【第二十話】 -それ即ち壊すためにあり-
熱が出てだいぶ遅れましたごめんちゃい
「…アミ、時間だ」
「………」
辺り周辺の活気が少なくなってきた夜、俺はアミを起こそうと肩を揺らすが、アミから起きる気配が感じられない。
両親に会いに行きたいとせびってきた張本人が、まさか起きないとは…まぁいい。
「失礼する…よっと」
俺は寝ているアミの体を持ち上げ、音遮断をかけ、ハックとラフィにバレないようにドアから外に出る。
そんな事をやっても、俺の腕の中にいるこの少女は未だぐっすりと寝ている。
「…後から文句言うなよ?」
地面を少し踏み込んでから飛行の魔法を駆使して、抱き抱えたアミと共に空中に飛び上がる。
後から文句を言われることは間違いなさそうだが、俺の呼びかけに応じなかったアミが悪い、そう言うことにしておこう。
────
──
「……ん?」
地上から約百メートル辺りをぷかぷかとゆっくり飛びながらグラントリア家を目指していると、ようやくアミが目を覚ました。
「起きたか?」
「……ん」
寝起きで頭が回っていないのか、アミは自分の置かれた状況について何も言ってこない。
「何処?ここ」
「空中だ」
アミは下を見て自分の置かれた状況をようやく理解したか、体が震え始める。
「え…え?」
「怖いならもう下を向くなよ、暴れられて落ちられたらたまったもんじゃないからな」
「こ、怖くなんてないし、ちょっとびっくりしただけ」
虚勢を張っているようにしか見えないが、そう言うのならば否定はしない。
アミも起きたことだし、悪戯も兼ねてもう少し出力あげても良さそうだ。
「アミ、今からちょっと速度上げるから、しっかり捕まってくれ」
「え、ちょっと待って」
さっきまで使っていた飛行の魔法の速度を形成する部分の一部を書き換えて再度発動させる。
すると、ゆっくり速度の飛行が突然暴走したかのような速度で俺たちは目的地まで一直線に突き進む。
「ちょっと!!無理無理!!死んじゃう!」
俺の服を強く握っているアミが暴れ始めているの感じた俺は、逆に強くアミを抱きしめる。
「暴れないで、絶対に大丈夫だからそのまま目でも閉じとけばいいからさ」
「それでも無理ッ!」
「………」
「ちょっと、聞いてるの!?ねぇ!」
アミの声は、風のせいで声がよく聞こえなかったと言う事にしておこう。
しかし、こんなに叫ばれたら地上にいる人達に存在を見られて、謎の飛行物体として話題になるのは少々気分がよくない。
可哀想ではあるが、アミには音遮断の魔法をかけて強制的に大人しくなってもらう。
「───ッ!!!」
よし、成功しているな。
飛びながらの魔法陣形成は意外に難易度が高いから、成功するか心配だったのだが、いい働きだと自分を褒めてやりたい。
さて、この感じの速度を維持したままで、アミの実家に到着する時間は今朝地上で歩いて向かった時間の三倍速く到着することが出来るであろう、それ以上飛ばすことも可能ではあるけれど、アミを抱えている
今、これより速度を出すのは危険行為だ。
「じゃあアミ、あと少し時間が掛かりそうだから頑張って」
「──!?」
あまりアミの方ばかり見ていると変な方向に俺の体が飛んでいく可能性がある、最後の言葉を言い残して、ただ前の見ることに集中した。
最後見たアミの顔は、頬が引きつって、少しの恐怖に染まっていたが、俺はそんな事お構いなしに速度を維持したまま飛んでいった。
────
──
「…っとよいしょ」
空を飛んではや数十分、下を見てみると俺たちの住んでいたところよりも確かに人が多くなってきたことからこの場所はラッターニの中心部分であることが分かる。
しかし空を飛んで気づいたことだが、中央の国ラッターニの中心部分というのは名ばかりで、本当の位置は中心部分から上の方に進んだところにあった。
何故その位置を中心部分と言うのかはさておき、グラントリア家の真上まで来た俺はその場所で静止する、さてとこっからだったら余裕で入れそうなんだが、そんな緩い警備態勢でいいのかグラントリア。
こんなにでかい家を構えているという事は、この国一番お権力者という事ではないのか?俺が空を飛んでいるときはこれ以上にでかい家を見なかったからそうだと思っていたんだが。
「…ん?」
ゆっくりと下に降りてみると何かがその途中でかたい何かに当たったような感覚が手に伝わる。
もう一度手を伸ばしてみると、それが気のせいではないことが分かる。
…これは、一体なんだ?
