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【間章】 ‐運転手と二人‐



「……何が、起きているんだ」


目の前の男が驚きのあまりしりもちをつき言葉を発する。

そうだ…その表情だ、受け入れがたい現実をから目を背けたいその表情…最高にいい気分になる。


「こ、こんな事、ありえるはずがない!何かの間違いだ!」


未だ証拠を目の前で見ている男が何かを察するように顔が青ざめた。


俺の後ろには、三人の魔法使いが水球を手から出している。

形も完璧なきれいな丸形の水球だ。


「……本当にそうかなぁ、現実を見ようよ」


おっと、目の前の男を見ていたら思わず口が開いてしまった。

目の前の男の視線は俺の方に向き、至極当然のことを抗議し始めた。


「ッ!お前だ、お前が何をやったんだ!何をしたんだ!?何をすればこんな事が」



まさかこいつ…俺が何かの禁忌の魔法なんて使っていると考えるのか…ここまでくると腹が立ってくるな、それに前、俺を嘲笑った件についてもまだ清算が済んでいない。


「何って、ちょっと考えたらわかる事じゃーん、他人から聞くよりまずは自分で考えた方がいいんじゃない?それと一つ助言すると、目の前で起きている現実に『ありえない』っていう言葉だけで済ませるのは思考停止と同じだよぉ?」


