【第三十話】 -大気を揺らす呼吸の音-
「はぁ、あの学園長も無茶振りしてきやがる」
俺たちは部屋…教室に戻り、少し雑談をしていた、仲良くなるためなんだと、全員の机で円を描くように座っている。
そしあそこで起きた理不尽についてグリムが話している。
舞台の上に立ち、俺たちが最上位クラスのだと顔を見てもらった所で、まさか学園長が意気込みを言えと無茶振りをしてきた。
「それでも、グリムさんは賞賛されていたじゃないですか、俺もああ言う反応が欲しかったんですけど」
学園長の頼みは流石に断れんと、結局全員それぞれの意気込みを言った。
結果は明らかで、グリムとシュートとミランは称賛。
対して俺とこのクォーツは無音だった。
「無理言うな、明らかに俺らよりも年下すぎる子供が学園最上位クラスに居るのはおかしいってもんだ、ぶっちゃけ俺も信じてない…てか何歳なんだ?」
「五歳ですよ、数ヶ月前にこの国に来たんです、学年で言えば一年ですね」
年齢を明かすと、全員の視線が俺に釘付けになる。
いつでも冷静っぽいシュートも、今回の話を聞いて口をあんぐりさせていた。
「……五歳ってのは本当でいい、じゃあどうやってこのクラスに入れてくれって懇願したんだ?」
「…懇願?」
グリムが悪びれることなくただ純粋な疑問に言葉を失った。
そうか、グリムたちからすれば俺はクラス創設の話を聞きつけてクリラに懇願したと思われているのか。
俺も何故このクラスにいるのかよくわかっていない。
「俺の人生、誰かに頭を下げたことは一回もないんですよ」
「……やっぱ、認められねぇ」
グリムは目を細め、その赤い目で焼かれるかの如く俺の事を凝視する。
俺はグリムと対面居座っているからか、グリムの視線は思わず目をそむけたくなるほどに強い。
「認められないとは?」
「ジェイク、お前が最上位クラスにいる事だ」
このグリムの発言が、俺たちの声を止めた。
全員の視線がさらに俺に集約していく、その中には不可思議、興味とそれに加えて疑いの視線。
この空気を一言で表すのなら重いという言葉がお似合いだ。
「俺の周りにも、めちゃくちゃ努力してる奴がいる、必死に努力して俺に届きそうなやつだって多くはないが居るにはいる、優しさで言うぞ?ここはお前見たなぽっと出がいていい場所じゃない」
「……そうだな、俺も陰ながら思っていた」
次に、グリムの席から一つ右に飛ばした位置に居るシュートがグリムの言葉に便乗する。
「私もあなたはここにいるべきではないと思うわ、正直に言ってみて?」
などと、ミランは朗らかに言うが正直に言って信じてもらえるかという疑問がある。
「ぽっと出…ですか」
「そうだ、俺もこんなことは言いたくないが」
「この先、俺らはこの学園で起きる様々な事件やらに携わることになる、耐えられるか?それだけではない、集団でお前を襲ってくる奴が出てくる、想像以上に陰湿だ」
「私たちがあなたに送れる最後の忠告だわ」
有名人三人が、俺が成るべく傷つかないように気を遣ってくれている。
白髪のクォーツは何も言わない、本当にこの三人とは違って何も力を持っていないという事か。
いま俺が言われたことにクォーツは少し自分が言われているような感覚を覚えている可能性が高い。
では逆に、この三人が欲しがっている言葉を投げかけてみてはどうだろう…いや、性に合わない、それではただの言いなりだ。
『お前には無理だ、そんな体と頭で何が出来るんだ』と、前の人生で子供の時はよく言われた。
その言葉を言われた度に結果で黙らせた俺にとって相手が望む答えを出すと言うのは俺の誇りに傷がつく愚策だ。
誇りは時に、合理性よりも優先されるものだ。
「……三人とも、感謝します、まだ出会って少ししかたっていない俺をここまで気にかけてくれる人なんて、今まで両親ぐらいでしたから」
俺に忠告した三人とクォーツが顔が少し明るくなる。
本当に嫌味ではなく善意である言葉を聞いた後では少し心が痛くなる。
「ですが、俺は不要な気遣いとも呼ぶことできます」
「……なんだって?」
「俺にその気遣いは不要だと言っているんです、結論を言うと俺はこの最上位クラスを抜けることはしません、そもそもクラスと言うのは抜けることが出来るのですか?」
三人とも口と口が縫い合わされたように声を発しない。
クラスを抜けるという事はすなわち学校を抜けるという事に他ならないのではないだろうか。
そう思ったその時、俺はグリムを凝視した。
突如として目の前にいるグリムが大きく息を吸ったかと思うと、その次には大きく息を吐いた。
その姿は不自然なもので、グリムの深呼吸は明らかに一般人の肺活量を超えているような、一種の風の魔法ではないかと聞き間違えるほど、グリムの吐いた息が風魔法のようだ。
