【第二十四話】 ‐杖の魔法‐
女性同士、そして互いに子を持つ者同士、身分の違いはあれど根本的なところは何一つ変わらない俺の母ラフィとアミの母ティズ・グラントリア。
「それで、そちらのアミちゃんがかわいらしいんですよ」
「へぇ、それはそれは…うちの娘が何かしでかしていないかとても心配だったんですが、楽しく過ごしていたようでとても安心しました」
何だが、思いのほか会話が弾んでいるように見える、まさに談笑と言った感じで俺が思っていた考えはただの杞憂であったかのように思えてくる。
では、俺とハックは何をしているのかというと、ただ目の前に出されたおいしい料理を頬張っていた、会話以前にこの料理を味わいたいといった感性が強く働いている。
まぁ、ハックはたびたび質問されれば会話に入っているが、俺は本当にあれ以降しゃべっていない。
口では悪魔付きかどうかは気にしないと言っているが、本当は結構気にしているのかもしれない。
「話は変わりますが、そちらのジェイク・ガーネットさんは今後どう生きていくおつもりなのですか?」
すると突然、俺の方にティズ・グラントリアは質問を投げかけ来たが、意図が汲めない難しい質問だ。
どう生きていくかって、どういう意味だ、質問の意味がよく分からないが。
「もう少し簡単に言うとどういうことですか?」
「すいません、少し言葉が分かりずらかったですね、私が言いたいのは一つ、あなたは学園に通うのかはたまた通わないのか、一体どちらを考えているのか、それが聞きたいのです」
学園か、あまり気にしたことがなかった言葉が出てきたな。
前の人生は…学園には通っていなかった、昔は学園に通うためにはそこそこお金がかかった。
そんなに裕福な家庭で育ったわけではないからな、ずっと家で手伝いと魔法をつかって遊んでいたような気がする。
「そうですね…個人的な意見としては学園には通ってみたいと思っています」
ならば、今回の人生では学園に通ってみたい。
義務的な物ではなく、俺は心から学園に通ってみたいと前の人生から常々思っていたからな、二度目の人生、ここを逃せば次はないと思う。
「…そうですか、では先ほどの経済面の支援についての話と関係してくるのですが、経済面をサポートする代わりに一つだけ条件を呑んでほしいのです」
「……条件、ですか?」
「私たち、何かできるほどの力は持ってないですが…」
権力も金もない俺たちに一般家庭に一体何を望むのだろうか。
「そんなに畏まらないでください、お金も何もいらないいですし、何ならそちらにとってもいい条件なはずですから、望むことはただ一つだけ、私の娘のアミと同じ学園に通ってほしいのです」
「…それだけですか?」
ティズ・グラントリアは頷く。
「はい、それだけ吞んでくれれば、経済的な支援も致します、勿論の事学園に入る際のお金も支援致します、なのでどうかお願いします」
なんて言っているが、経済的な支援を受けるためには結局呑むしかない、そもそもそんな好条件、飲まないっていうのがおかしな話だ。
…それ故、どこか裏を感じてしまうのは俺だけだろうか、このあまりに美味しすぎるこの蜜に、どこか毒が盛られているような気がするのだ。
「そんな条件、飲まない方がおかしいですよ、母さんたちも良いよね?」
そう思っていても俺は口に出さない。
もし仮にそうならば、こんなところで悟られてはならないと思ったからだ。
「勿論、ジェイクの言うとおり…私たちはその条件を呑みます」
「俺も同じく」
二人がそう言うと、ティズ・グラントリアが少しに笑みを浮かべて、こちらに一枚の紙とペンを差し出してきた。
「では、こちらの方に記入をお願いします。恩義があると言っても、これは権力を持つグラントリア家との契約として取り扱います」
まぁ、間違ったことを言っているわけではないな、それは俺の他二人も共通してわかっている事だろう。
見た感じ、特段変なことが書かれているわけではない、問題はないと見受けられる。
ラフィはその契約書をスラスラと紙に書いてティズ・グラントリアに渡した。
その紙の記入不備がないかを確認したティズ・グラントリアはその紙を懐にしまった。
