【第二十六話】 -飛び級試験-
タイトルを変えてみたよ
「ここだ、さっさと入れ悪魔憑き」
あれから七日経過した。
俺は予定通りティズ・グラントリアが言っていた試験会場の学園まで門番と来ていた、何やら仕事が忙しいのだとか言って本人は来ていない。
ハックとラフィもついて行きたいと言っていたが、流石に仕事を探すのが優先で来なかった…別に仕事なんてしなくてもいいのにな。
「その言い方、聞かれたら誤解されかねないので辞めてくれます?」
「事実だ、誤解ではない」
誰かに聞かれでもしたら即刻処刑だぞ?
こいつ本当こいついい性格してるな。
「と言うか、アミは大丈夫なんですか?ちゃんとこの学園に入れるか不安でしか無いんですが」
アミもこの学校に入るための試験やら何やらを受けると思うのだが、俺の知っているアミを想像すると少々不安になる所がある。
「お嬢様は大丈夫だ、どっかの誰かさんが悪魔憑きにしてくれたおかげで家主様は混乱していたが、今は心配ない」
「……すみませんね」
俺は純粋な謝罪をした。
いや、悪かったとは思っているが仕方ない事だろう。
「謝るな、悪魔憑きになったとはいえ結果的にいい方向に事が進んだのだ、俺からしても家主様からしても感謝の念が絶えない」
「そうですか、ならずっと感謝しといてください」
「それは無理だ」
門番は相変わらずの無表情で俺と会話する。
無表情ではあるが意外に会話ができるのがこいつの面白い所だ。
「お嬢様の心配をするより、まずは自分の心配をした方がいいのでは?聞いた話によると七日前までは杖で魔法が使えなかったらしいじゃないか、何か解決策でも見つけたか?」
「その事ですか、もう大丈夫ですよ」
「……お前がそう言うなら、俺からは何も言わない、家の帰り道は分かるな?」
「それぐらい分かります、さっさと帰って仕事に戻ってください」
「だな」と門番は一言感心するように呟き、グラントリア家に戻って行った。
「では…」
俺はこの学園と向き合い、一呼吸入れて足を踏み入れた。
俺にとって初めての学園、ここに関してはその辺の子供と比べられる程の知識であると思い臨んだ方が良いだろう。
に、してもだ…
「この学園…いわゆる名門と言うやつではないか?」
そう思う原因が自身の存在を誇張する大きな形をした学園に広い敷地。
更には統一された少し暗い赤色がこの学園の上品さを表しているようだ。
今思えばそりゃそうだ。
何せこの国随一の権力を持つグラントリア家の娘が入る学園だ、ここ以外は似合わないとだろうな。
「場所は…闘技場?」
実力試験の会場が闘技場…なんて物騒な名前だ、5歳やら8歳やらの子供が沢山居るの学園だろ、訓練場とかに変えた方がいいぞ。
学園の地図を見ると、闘技場は学園の右側に隣接してる場所か…どんな事やるのだろうか。
「……まぁ実力勝負と言っていたし」
ある程度のことなら対応できるだろうな。
────
──
闘技場は広く周りが円状に囲まれている構造で、地面は砂が一面に敷き詰められている。
そして上の方には観戦するための観客席があった。
「恐らく、結構実践向きな場所なのだな」
砂はいつ何が起こるかわからない物だ。
時には滑るし、目潰しの如く目に砂を掛けられる非常に汎用性が高い。
…なんて、よくあいつから聞かされたな。
今思えばとても懐かしい奴が頭に現れる。
「…予想はしていたが、やはり俺一人か」
俺はこの闘技場に入るやいやな全体を見渡したが、誰かが入ってくる感じはしない。
もう時間はギリギリまで迫ってきている、これ以上の入場はないと考えられる。
そもそも飛び級試験だなんて本来やることではない。
人がいないのは当たり前だと言うのは分かっていたが、誰か一人ぐらい居るとは思っていた。
「お前か?今日飛び級試験を受けるって言う受験者は」
そして時間ギリギリになった今、俺が入ってきた後ろの扉から気だるげな女性の声が俺の耳に入る。
「精が出るな、まだ早いだろう」
後ろを向くと、やや紫気味の黒い髪色をバッサリ切って、着崩した服を身に纏っている女性がいた。
「時間ギリギリだと思うんですけど、もしかして間違えてましたか?」
「いや全然、私はよく遅刻をする方でね、だから時間通りくる子供を見ると自分の不甲斐なさに心が痛くなるんだ」
「はぁ…そうなんですか」
なんかよくわからない人だな。
俺が戸惑っていると、女性は周りを見渡して最後に俺の方を見た。
