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【第七話】 -大道芸師による真のフィナーレ-



「さて!まず初めに皆さんには魔法について最低限のことを知ってもらおうと思います、ほぉっ!」


ピエロの持っている杖の先端についている魔石は光を帯びながら魔法陣を一つ一つものを組み立てるように形成していく。


「これが所謂、魔法陣と呼ばれているものです。皆さんも名前ぐらいは聞いたことがあるのではないですか?」


魔法陣を観客に見せびらかすように台の上を回ったり、杖を回したりする。その度に観客はピエロに関心の声を上げる。


「さてさて、次に魔法を扱う際の動きをお見せします」


ピエロは乱雑に、適当に見えるように魔石を上に向けて前に突き出す。


「この杖の前にある魔法陣から魔法が出てくるのですが、魔法陣というのは魔法を撃つための前段階に行う事前準備というもので、ここからさらに魔力を杖に流すことで魔法を放つことができるのです」


ピエロの杖の先端についている魔法陣から、小さな水の塊が、それは徐々に徐々に大きくなり、やがて手のひらサイズのものへと変化した。


その事実に驚愕しているのか、民衆からの声は一つもしなかった。


「こんな風に、魔法が現れるわけです、しかし、魔法が現れるだけでは魔法使いとは呼ぶには相応しくありません、そうですねぇ…そこの男の人」


「……俺か?」


ピエロに指を指されたのは、俺たちから近い場所にいるハックの恩人とも呼べるダンだ。

ダンは自分が指されていないと思っていたのか、数秒時間が経った後、それが自分であることを確認する。


「そうそう貴方です。そのまま動かないでくださいね」


ピエロがダンの方向に魔法陣の突いた杖を向ける。


「んあ?まぁ動くつもりなんてさらさら──」


そこでダンの言葉が切れた。

ピエロは魔法で作った水をダンの顔面目掛けて一直線に飛ばし、それが顔面に当たり破裂した。


「…てめぇ!!何してくれてんだぁ!?」


「とまぁこんな風に、魔法を生成できたからと言ってその人が魔法使いとは言えません。ちゃんと意思を持て相手に魔法を当てたりしなければ、魔法使いと呼ぶには難しいでしょう」


「いや無視すんじゃねぇ!」


ダンの言葉に連動するように周りから少しの笑いの波がドっと押し寄せる。


「あなた、人を笑わす才能があるようですね、私と一緒に大道芸師をやりに来ませんか?」


「おめぇみたいなやつとは絶対に嫌なもんだ!」


「それは残念、まぁこの話はこれぐらいで、始めましょう」


そうピエロが言うと、また杖の先端についている赤い魔石が光りだす。

それは先ほどとは比べ物にならないぐらいの、どんな闇の中でも全体を照らせてしまうようなものだ。


そして小さな魔法が一つ一つピエロの後ろにできた魔法陣の中で横並びに形成される。


「今皆さまが見えている物が世界の三大魔法とされている火、水、風の三つです、この三つの魔法を使って、改めて皆様には異次元の世界をお見せしましょうッ!!」


ピエロが杖を空高くに突き上げると、形成した魔法も連動するように空高く浮かび上がり、そこでそれぞれ三つの魔法が大きな輪を形成していき、それが集まっている民衆の周りを自転をしながら大げさに回っているが、民衆には決して近づかないよう操作している。