「思ったんですけど、俺とアミの年齢は三つ離れていますがそこら辺は大丈夫なんですか?」
同じ学園に入ったとしても、結局年齢差で離れてしまうため意味がないように思える。
「そこら辺は大丈夫です、貴方を飛び級させます」
「……飛び級?」
飛び級、聞いたことがない単語だ、悪魔憑きと同じような物だろうか。
「飛び級というのは過程を飛ばすこと、学園は年齢ごとに一年、二年と上がっていきますが、既にそれ以上の知識や魔法力がある人にはその過程を全部飛ばしてより高い学年から始まることができるのです」
なるほど、悪魔付きのような悪い言葉ではなくその逆、それが出来れば優秀の烙印を押されるのか。
しかし今の言い方では少し語弊があるような気がしなくもない。
「……それ、そちらの一任で決められる物では無いのでは?飛び級をさせるかさせないかは他でもないその学園の学園長が決めることではないのですか?」
「勿論、私たちはその飛び級試験を受けさせるだけで…合格できるかはあなた次第になります」
「試験って、いったい何をするんですか?」
魔法知識の試験、それ以外なら魔法を使う実力試験ならば俺の得意範囲だ。
しかしこの世界の知識を問われる試験だった場合悩ましいものになってくる。
「試験は主に三つ、一つは知識を問われる試験…いうなら世界についてどれぐらい知っているか、そして二つ目は魔法知識を問われる試験…さっき言った一つ目とは少し違う問題が出されるわ、そして三つ目は魔法の実力試験…あなたにはこの三つ目の試験で飛び級を図ってもらうわ」
「わかりました、特に意見はありませんので三つ目で飛び級試験をやりたいと思います」
それでやっていいのなら、それに越したことはない自分の得意な部分で戦うのが一番だ。
「その前に、もしよろしければあなたの魔法を見せてもらうことは可能ですか?」
「…俺の魔法ですか?」
「はい、私個人の興味と試験の見定めと言った感じです」
興味か…まぁ別に隠すことではないからな。
「大丈夫ですよ、減る物ではないので見たいならばいくらでも見せますよ」
「では、外に移動しましょうか丁度全員食べ終えていますしね」
────
──
外に出ましょうかと、ティズ・グラントリアに案内された場所は家の玄関ドアから出て右側にある広い庭のような場所、そしてそこから少しした距離の場所には一つの藁人形があった。
「では早速、魔法を見せてもらいましょうか…と思ったんですが、肝心の杖がないですね…ではどうぞ」
俺はティズ・グラントリアから一つの杖をもらい、それをまじまじと見る。
これが杖か、頭の中にはずっと杖が杖がと現れていたが実際手に持ったのはこれが初めてだったのにもかからわず、何故だが意外にもにしっくり来てしまうのが少し複雑だ。
「じゃあ杖を使って魔法を操ってみてください…と言っても、悪魔憑きのあなたは簡単に扱えるでしょう」
「杖を使って魔法を扱うのは初めてです…何をすればいいんですか?」
「簡単です、杖に魔力を流し込んで、自分が使いたい魔法を頭の中で想像する…本当にこれだけですよ」
正直そんな簡単なものではないと思うのだが、まずはやってみないと何も始まらないし、それについての文句も垂れることが出来ない。
俺は杖を前に突き出し、言われたとおりに魔力を流してみる。
そうすると、俺の持っている杖の魔石部分が光りだして先端から魔法陣が形成される。
さらにはその魔法陣から水球が形成され、その魔法陣の上に滞在する。
案外簡単ではないか、これなら簡単に実力試験を突破できそうだ。
「ほッ!」
確かにこの時…俺は簡単だと思った、俺の前世は世界に名を馳せた魔法研究家のジルク・リージョン。
今更この年代の試験はどうという事ではないのだ、子供の試験で俺が躓くはずがない。
「ん?何やってるんだジェイク」
「どうしたの?」
「…何か、ありましたか?」
「…ッ!!」
…なのに何故、形成した水球が魔法陣から発射されないのだ!?
魔法陣から、一向に水球が離れない、今まで感じたことがない衝撃に心が乱れ、魔法陣から形成した水球が崩れ落ちた。
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