【第十七話】 ‐帰還‐
「……確かにいい作戦かもしれないけどよ、うーん」
俺の作戦を聞いたハックは申し訳なさそうな顔をした。
今現在、俺たちは目的の人物がある場所を目指して歩いている。
後々帰ってきたラフィの手にはこの魔法使いの国のお金が握られていた、何とかなったと思われたが、かなり通貨の量が見た目少なくなっていた、換金自体は成立したものの、この金額で生活をしていくのは難しいと言われたらしい。
「まぁでも、これしか残ってないならなぁ」
「うじうじしていても命の危機は訪れる、此処は一度心を悪魔にしていかないと」
「…そうなんだけどなぁ」
ハックも、その意味を理解しているが、少し汚いやり方がどうもいけ好かないらしい、いつでもどこでも正々堂々という言葉が似合っている男だ。
困っている人は何でも助けたい人っていう性格から由来するその考え方は、いつか利用されるのではないかと心配になるな。
「はっきり言っちゃうと私も好きじゃないやり方だけど、ジェイクの話を聞いた限りこれが一番確率が高い…というか確実な方法なのよね」
確実な方法…とは言ったものの、この作戦には懸念点が二つある。
極微細な確率だが、決してないわけではない可能性だ。
「…なぁアミ、さっきの話本当なんだよな?」
「ほんとの事よ、わざわざ嘘をつく必要なんてないじゃない…どんなに時間がかかっても行かないといけないから」
アミの確固たる横顔にこれ以上言うのはよそう、それに本人も十分に理解しているだろう。
ただし、それとは別問題なことが浮上している。
「…アミ、一つ聞いていいか?」
「…何?」
この瞬間、もう一つだけ懸念点が増えた。
視線を訝しむように左右に移すと右には干し肉売り場、左には果物を売っている場所、看板の文字や色に見覚えがある…というよりも。
「ここ、さっきも通っていないか?」
「……そう言われてみれば」
「…アミちゃん?」
「…あっているはずなんだけど」
そう言ってはいるが、事実俺たちは迷ったこの場で迷っている。
おいおい頼むぞ、このラッターニの土地勘を持っているのはアミだけなんだ、それが分からないとなると…使うか。
「…アミ、本当に覚えていないのか?」
「私の記憶じゃここだったの…でもないってことは」
アミの居ない三年の間にどこかに移住した可能性が高いってことか…懸念点二つ目、もう中央の国ラッターニにはそいつはいないって事だ。
どこか遠い国に移住した可能性が高い、三年という時間の中で自分の家を忘れるなんてことあるのか?
あくまで可能性にすぎない、確実にするためにもここらで最終兵器を使うとしよう。
「アミ、目を閉じてその場所を意識して」
「…ん」
目を閉じたアミの頭のところに手をかざし、魔法陣を形成する。
こんな公共の場で、それも人が少ないところではなく賑わっている道の中心で全員の視線を引き付けるようにすることだ、結果的にもそれが注目の的になるのが望ましい。
…ハックとアミにはほとんどの確率でバレるかもしれないな。
『研究魔法〈捜索検〉』
そう唱えると、アミの頭から白い光を帯びる粒子が飛び出す。
その粒子は掛けられた本人が望んでいる場所を特定する使命に従い、あらぬ事か俺たちが歩いてきた方向に動き始めたと同時にその軌跡を追いかける。
「さて、じゃあ付いてきてって…三人とも?」
後ろを見れば俺以外の三人がその場で固まってしまっている
「…あ、あぁ行くか」
「…そうね、行きましょうか」
「…今の私にもできる?」
アミは歩きながら興奮覚めない様子で俺に聞いてくる。
そういえば、アミたちには水球以外の魔法を披露したことがなかったな、そりゃ驚くわけだ。
「誰でもできるよ、魔法ってのはそういうものだから」
誰がやっても同じような魔法が打てる、それが罪人や魔物…神でさえもだ。
才能なんて関係ない、魔法を使うのに才能がいるのなら、俺なんて絶対に使えないだろうな。
────
──
「…おっと」
俺の家から向かって遠く遠く歩いた所、俺たちの家がある場所よりもさらに人が多く、魔法を使う者も当然多くなっている事から
おそらくラッターニの中心部なのだろう。
その中心部で、捜索検の魔法で放たれた光の粒子が徐々に速度を落とし始めた。
速度が落ちるのは捜索検が終わりを迎えている証拠、目的地近づいているのだ。
光の粒子が角を曲がって進み、もう一度角を曲がるとそこから広い道に出て、そのまま道なりに光の粒子と共にまっすぐ進む。
さらに少しして、光の粒子はさらに遅くなり、目的の場所真上の空中で浮遊し続けている。
「…さて、着いたか」