なんてことを思っていると、突然震える感覚が右肩を襲う。
「──!!」
「あ、忘れてた」
そういえばアミの声を音遮断の魔法で強制的に黙らせていたんだったな。
しかし、さっきみたいにまた叫ばれるのはまずい。
音遮断の魔法をかける前のあの場所ならば謎の飛行物体として話題になる程度だったが、ここはグラントリア家だ、何かの拍子に気づかれる可能性が高い。
「約束してくれ、ここからは一切叫ばずに、大きな声も出さない、それができるか?」
しっかり面と面を向き合わせ真剣な顔でアミに言いうと、アミは首を縦にぶんぶんと早く振った。
手から魔法陣を形成してアミの顔全体を覆うようにかざす。
「よし、これで大丈夫なはず」
「あー、あー、これ聞こえているのかしら」
「ちゃんと聞こえてるよ、いくらうるさかったといても、事前に言わなかったのがごめん」
「もう治ってるならそれでいいわ、それでこれからどうするの?早く下に降りればいいのに」
軽いな、自分が存外に扱われているのにそれでいいのか。
「そうしたいんだけどね、それができないから困ってるの」
コンコンと俺が自分の指で空中にある謎の壁を叩くと、アミも続いて自分の位置とは低い場所に手を伸ばし、驚いたような声を出してその不思議な現象を感覚で認識する。
「へぇ、これも魔法なの?」
「多分、魔法で間違いないと思うけど」
魔法であることは見た時から候補に挙がっていたが、それよりも不思議なのが何故透明なのかという事なのだ。
これは透明な魔法陣だという解釈で終わらすのは何か違う、そもそも透明な魔法陣は絶対にありえない、その行為は空中に文字を書くのと同等に難しいのだ。
そうなると、どこかに必ずこの結界を形成している動力源があるはずなのだ。
「…よし」
正体不明の結界、効果も分からなければその規模も何もかもわからない…ならばやることは絞られる。
「なんかわかったの?」
「あぁ、とても簡単なやり方で中に入る方法を思いついた」
「どんなやり方!?」
俺が新しい魔法を見せてくれると思っているのか、アミの目が輝いている。
しかし申し訳ないことに、そのアミの望みがかなう事はないだろうな。
「そんなに難しい事じゃないよ、アミにも出来るからさ」
「…ねぇ、ちょっと」
「どうした?」
何だ?アミの顔がまた少し恐怖しているが、何か異変でも起きたのだろうか。
「気のせいならいいんだけど、なんか上に上がっていってる気がするんだけど」
………チッ
「え!?ちょ、何々!?」
気づかれたのならば仕方がない、ここからは短期決戦だ。
恐らくアミがいつも通りならば絶対に叫ぶだろう、アミは困惑している間が勝負。
ある程度高度を取り戻した俺は、足先から魔法陣を形成する。
俺は今から賭けに出る、それもあまり勝率がない賭けだ。
この張られている結界、恐らく全魔法に対して何かしらの対策が施されているだろう、それぐらいしないと結界としてはあまり強いとは言えないし、それが仮に正しいとして考える。
全魔法に対策がされている、改めそれはすべての魔法も通さないという事だが、一つだけ気になる点がある。
「全魔法というが…それはどの時代の全魔法だ?」
右足から形成した魔法陣から、殺傷能力の高い鋭利な俺の足と同じ大きさの岩が顕現する。
岩の魔法という広く言うならば土魔法、平和な世の中になったこの世界で存在がほとんど消えた魔法の一つに記載されていた失われた魔法だ。
ただ岩がそのままそこにあるだけは駄目だ、回せ、限りなく回すんだ。
「行くぞッ!」
「あぁもう!」
今までにないほどの力で服を握るアミを信用して急加速で落下していく。
そして寸前のところで右足を結界に突き出し、岩魔法と結界を衝突させると、耳障りな音を立て続けて結界を突破せんと回り続ける。
「ちょっと、大丈夫なの!?」
「あぁ!」
大丈夫か、そう問われれば微妙だ。
結界が思った以上に硬い、恐らく初めて受けた魔法であるのにもかかわらず硬いのは元の耐久面が優れている証拠だ。
…しかし、結局はそれだけの事だ。
飛行の爆発的な勢い、そして岩魔法の硬度と高速の回転により生み出された力で、結界がひび割れ始める。
結界を壊すにはもっと、もっと勢いがいる。
飛行の魔法陣をさらに書き換え、速度を上昇させるのと同時に、岩魔法の回転速度も速くする。
先ほどより一層耳障りな音が甲高くなり、岩魔法がぶつかっているところからパラパラと粉が舞い上がり、飛行の風魔法で俺たちの周りを吹き荒れる。
「…さっさと壊れろ!」
そしてついに結界と岩魔法の接触部分から、ヒビが入る始める。
「やった!!」
アミが歓喜の声を上げる。
こうなればあとは簡単だ、このまま行って結界をぶち壊すだけだ。
「……あ」
あ、まずいと瞬間的に思った。
そして次の瞬間に、結界は俺たち二人が入れるほどの大きさの穴を作った。
その後どうなるかなんて、考えつくはずだったのに。
「うおおぉぉ!」
「きゃぁぁぁ!」
飛行の魔法陣をさらに書き換え、速度を上昇させていた俺達もとい俺の体は結界という俺を速度を受け止める壁がなくなり、突然の勢いが体を襲い、まずい、窓と衝突の判断を余儀なくされた。
「音遮断!!」
衝突予定の窓に音遮断の魔法を付けて、俺が最初に激突する形でグラントリア家に入った。
改めて研究魔法音遮断、この魔法には随分助けられてきた物だ、昔の俺様様だな。
「いってて、一体ここは何処なんだ」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
「え、何?」
こ、今度はなんだ?
声をした方向を見ると、白と黒が印象的な服装の女の人が俺たちをみて叫び出してどこかへ行ってしまった。
まずい、こんな所で叫ばれては――
「なんだ!?何事だ!」
その声に釣られ、他の奴らもわらわらとこの場に集まってくる。
その手には人を傷つけることを目的とした長い槍だ。
「逃げるぞ!」
「……え、えぇ!?」
「待て!!何者だお前たち!」
アミを抱き抱えて、痛い体に鞭を打って飛行の魔法で逃げる。
顔が割れた、俺たちは侵入者として逃げていると言う事で捕まったら牢に入れられる事間違いない。
そんな出来事を解消する唯一の方法が、アミの母親にある。
アミの母親がこの事態を報告されないわけない、絶対に確認に来るはずだ。
しかし……あぁもう、なんて日だ。
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