「わかっていたが、受験者はお前だけか、じゃあちゃっちゃと始めようか」
女性は俺の方に背を向けて歩き出した。
「一体何をやるんですか?」
「準備だよ少年、これが面倒くさくてね、その辺で寝てても構わないよ」
女性は奥にある物置きのような所から一つの的と、いくつかの太い棒を持って、こちらに向かってくる。
「じゃああなたが準備をしている間、何か話しましょう」
「お、いいじゃんそれ…まぁでも何について話すの?」
女性は準備の手を止めない。
そうだな…そう言われると案外出てこないが…じゃあ。
「先生の名前はなんですか?」
「私の名前?そうだな…教えてあげない」
女性は肩を震わせて笑いを交えながら言った。
「何でですか?別にいいじゃないですか」
「ジェイク君だっけ?君結構図々しい所があるね、いいかい?まだ合格するかもわからない君に名前を教えるのは嫌だね」
合格すれば名前を教えてもらえるという事か。
是非とも知りたい、こんな距離近い先生はこの学園にはおそらくこの人ぐらいしかいない。
「じゃあ、早く名前を聞かせてください」
「話聞いてたかな?合格したら言ったんだけど」
「絶対に合格できるので大丈夫ですよ」
「………」
女性は手を止めて顔を少し動かし俺の顔を見る。
この俺の顔に何を思うか、女性は小さく笑った。
「はっはっは、自信満々なのはいい事だけど教えてあげない、絶対に合格できるなんて口ではなんとでも言えるさ」
駄目だったか。
でも収穫はあった、ここで合格すればこの人も印象に残る。
学園に入れば、色々手助けしてくれるかもしれない。
「一応確認するけど、君はこの試験に合格すれば三年の所まで飛び級するって事で間違い無いんだよね?」
俺とアミの年齢差を考えると、それが妥当だろうな。
「そうですね、それで間違い無いと」
「わかった、じゃあ私の方に来てくれ」
女性は俺に手を仰ぐ。
試験の準備は終わったようだ。
女性は俺が近くまで来ると、足元の地面の砂を抉り印の線を引いた。
「じゃあ試験を始めるよ、言っておくけど少しでも贔屓してくれると思わないほうがいいよ」
「そんなつもりないですよ」
「そうかい、じゃああれを見てくれ」
女性は俺の前方向に指を指した。
その方向には先程物置から拝借した的が置いてあった。
「じゃあ説明するよ、あの的を破壊して、以上」
「…え?それだけですか?」
「うん、それだけ」
両手で指を二本立てて女性は肯定した。
三年の飛び級試験。
いくら優秀なやつがやるとしても、所詮は小さな子供の試験だったか。
「本当に壊すだけでいいんですか?」
「そうだよ、なんでも好きなようにここから魔法を使って的を壊してね」
不可解、故に警戒。
最初から最大魔力で的を粉々にする。
的を壊すに最適な魔法は土魔法。
土魔法の物量で一気に破壊するのが一番いい。
「制限時間はないから、集中してね」
けど、この世界じゃそうとはいかない。
この世界で土魔法は使えない。
なら次に一番いいのは魔法は…よし。
俺は右手に持っていた杖についている布を捲り捨て、的に向かい構える。
やはり手に馴染む感覚だ。
「………」
杖に魔力の流し、先端から魔法陣が形成される。
風の魔法、先端を尖らし回転させて突貫力を上げる。
昔は『風魔法〈風針〉』なんて呼んでいた。
風の魔法の場所から波紋上に砂が大きく舞い上がる。
以前はここで魔法が離れずに終わった。
しかし、今回は違う。
「……ッ!」
風の魔法を発射する、俺の意思で発射した。
完全に視認できるほどの回転と大きな風の魔法。
風が空気を裂くと言う異様な光景、三秒もたたずして風の魔法風針は数十メートル先の衝突した。
風針の先端から的の削り粉が飛び、的に小さな穴が開いた瞬間、内部から破壊されるようにゴタゴタに砕け散った。
「ふぅ…」
地面に砕けた的の大きな部分が落下する。
砕けたな、それは派手に砕け散った。
「砕けましたよ」
後ろにいる女性を見る。
「……えぇ」
困惑がと言う言葉が一番似合う表情をしていた。
怪訝とした女性の視線が俺と地面に砕け散っている的を交互にした。
今気が付いたんですが、地の文を書くときは必要以上の情報は与えない、なるべく淡泊に簡潔にした方がいいと今更ながらに思ったよね
よければブックマークや感想、星の評価などなどよろしくお願いします。
これら全て私の励みになりますので是非是非