目的の場所、馬鹿みたいにでかい家から貴族の風格が漂う白色の作りに、周辺には少し高い壁が白い家をぐるりを囲っている。
それは俺の捜索検の大雑把に場所を特定する魔法でもすべてがここに集まったほど広い。
「でっか!!!」
「本当信じられないぐらいでかいわね」
「…入り口は?」
アミが、そう小さくつぶやく。
視界の範囲内を見た限り入口は見当たらない。
所詮は大雑把な魔法、入り口まで案内なんてことを期待するだけ無駄だ。
「ここじゃなさそうだ、周辺をまわってみよう」
視界はこのでかい家にとどめながら周辺をまわる。
それにしても浮いている、この家はほかの家とは比べ物にならないほど浮いている。
まるでこの中央の国ラッターニすべてを上から見下ろしているような感覚、この家だけは絶対に崩してはならないと家自体から言われているようだ。
「…お!人がいるぞ、あそこが入り口なんじゃないのか!?」
歩き始めてから恐らく半周ぐらい、ハックが指をさしたところに二人の人が立っていた。
門番か、その手には槍が備えられている…確かに、いつ命を狙われてもおかしくないもんな。
にしてもだ、理由はあるかもしれないが何故魔法使いを雇わない?槍で魔法に勝てるとは到底思えない、対峙すれば即刻黄泉の国だ。
後数歩というところまで来ると、門番の鋭い視線が俺たちを刺してくるのを必死に耐えて、門の前で足を止める。
「…なんだお前たちは」
目の前の門番の一人が俺たちの行動の意図を図ろうと表情を変えずに聞いてくる。
「あ、あーっといや、そのー」
ハックが門番の眼光にやられ、靄が残るような回答をし続ける。
「ここに住んでいる人に会いたくてここに来たんですけど…会う事ってできますか?」
ハックとは対照的に、門番お目付きなんてものには物怖じせずラフィが門番に言った。
「…確認しろ」
「はっ」
片割れの門番はもう一人いた門番お指示に従って門の中に入っていった。
こちらの方が一応上の立場ってことなのだろうか。
「…見ない顔だが、家主に招待されてここに来たのか?」
「…いや、そういうわけではないんですけど…ただ少し用があって」
ラフィがそういうと、門番の男は面倒くさそうにため息をついた。
「たまにいるのだ、家主を拝みたいと家の中に入れされろと図々しく言ってくる自分の立場も分からぬ者が…お前たちは初めて見る顔だ、悪いことは言わない、帰った方がいい…ここに入りたいならば、家主かその家族に招待してもらう事だ、しかしここ最近家主は不機嫌極まりない、承諾されるとは到底思えないが」
「いや、だからそういう事じゃ」
ラフィ一歩にじり寄る。
その一歩動いたその先で、槍がラフィの眼前に迫る。
その勢いにラフィはしりもちをつく。
「お前、何やってるんだ!」
「それ以上近づいてみろ、次はやる、忠告はしたぞ、善人を殺す趣味はない」
怒りに身を任せて門番に近づくハックを槍で牽制しながら言った。
門番は悪いことをしているわけではない、この家を守ることが彼らの仕事だ。
一通りのやり取りがあった後、もう一人の門番が門の中から姿を現した。
「どうだ?」
「家主様曰く、今日はそのようなことはない…と」
「だ、そうだ、おとなしく帰るんだな」
何度も言うが仕事だ、その判断が下されれば絶対に変えないだろう。
…さて、出番か。
「ねぇねぇ門番の人、ちょっといい?」
軽い子供の少し高い声で門番に聞くと、鋭い眼光を解かず、俺の方を向く。
そんな顔していたら泣くぞ子供。
「…なんだ子供、さっきも言ったがもう帰るんだ」
「さっき言ったよね、この家に入りたいなら家主またはその家族に招待してもらえって」
今度は大人のような低い声で威圧的に問いただす。
門番はその落差に少し困惑した表情を顔の奥に現した。
「…そうだ」
「じゃあ、入ってもいいよね」
「なぜそうなる…おい、抜かりなく確認したんだろうな」
「はい、確かに家主様はそのような予定は今はないと」
「…小僧、俺たちで遊んでいるのか」
槍の刃が少しずつ俺の方に向いてくる。
そんないかにも子供が泣きじゃくる状況でありながら、俺は後ろにいる奴に声をかける。
「ねぇ、入ってもいいよね?アミ」
「……なるほどね」
俺の意図をくみ取ったアミが俺たちの前に立つ。
そして言った。
「このアミ・グラントリア、グラントリア家としてあなた達三人をこの家に招待します」
俺たちの目的はアミの家、国家有数の権力者で、これほどまでの家を抱えるグラントリア家の両親だ。
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