこれはあれだそう。

数少ない旧友の言葉を借りるなら『面倒くせぇぞガキが舐めてんじゃねぇ』と言う事か。


「えっと…それでどうかしたんですか?」


「……聞いてくれる?」


「多少なら聞きますが……」


俺がそういうと、目の前にいる少女は自分の隣と手で二三回片手で叩く。

何をしているのだ?全く持って理解ができない。

俺が少女謎の行動に固まっていると怒鳴るような声で言い放つ。


「ちょっと、せっかく私が隣に座ることを許可してるのに、早く座って」


「あ、はい」


少女に流されるように隣座った、その瞬間少女からはいい匂いが…何かの果物のようなにおいが放たれることから、この少女が家がない独り身のやつという説明がつかなくなった。


というより、先ほどの手の動きにはそういう事か、そういう人と人との言わなくても分かるというような関係は俺があまり得意としていないことだ。

今の手叩きにはそのような意味があったのか。


「…………」


「………名前は?」


「え、あぁ名前はジェイクです」


「それだけ?次に続くようなもう一つの名前があるでしょ普通、何?」


後に続く名前のようなもの…過去の俺の名前でいうのならばジルク・リージョンのリージョンの方…家族で統一されている名前の部分という考えでいいのか……ふむ。


「忘れました」


「自分の名前忘れるってどういうこと!?」


これにはさすがに目の前の少女も驚きの声を上げる。

正直な話をすると、俺は忘れたのではなく知らない、今までほとんどを家の中で過ごしてきたために家族の統一されている部分の名前を必要とする時がなかった、ラフィとハックはいつもジェイクジェイクと呼んでいるからな。


「まぁ、そういうものですよ」


「そんなのじゃ済ませちゃいけないと思うのだけど…まぁいいわ、私の名前はアミ・グラントリア。

皆からはよくアミって呼ばれているわ」


アミ・グラントリアか、まぁ世の中一期一会の関係だ。

決して人の名前を覚えることが苦手というわけではなく、自分にとって有益になるものと印象に残ったもの以外はあまり覚えられないのだ。


「アミさん…ですね」


「その言葉遣い、少し嫌いだから、さっきから思ってたけど」


研究魔…落ち着け、よくあることだ。

俺も他人に敬語を使われて放されるのはあまり好きではない、この少女もそれと似たような感じだ。


「わかったよアミ、それでさっきはなんであんなに泣いてたんだ?」


「別に泣いてない、ただ悲しかっただけ」


それは泣いているの範疇に入っているのではないか、そう言いたいが先ほどの少女の発言を踏まえて、俺の堪忍袋の緒を切るような発言が飛んでくるのは明白なために言わないでおく。


「じゃあ、なんで悲しかったの?お母さんと喧嘩でもしたの?」


「…お母さんはいない」


少女声が先ほどとは打って変わって暗い声に変化した。


「じゃあお父さんと喧嘩をしたの?」


「…お父さんもいない」


「…今、どこに住んでるの?」


「……この場所の近くにある施設で暮らしてる」


なるほど、結構訳ありな感じ…もう少し探る必要がありそうだ。


「その施設で喧嘩を起こしたの?お母さんかお父さんの悪口でも言われた?そもそも生きているの?」


「別にそうじゃないし、お母さんとお父さんも生きてる……と思う」


「思うってどういうこと、知らないの?」


「お母さんたちはこの街にいない、だから私は施設で暮らしているの」


「お母さんたちが帰ってくるまで施設で暮らしているの?」


全くもって最低な親だ。

こんなに小さい子供を置いて二人で出ていくなんて、少し考えれば子供が悲しむぐらいわかるだろう。


「お母さんたちは帰ってこない、それも絶対に」


「でも、死んでいるわけじゃないんだよね?なんでそう断言できる理由でもあるの?」


「……お母さんたちは、中央の国ラッターニに行ったの、だから…かえって…ひぐ」


また泣いてしまった。

しかし、質疑応答と繰り返していくうちにこの少女の内情がだんだんと見えてきた。

そして理解してしまった、それと同時にこの世界を強く恨むことになった。

今この少女が泣いている原因は突き詰めていく末にたどり着くのはこの世界も魔法常識だ。

この魔法常識のある世界のせいで、このような子どもが生まれてくるのはそう珍しくないのだろう。


「まぁまぁ…とにかく話してみなよ、何があったのか」


俺は少女に泣き止んでほしいという意味も交えながらやさしく声をかけえると、少女は泣いていた理由を話し始めた。






























よければブックマークや感想、星の評価などなどよろしくお願いします。

これら全て私の励みになりますので是非是非


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