【第五話】-宴の爆発-
ミャーガレット祭、初めて聞く名だが、俺のいた時代にはなかった物だろうか?
言葉通りの意味ならば何かを祝う祭りのようなものだと思うが、聞いてみるか。
「ミャーガレットさいって、どうやってできた?」
「お!気になるか!?」
最初に反応したのはハック、ハックは指を一本立てて自慢げに話し始めた。
「ミャーガレット祭、事の発端は400年前の勇者と魔王の戦いで、中は省くが勇者が長きにわたる魔王との戦いに勝利し、その日を記念日として3年置きに開かれるでかい祭り、それをミャーガレット祭と呼ぶんだ」
「…ミャーガレットは?」
「その勇者の名前よジェイク」
次に俺の質問に答えのはラフィ。
ハック、意外と頭がいいのかもしれない。
この時代で祝日の意味をちゃんと理解しているとは、なかなか探求心というか、意外にも物知りで少し感心した。
「ねぇあなた、ジェイクにミャーガレット祭について自慢げに話してるけど、それ毎年始まるときに言う決まり文句ってやつよね?あなたもそれまで知らなかったくせに」
「ら、ラフィ、それは言わねぇ約束だろうがよぉ」
前言撤回、やはり馬鹿であったか。
決まり文句として毎回その祭りの始まりに言われている言葉をそのまま俺に披露してきたとは子供にいいところを見せたいっていう感情は理解できるが、そういうのは俺がもう少し大きくなてからではないと何もわからない気がするぞ。
ん?ちょっと待て、少し違和感がある。
「ゆうしゃ、ミャーガレットはどんなひと?」
「勇者か?俺は魔王を倒したとんでもなくすごい人としか理解していないが、ラフィはどうだ?」
「私もそのぐらいしか…その中の旅の内容とかをちょっと知っているだけで…」
二人は頭を悩ましているが、その中で二人を無視して俺は思考を巡らせる。
二人は勇者の事を確かに知っている、しかしその後、勇者の身に起きた惨状を知らない。
何故この二人は知らない?あの本にはしっかりと書いてあったが…どうなのだろう
「そのひとのさいごってしってる?」
「さ、最後?あーっと多分大人しく元気に暮らしたんじゃないか?そこまでは俺も知らないが」
ハックはラフィの方ちらっと見るが、ラフィは首を横に振った。
反応から察するにラフィも知らないのだろう。
ならばあの最後のあとがきのようなものは何なのだ?なぜあの本には記載されていたのだ?
いや、あの本がおかしいだけで本来知られない情報だったのだ。
勇者の最後があんな終わりなど、誰も知らないほうがいい。
「なんだジェイク、勇者に興味があるのか?」
「うんうん、きになっただけ」
「そうか、子供心っていうのは案外分からないなぁ」
ミャーガレット祭か、確かに興味深い物だ。
三年置きに開かれる大きな祭り、それはそれは念には念を入れて開かれるに違いない。
最近はというよりこの時代に生まれてからずっと考え詰め状態が続いていた。
たまには羽を伸ばすとしよう。
それにその祭で、あることが確認できるはずだ。
「そのミャーガレットさい、いってもいい?」
なるべく可愛く愛嬌たっぷりの上目遣いで二人に質問する。
しかし、二人からの返答はない。
あ、あれ?ダメな感じだったか?でもさっき連れて行きたいぐらいってラフィは…
「はっ!!危ない危ない。ら、ラフィ気を確かに!」
「……はう」
ラフィはハックに体を預けるようにして倒れ込んだ。
「あーこりゃ駄目だ、ジェイク」
「な、なに?」
父親ハックがいつになく真剣は声を出すので、油断していた俺の体に神経が張り巡らされる。
お、怒られるか?
「祭りに行きたいって?もちろん最初からそのつもりだ。
俺も子供が生まれたら三人で行きたいと思ってたしな。
三年準備され続けた祭りが一気にドカンと破裂するように盛り上がるあの感じ!」
「あ、ありがとう?」
「でもなジェイク、一つ言いたいことがあるんだ」
ハックはラフィを椅子に座らせ、俺のことを抱き抱えて俺の自室まで連れて行くと寝る場所に俺を寝かた。
そして捨て台詞にようにハックは呟いた。
「急に可愛い仕草をするんじゃない、俺たち二人には効くから」
「よく寝るんだぞ」と本当に最後の言葉を残してドアを閉じた。
どうなったのかはわからないが、会話の流れから察するに俺の美貌で両親は倒れてしまったってことでいいのか?
