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【第二話】 -螺旋の命-



子供の頃から、いや生まれた瞬間から、俺の人生は魔法研究に費やすものなんだって思う。

そんぐらい魔法が好きだっし、何より面白かった。

例えば、自分の体に流れている魔力というのは有限なのか、大気にも魔力があり、無意識的に吸収しているのではないか。などなどに非常に興味があった。


自分が子供だった頃、それを話の持ちネタにして近くの同い年ぐらいの子に話しかけた。これを機に仲良くなって魔法研究をともにしようじゃない。


そんなことを思っていたのだが、その子供から発せられた言葉を今でも覚えている


『お前気持ち悪い、誰?』


その子供は俺を置いて逃げるようにどこかに行ってしまった。


なぜ逃げる必要があるのか?みんな魔法研究は好きではないのか?気にならないのか?

魔法について自分で開拓してみたとは思わないのか?と母親に泣きながら説明した。


俺の話を遮らないで相槌を打ち、俺の話が終われば母親がこちらに真剣が顔で、しかし優しい顔で話していた。


『ジルク…人には価値観と言うものがあるの、ジルクの好きが必ず誰かの好きだとは限らない。ジルクが嫌いなものを好きだという人もいるし、ジルクが好きなものを嫌いだという人もいるの』


なるほどと感銘を受けた、子供の頃の俺は意外にもすんなり母親の言葉が心に入った。

そういう場面は何回か見たことがあったからだ。近くの子供でキノコが苦手だと言っていた子供を見て不思議に思っていたがそういう事だったのか。


『言いたいことは、必ずしも自分の好きが相手の好きとは限らない、色々な価値観を持つ人を許容するの、ジルクあなたにはそれができるわ。分かった?』


母親からの送り言葉。人生の中で一回でも忘れたことはない。

そしてこれからも、天国であっても黄泉の国であっても、俺は母親の言葉を忘れることはない。


最後に行きたいのは天国だけどな、さすがに自ら黄泉の国に入るようなバカではない。


「───────!!」


「───!」


なんだ?おーいなんて言ってるんだ?聞いたことがない言葉だな。黄泉の国か?

それとも天国か?ていうか死んだ後の世界というのはこういった感じなのか?


まさか普通に夜に寝て朝に起きるような感覚だったとは思いもよらなかった。


「────?」


「───────」


声の角度的に、何か俺に話しかけているような感じがする、というと、黄泉の国か天国からの声という事になる、よし…


さらなる探求心が刺激された俺はそこで勢いよく目をかっぴらく。目をずっと閉じていたため強い日い光が目を襲い半開きになるが、段々慣れてきて見えたのはそこは天国でも黄泉の国でもなく、テーブル、いす、本棚、剣と言ったただの部屋のような感じ…黄泉の国ではない?ましてや天国でもない??


思考停止、死んだオオカミのように体が固まった俺の前に一人の男が視界に入ってくる。

男が視界に入ってきたことで思考がようやく動いた俺は質問する。


『おい!?ここはどこなんだ!お前たちは何者だ!?』


えぇい!こいつら赤ん坊がいるのか、そいつのせいで俺の声が全く聞き取れていない!おーい!!


「───?、───」


「────?」


「──────!!」


な!何をやっている!?こいつら、自ら死にに行っているぞ!!口と口を合わせる行為は意識していなくとも魔力が二人の体内を循環する!そして魔力には相性あり、悪ければ最悪死ぬ相当危険な行為だ、それを平気で、しかも幸せそうにしているだとぉ!?どんだけ死に急ぎたいんだ!


『おい!?やめろ!下手をしたら死んでしまうぞ!』


俺の必死の問いかけに気が付いたのか、次は女の方が俺の方に近づく。


『おい、ここはどこなんだ!?何故さっきから俺の問いかけに応じない!?聞こえていないのか!?」


女の方は俺の必死の問いかけに聞こえていないのか無視を決め込んでいるのか、ニコニコとしているだけで何もしようともしない。というか、俺の知らない言語という事は俺の言葉も当然理解できていないことになる…んなら!動け体!


手と足に精一杯力を入れてこの二人に近づこうとするがとてもではないが動くことはなかった、しかしあることに気づく。

力を入れても起き上がることができないんじゃない?力は入るがなんかもっとこう、別…あ、


自分の異変に気が付いた俺は反射的に手を中に上げる。その手を見て驚愕した。

そもそも腕に力が入ること自体がおかしなことだったんだ、なんでもっと早く気が付かなかった?