そのことがこれから何が起きるのかという期待感を民衆に煽らせている。


「おぉぉ!!すげぇぇ!!」


ハックが今まで見たことの現象に子供のような声を上げてはしゃいでいる。

確かに魔法を見たことがない奴にとってはその反応になるだろうな。


「さてさて、こんなもので驚くにはまだ早いですよ!こちらのご覧ください」


また何かやってくれるのかと、民衆はピエロの方を一瞬で振り向く。

さて、どうなるか…


「ほぉぉあぁ!!」


先ほどと同じく、ピエロの先端から魔法陣が形成される。

しかし、そこから出てきたのは先ほどと同じの小さな水の塊だ。


周りの様子を伺うと、やはり期待して損したと思っている人たちが多そうな反応だ。

そんな民衆の反応にピエロは少し焦ったような声を出す。


「ちょっとちょっと!?皆様方?もしかしてまた水球か、だなんて思っていませんか?もう少しだけ見ていてくださいね!」


魔法陣から形成されている水球のサイズが徐々に徐々に大きくなっていく。

またか、とやはり拍子抜けする民衆だが、先ほどと同じぐらいの大きなになった途端に、民衆はざわめき始める。


「「「で、でけぇぇぇぇ!!」」」


予定調和かのように民衆の声が合わさる。


比べるなんておこがましい、先ほどの水球のサイズが一般市民の家だとするならば、今ピエロが作っている水球は大国最上位の家の大きさと質があった。

まさしく天と地、天と海底と言える大きさになっていた。


「そして!!」


ピエロは馬鹿みたいに大きくなった水球を空高くに勢いよく飛ばす。

そしてそれは空彼方にまで達した後、横に分散しながら爆発したのだ


「おいおいおい!!これ俺たち濡れるんじゃないか!?」


「これまずいんじゃないの!?」


確かに、あそこまででかい水球が横広がるように爆発すれば、この街全体を濡らす雨となるだろう。

普通の雨とは違う、雨よりも多くの質量をもった水が小さな粒となり、街と人たちを襲うように落下してくる。


雨を凌ごうとどこかの建物の屋根に向かって走り出す人がいるが、俺たちの周りをまわっているこの大きな輪がそれを許さないだろう。


「ジェイク!!危ない!」


俺の隣にいた母親ラフィが俺を抱き寄せて空からくる雨から守ろうとする。

そんなことをしている最中にも、俺たちのいる場所には膨大な質量をもった雨が向かってきている。


当たる、濡れる、そう思った全員痛みとあとの寒さに耐えられるように目を瞑る。

一秒後、服が濡れ、雨粒が頭や体に当たり鋭い痛みが──起きるはずだった。


「クフフフフッ!!皆さんどうしたんですか必死に目なんか閉じてしまって、何が起きると思っていたんですか?膨大な質量をもった雨が自身の体を押しつぶそうとしてくるのがそんなに怖かったのですか?しかし皆さんのそんな期待している結果は訪れませんよ」


「……なんだこれは?」


ハックがつぶやいたような小さな声を出してそう言った。

他の民衆も目の前で起きている


「皆さまには考えもつかないでしょうねぇ?雨が当たるほんの寸前、皆さまの頭の位置から本の一寸先で、

()()()()()()()()()()()()()()()()()


雨が当たる寸前、ピエロは風の魔法を使って落下してくる雨一粒一粒を静止させたのだ。

それほどの精度、と勘違いしてしまうがそれは大きな風の魔法を広く俺たちのところに張り巡らせて雨から守るような盾を構築したのだ。


そして風の魔法で受け止められた雨粒がピエロのところに集合する。


「クフフフフフッ!!では次で、最後の大道芸といたしましょう。今回は無料で皆様に見させていますので、これぐらいしか見せることは出来ませんが、その代わり最後はとっておきの魔法をご覧に入れましょう」


次もまた杖の先端部分の魔石が光りを帯び始めるがそこには少しの違和感があった。


先ほどまでは光っていたのは杖の先端部分についてあった魔石だけだったのが、今はなんと魔石を備えている杖も魔石と同時に光っているのだ。


「これが私の見せる、最後の大道芸です!」


魔石含めた杖の全身が白くなるほどに光り始めた瞬間、ピエロは言い放つ。


『大道芸魔法〈生物模倣(インビジョン)〉』


先ほどの集まった水の塊がさらに大きくなり、風魔法の力を使い、一つの形を織りなす。


「な、なんだこれはぁぁ!!??生き物か!?」


やがて水と風の魔法で模倣された生物は完成された生物らしきものに民衆は叫ぶか怯えるしかなかった。


「…まじか」


この俺も我を忘れてそんな言葉を漏らしてしまう。

これは何というか、忠実に再現できている生物だったのだ。


水で作られたそれは確かに俺の居た時代の生物とも引けに劣らない物。

一枚一枚が大きな鱗で、鋭くこちらを殺すかものような本能に任せた目、何処までもいけるよな大きな二枚の翼。


そう、古来から伝わる街を、大国を一人の力で沈めることが可能の超危険生物、ドラゴンを模倣したものだった。


「グアァァァァァツ!!!」


そのドラゴンは大きく羽ばたき俺たちの周りを一人で取りかもむように回る。

今まで俺たちをまわっていた魔法はなくなっており、そのドラゴンだけに集中が向く。

誰一人逃がさない、すべて俺が食らうと、そう言われているように思えてきた。


その中には本当にドラゴンを怖がっている子供も混じっている、当然のごとく泣いているのが目に取れる。

しかしそれは大人でも同じようなもので、大人でもドラゴンの威圧に負けてしまってまいている人もいる。


「皆さまご安心ください!。こちらは私が作った模倣品でございます。決してあなた方を食うために参上した悪いドラゴンではありません!その証拠に……」


先ほどまで俺たちの周りを飛んでいたドラゴンは唐突にピエロの前まで飛んでいき近くに迫ったところで翼をはためかせながら静止した。


「ホラ、私の近くに簡単に持ってくることができました、では最後にこのドラゴンを上空に飛ばして!私の大道芸はフィナーレとします!!」


再度俺たちの周りを飛び話待ったドラゴンは三周程度した後、渾身の力で大気を押しのけて跳ねるように大きな風を俺たちに食らわせながら空に消えるように高く高く飛び上がっていった。

最後まで見ようと民衆は視線を上にあげた。


全く、まさかドラゴンを模倣するとは俺の居た時代だったら正気の沙汰ではない。

しかし今の時代の人達からすれば、あれは大道芸として素晴らしいものだった、この俺も結構楽しませてもらった。

しかしあの杖全体が光りだしたあれは何なのだ?


そう思い視線を下にずらし、ピエロの持っている杖を見てみると、目的の事とは別のものに目が入る。

フィナーレと言っていたにも関わらず、またそこには魔法陣が形成されていた。

──なんだ?、何か…


注意深くピエロの事を見ていると、一瞬、ほんの一瞬だけ聞こえてきた。


「クフッ…」


「……ッ!!」


今までの笑い方と何ら変わりない笑い方、しかしその奥に見せるものを感じ取る。

憎悪、憎しみ、嫌悪感、そして一番気持ちが入っている『殺意』。


研究魔法!!──


ここに集まっている民衆の足元から大きな魔法陣が突如現れ、その中央から白く美しい光が俺たちを包み込んだ。

これは火の魔法の派生、俺の居た時代からも長く伝わっている魔法で、その威力は計り知れないとされている魔法。


『魔法〈白爆発(グラン)〉』であった……










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