その姿にシュートだけが顔を青ざめ、急いで椅子から立ってグリムの方に近づきその肩を握る。
何が起こっているのかわからない俺たち三人だが、後からミランが理解した声を上げた。
「おい、止まれグリム」
「そうか、お前がそう言うなら仕方がない…無理矢理にでも止める」
「……いじめの可能性を危惧していた人に暴力を振るわれるとは思いませんでした」
少し嘲笑うように言う。
しかしグリムの態度は変わらない。
「暴力をするつもりはねぇ、俺たちがやるのは正統で平等で、文句を言われないものだ」
「…何をやるんですか」
「フェアリアム…と言っても、初めてこの学園に来たお前には分からないだろうな」
「グリム!何を─」
「静かにしてろ、簡単に言えば魔法を使った言った一対一の戦いだ、何かの揉め事だったりは大体がこのフェアリアムの結果で決まる…それをお前に申し込む」
フェアリアムか、あまりに日常的には使われない戦い形式であることは間違いない。
大きな団体同士が争うときに使うものなのだと思うのが、一対一でも使えるのか。
受けるか…受けないか。
この存在している二つの選択肢…俺以外の四人がそう思っているのかもしれないが、俺にとっては一つしかない。
「受けません、俺がそのフェアリアムを受ける必要性が感じられないですから」
答えは簡単、受けることはしない。
わざわざこの学園の最上位クラスに入れてもらったんだ。
待遇も目を見張るもの、自分から受けて負けでもしたらそれこそ後が面倒だ。
俺は受けない、負けのの可能性に足を突っ込むのは愚か者だ。
俺の言葉にグリムの取った行動は、さっきと同じように大きすぎる深呼吸だった。
「そうかよ…なら、俺からはもう何も言わない」
先ほどまでの緊張と殺気が満たしていた部屋の空気が消え、さっきの雑談まで時が戻ったような感覚だ。
「…もういいかな?」
その空気になった途端、中の空気を察知してクリラが教室の中に入ってくる。
こいつ…まさか待っていたな?
「何やってるんですか先生」
「いやーね、やること終わって中に入ろうとしたら急に教室の空気が怖くなったから…安全な外でほとぼりが冷めるまで待ってたんだ」
「その件はすいませんでした」
グリムがクリラに頭を下げた。
この姿を見ると何か俺が悪いと思ってしまうな。
「あぁ大丈夫大丈夫、もう帰る時間だから早く帰ってくれ、じゃないと私が怒られるからね」
それだけを言ってクリラは教室から出て行ってしまった。
早く帰ろう、アミとの約束もある。
「ジェイク…戦いを受けなかったお前には少し苛ついたが、何か困ったことがあるなら何でも言え…ここにいるこの三人もお前の味方だ」
「そうだ、もう過ぎたことだ、俺はいつでも待っているぞ」
「私には何も言わないでね、面倒ごとはしたくないの」
「わ、私は全然大丈夫です!」
「……ありがとうございます、その時はお願いします」
俺は教室の扉を開けてほかの四人より一足先に教室を出た。
それにしてもグリム…なかなかの威圧感があった。
「……おぉ」
意識していないのにもかかわらず、俺の両手は小刻みに震えていた。
これも殺気に慣れていないからか、俺は魔法研究家であって戦闘家ではない。
戦いを知らない俺にとって、ただの学生のが放つ殺気でさえも威圧されて委縮してしまうだろうな。
────
──
唐突だが、何もかも完璧な絵があるとしよう。
だが、その絵の中に一つだけ似つかわしくもない色がある。
その時、人はその色を批判することが出来るだろうか、置かれた色自体に批判出来るか?
出来ないはずだ、色が意思を持ちそこに向かって行く事はあり得ず、その色がそこにあるのはその絵を創作した絵師の意思が存在するからだ。
この場合批判の矛は置かれた色ではなく、その絵師に向けるべきなのだ。
色を批判したからと言って、色が謝罪をすることもなければ、置かれた理由を雄弁に語ることもない。
まぁ、何が言いたいかと言うと…
「てめぇ…まじふざけんのか?」
グリムと同じぐらいの年齢か、はたまた二つ上ぐらいの歳、さらにグリムよりも身長が高い三人が俺の周りを囲んで見下ろしている。
「何で、とは?」
「何で俺が最上位クラスに選ばれずに、テメェみたいなガキが選ばれんだよって言ってんだよ!」
…まぁ何が言いたいかと言うと、そう言うのはこの教室を作ったクリラに行って欲しいと言う事だ。
ただ選ばれてそこに置かれた俺と言う色は、その真意を知るわけがないのだ。
次の投稿は五日後か四日後ぐらいになります。
私用です、うん。
結構ねもう、なんて言うか寿司の上に乗ってるあいつがなくなってきています。
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