確かに母ラフィの方に似ていると自分でも多少なりとも自覚してるが、それでもそうはならないだろう。
全く大袈裟な親だな、しかしこういう生活も悪くない。
二人は立派な俺の親だ、3年も経てば母親と思わなくても無意識にそう思う。
親たちのおかげで毎日楽しく過ごせている。
ミャーガレット祭か、何か文献があっただろうか、ハックが言うには三年間準備を重ねて行う祭りというからには想像もできないほどでかい祭りのはず…何か文献があってもおかしくはない。
とりあえず、今日の夜はそれに関する本を探してみよう。
───────
───
「よし!!着いたぞ!」
次の日の夜、俺たち三人は予定通り三年置きに開かれる最大級の祭り、ミャーガレット祭に来た。
ちなみに俺は乗り物のようなものに乗せられている、自分で歩かなくていいというのはこれほどまでに快適なのか。
そうそう、家にはミャーガレット祭についての記載されている本はなかった。
ある程度の数の本を探したのだが、それらしき物はなく、探索検の魔法を使って探すのも考えたのだが、前と同じく大量に本が飛び出てこられても大変なだけだ。
ミャーガレット祭は俺が一歳の時に訪れた街の場所で開かれ、今日だけどんなことがあろうと仕事を休んでミャーガレット祭に参加するらしい。
それは昼から始まり夜の終わりまでその活気が消えないようで、その証拠に、家で外の様子を見た時には数多くの人がこの街に集まりだしていた。
「相変わらずすごい活気ね、なんだか気圧されちゃうわ」
「だな、どうだジェイク?すごいだろ」
「…すごい」
いやいやいや…すごいなんてレベルの話ではない。
ミャーガレット祭、まるでここにいるのが当たり前のようにすべての人達がここに集結している。
活気があるなんてもんじゃない、俺もラフィと同じく気圧され、さらには倒れてしまうそうになるほどの圧というものがある。
至る所で各々が好きなことをやって楽しんでいる姿、自分で作ったものを販売している人達。
何か腕相撲大会でも始まればそこには幾たびの観戦者が募り始め、応援の声を全員で上げ、称賛が起こる。
これ以上は言葉で言い表せないほどでかいものである。
「お!?ハックか!まさかこんなに早く会うなんて」
入り口のところで唖然としていると、俺たちのいる場所の右側からハックより少し歳を食っている中年の男がこちらに向かってくる。
「お!?まさかこんな最初最初の時に合うとは!あなたも変わりませんねぇダンさん」
ダンというのか、体の体幹が少しふらついているが大丈夫なのだろうか?
「はっはっは!それはお前が変わりすぎちまったんだろ、あんなに小さかったお前に気が付いたら嫁がいるんだ!すげぇなおい!どうだ?これから」
右手で輪を作って、口元に運んでから少し揺らす。
これは…おそらく酒の話だ、通りでもう出来上がっているわけだ。
「いやーすいません、今日は嫁と子供と三人で来ているので…」
「嫁?子供?…あぁ!」
ようやくこちらに気が付いたのか、少し大きな声をだしてこちらの見た。
「あんたがハックの嫁か!」
「はい、ラフィと言います」
「はっはっは!ハック、おめぇもなかなかの美人を嫁に取りやがったな!」
「そうでしょう?ラフィは世界で一番かわいいんですよ」
「ちょっと!」
ラフィが少し頬を赤らめてハックを叱る。
甘いねぇ、この二人を見てると、俺の人生は正解だったのかどうかわからなくなってくる。
俺は人生すべてを魔法研究に費やし、名の知れた者になったわけだが、最後には一人で死んでいった。
対してこの二人は死ぬまで幸せに生きていくのだろう。
いいものだねぇ、今回の人生は友好関係も大事にしていくのもいいな。
「んで、こっちが…」
「はい、俺たちの子供、ジェイクです、まだ三歳で意外と無口なんですけど、いざ喋ると可愛いんですよ」
「ほぉ…」
ハックの説明を受けたダンがじっと俺の事を見つめてくる、それにとても近い距離で、若干俺の鼻に酒の匂いが匂ってくる。
な、なんだ?まさか俺の美貌とやらに惚れてしまったのか?勘弁してくれよ、俺はまだ純粋でありたいんだ。
「…マジか、こりゃすげぇ」
「えっと…何がすごいんですか?」
ダンの謎めいた行動にラフィはダンに聞いた。
本当に何がすごいんだ、俺が美しすぎるか?お前まで両親と一緒のことを言うのはやめてくれよ。
「俺な、いつも子供とか小さい奴と目が合うと、子供の方はすぐに泣いちまうんだ、なんでか知らねぇけどな。だから、俺と目を合わせて、なおかつこの距離で合わせてんのに一切泣かない」
「確かに、ダンさんと目が合う小さい子供いつも泣いちゃってますもんね、それでいつもその親御さんとかに叱られ」
「それは今はいい!とにかく、こいつ気に入ったぜ、俺を見ても泣かない子供なんて初めて見た。将来すごい奴になること間違えなしだ。俺はダン!次会うときは俺の名前なんて覚えてるかわからないが何度だって教えてやるぜ、覚えるまでな」
ダン…お前の事やっぱり好きだよ、将来すごい奴になること間違えなし?なかなか見る目があるじゃないか。
「っと、悪いな俺が入っちまって、じゃあなハック、またこの祭りで会えたらその時な」
「ダンさんもあんまり羽目を外しすぎないようにしてくださいね、いつも送ってたの俺なんですから」
「はっはっは!!大丈夫だ!」
そう言い、ダンは俺たちの元を離れて、活気ある祭りにいる人たちの波に吸い込まれるように姿を消した。
「…なんか、すごい笑ってたわね」
「まぁそれがダンさんだしな、さて!!早速俺たちも行くか!」
ハックはそういった後、ラフィと俺連れて街の波に飲み込まれた。
ミャーガレット祭、改めて世界最大級の肩書を持つ祭り、少しわくわくしている節が自分でも感じ取れる。
今日は羽を伸ばす日、余計の事は一つだけ考えてこの日を楽しもう。
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