自分の老いぼれた腕はどこへやら、まるで生まれたての赤ん坊のようにすべすべした肌、しかしそれは信じがたい出来事であっても俺の腕で間違いないのだ。


『もう一度チャンスをくれないか?』


まさか本当に?本当に俺の願いは届いたのか?つまりこの二人は俺の新しい母親と、そしてこっちが父親

どちらもまだまだ契りを結んでから日が浅いようだ。


「────?」


俺の反応に何か違和感があったのか、母親と思わしき人が俺の事を持ち上げ抱きかかえる。

子供の頃ってこんな感じなのか、しかし精神年齢はもはや70歳前後だった俺にとってただただ複雑な気持ちで沢山だ。


「─────」


ていうか、相手の言葉がまるで理解できない、使うか。正直な話赤ん坊の状態から魔法を使ったことなんて一度もないし、見たこともない。


心を落ち着かせて体内に流れる魔力を感覚で確認する。

魔力の流れを口一点に集中させ、口に収まるぐらいの魔法陣を口の中で描く、


『研究魔法〈言語理解(ランジ)〉』


もっとも、この二人から見れば俺がただうーうー言っているようにしか聞こえない。

しかしそれは好都合、赤ん坊のころから魔法が扱えるなんてそれこそ悪魔の子だなんて言われ捨てられる可能性が高い。


さて、どうなるか……


じっと二人の事を見ていると抱きかかえている女の方がこちらに向けて笑った。


「きっと、おなかがすいているんじゃないかしら?ちょっと待って、あなた」


よしっ!!初めての試みだったが何とかなったみたいだな。


女の方が抱きかかえていた俺を男の方に渡して足早にこの場を去ったことで俺と男の二人だけになった。

女が消えてからというもの、男は俺を腕から放し、その辺の床に座らせた。


「おう、よーしジェイク、何するか?」


俺の名前ジェイクっていうのか。

まだ喋れない子供にそんなこと出来るわけないでしょうに。

まぁ…付き合ってやるのもいいだろう。


適当にあたり周辺を見渡して適当に遊べそうなボールを手に取って投げる。


「ボール遊びか?いいぞ!好きなところへ投げろ!」


俺の投げたボールを手に取りまた俺に渡し手から少し離れたところに立ち俺の前に腰を落として両手を広げてどしっと構えている。

俺は全然やる気じゃないんだけど…仕方がない。


「ほっ」


一投目


「フンッ!」


……


「うー」


二投目


「ハァッ!」


……少し本気で投げるか。


「……ッ!!」


「ほッっとぉ!危ない危ない!」


……マジか、まぁまぁ本気で投げたのに、赤ん坊の力だからそんなに速度が出ないのか。

負けたままじゃ終われなねぇな


「うー!!」


「ほッ!!」


「うー!!」


「イッグッ!!あぶねぇ…」


クッソ!!、なかなかやるじゃねぇか俺の新しい父親。しかし、俺の体力は無尽蔵なんだよ!!


「ちょっと、何やっているの?早くジェイクを渡しなさい」


「あぁそりゃないぜ、今男同士の熱い戦いをしていたんだ」


「何馬鹿なこと言ってるのよ」


確かに熱い戦いだった、そこに年齢なんてものは些細なもんでしかない。

はっきりわかる、言葉が分からむとも心はつながっていた。


「さて、ジェイク、食べ…あら」


な、なんだ?急に眠気が…


「ジェイク?眠いのか?今日はもう疲れているだろうし寝させて方がいいんじゃないか?」


「そうね、せっかく作っちゃったけど、また明日ねジェイク」


女は俺の抱きかかえて俺がさっきまでいたどころにあおむけの状態で寝かせた。

さっきまでの興奮状態が覚めて急に眠いのか。

全然動いていなかった思っていたが、やはり赤ん坊の体、体力が以前の俺と比べて塵ほどもない。


数秒後にはもう、新しい母親と父親を目に捉えることができなかった。


────

──



「……」


「グググガーハー…ジェイク、がんばれぇ」


もしかして、死んだショックでひどい幻覚を見ているんじゃないかって思っていた。

しかし今、この男のうるさいいびきで起こされた俺のできることは信じがたいこの現実を受け入れることだ。


まさか本当に『生まれ変わり』をしたということなのか?

概念そのものは知っていたが単なるお伽話だと興味がなかった。


しかしお伽話と揶揄していた俺自身が犠牲者になった今、信じる他ない……ククククッ。


「ウッウッウッ!」


どの神か存じないが、俺をもう一度生まれ直させてくれたこと感謝する。さぁ今、この瞬間から俺の新しい人生は始まっている。1分1秒も無駄にはできない


上で見てな神様、俺が目を疑うような魔法を見せてやるよ。


























これからたくさん時間をかけてやっていこうと思っています。面白くなりそうなんじゃねと思った方!評価やコメント、ブックマークなどよろしくお願いします!

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