「クッ…まだ五歳児の子供がこの年長の私に助言だと…ふざけるな!」


男の怒声に辺りの壁と装飾品などが少し揺れる感覚が肌を伝わる。

俺の方がこの人より歳言ってるはずなんだけどな…って言ったらさらに怒るか、そろそろ面倒くさいから片をつけるをしよう。


「ほら、よぉーく見てごらん?目の前で起きている状況ちゃんと口で説明してみてよ…僕まだ五歳児の子供だから言葉足らずでわかんないから説明して?リリディさん」


そう言って俺はリリディに近づいて三人の居る方向に指をさす。


「クッ…幼少期に魔法適性を行い、適正なしと判断を下された三人…ラフィ・ガーネット、ハック・ガーネット、そして…」


「アミ・グラントリア」


そう言えば、リリディはアミの名前を知らないのか。


「アミ・グラントリアは…もれなく全員…魔法使いになった…」


「だから、この三人はどうすればいいのかな?」


本当は分かっているがあえて相手に言わせて完全な敗北を味合わせる。

当然それ気づいているリリディは俺がギリギリ聞こえるぐらいの音の大きさの歯軋りをした。


「ジェイク・ガーネット含め四人は魔法使いの国に行く…行かないといけない」


「はい、五歳児でも分かりやすい説明ありがとリリディさん、五歳児向けだったね」


肩をポンポンと二回叩いてリリディの近くから離れ、三人の居る方に歩く。


「……クッ…何故だ、何故だ」


あえて後ろは見ない、見たらリリディの顔が分かってしまう。

真に相手の悔しいという感情を楽しむのは声で相手の顔を想像して嘲笑ってやること…あいつが前俺にやった事と似ている事だ。


「……なかなかえぐいことするわね」


ラフィとハックの顔が若干というか、かなり引いている。

まぁ確かにやりすぎた気もするがこれでトントン、両者恨みなしというわけだ。


「……ねぇジェイク、私たち…」


「あぁ、今アミが思っている考えで間違いない」


俺がそういうと、アミは安心した様子で、少し泣き目になりながら事実を噛みしめている。

そんなアミに続いて、俺の教会内から空を見るように天を仰ぐ。


「…ようやくだ」


ようやくこの街から出ることができる、この言い方では語弊があるな…ようやく魔法使いの国に行ける。

俺をこの時代に顕現させた神様にはずいぶん長い時間待ってもらったが退屈な時間もこれまで、ここからは本格的に動き出す。


しかし、また神様には待ってもらうことになるだろう。

俺が今やったことを例えるならば、大きな白い紙の端にほんの少し黒色を付けただけ、誰にも認識されない色でいつの間にかなくなる色。


しかしそんな未来は来ない、俺が来させない。

絶対にこの世界をという白い紙を黒という常識の色で塗り替える。

そして、俺の生きている中での最後の魔法研究を始める。


「…一体、何者なんだ…ジェイク・ガーネット」


いつの間にか起き上がっていたリリディが最後の悪あがきかのように俺に質問した。


「…そうだな」


しばし考え、やがて頭の中で出た答えをリリディに当てた。


「魔法が超好きな、ただの五歳児だ」


──────

───



そんな出来事が、今から約二週間前の出来事だ。

まさか本当に俺が三人の事を魔法使いにできると思っていなかったようで、寮暮らしと言った感じだったのが、俺のせいでちゃんとした家をまた最初から手続きをするらしい。

行くのは中央の国ラッターニ、丁度アミの両親がいるところに俺たちは行くことになった。

そして今日がこの街を旅立つときである。




いやー爽快爽快、俺の秘密をラフィに話した時ぐらいに晴れ晴れとした気分だ。


俺たちの現状を知ったこの街に住んでいる人達からたくさんの祝い品をもらった。

肉に果実に酒に様々、これは今までハックが培った顔の広さのおかげだ、父さんにはとても感謝してもしきれない。

特に特徴的なのがダンで、酒片手にめちゃくちゃ泣いていたのは一生頭の中に残るだろう。


俺たちの家にあった家具たちはそのままで、絶対に持っていきたいものだけを早朝に迎えの馬が引く乗り物に詰めてその中に乗る。


「どんなものなんだろうな、魔法使いの街ってのは」


馬が荷台を引いてもう夕方時、ラフィとアミが疲れ寝静まった時に、馬が引く荷台の中でハックがぼやく。


「そうだね…やっぱり魔法使いが沢山いるんじゃない?」


「それはそうだ、魔法使いの国っていうぐらいだからな…なぁ運転手さん、あんた魔法使いがどんな国か知らないか?」


馬の操縦に取り掛かっている運転手と呼ばれた男は顎髭を触り、少し唸った後話し始めた。


「…今までの常識じゃやっていけねぇなぁ」


「やっぱ、魔法使ってるんですか?」


「あぁ…お前たちの想像を絶するものばかりだ、魔法使いの国に求められるのは変化だ」


「んー…例えばなんですか?」


「例えばかぁ?そうだな…魔法ってのは本当に便利なもので、その裏脅威的な危険性を持つ」


驚異的な危険性…か。

不意にあの男が思い浮かぶ。


「でな、魔法使い達はいつも俺達の想像を超えるような魔法を使う、魔法を使い続け自分が何者なのかも分からなくなってくるほどの魔法だって存在するって話だ…その自分の変化を受け入れ立ち上がる事が大事と、俺は思うがな」


「運転手さんも魔法を使えるんですか?」


「はっはっは!俺はからっきしだ、魔法なんて使えねぇよ…だが送迎屋みたいな俺の仕事柄、少しは魔法使いを見た事があるな」


「それで?」


「俺の立場から言うと『恐怖』だ、俺達なんて奴らからしたら小さい虫となんら変わりない…だからな、今こうやってお前たちと話してるけどもう手が震えて仕方がねぇ」


確かに小さな隙間から見えている運転手の手は少し震えている。

運転手の言葉は比喩ではなく本当のようだ。


「いやいやいや、そんな事しないですよ!」


「んなこたぁあんたの性格と立ち振る舞いを見ればわかる、でも根底についた恐怖ってのは中々消えねぇ、特段何かをされたわけでもねぇのに、恐怖しちまってる」


文献でしか見たことがない生物に恐怖するみたいな感じか。

しかし実際に見たことがあると言っていたので恐怖はそれの比にならないだろう。


「んまぁとにかく、どんな状況でも受け入れるってことが大事だ、受け入れて前を向く…それは俺たちにも、魔法使いにも言える人間という枠組みの話だ」


「…もし、現実が受け入れられずにずっと前を向かない人が現れたら、どうする?」


一つ、聞きたくなったことを運転手に聞いた。


「別に俺は立ち止まることが悪いことなんて言ってるわけじゃねぇが、そんな事をしても現実は俺たちの応否を待つことなく襲ってくる、先延ばしにしまくって結局立ち直れないっつう事が起きる前にさっさと受け入れる方がいいだろうな」


「それもそうだけど、今すぐ目の前に現れてきたら、なんて言葉をかける?」


「言葉ぁ?そうだな…『いつまでも甘えてんじゃねぇぞガキかあんたは』っていうな厳しいようだがそうしねぇと前の前にいる奴のためにならねぇ」


「……なるほど」


日々変化する世界に対応するためにはこちらも変化をする事…十分理解した。


とそんな事を思っていると、不意に俺らの乗っている乗り物が止まった。

どうやら運転手に男が馬を止めたらしい。


「さて、俺の仕事はここまでだ」


しかしおかしい、外を見ても魔法使いに国らしき活気、それ以前に家すら立っていない平原が広がっているだけの場所で仕事が終わりだと?


「ここで終わりって、何かの冗談です?街どころか家すら何一つ建ってないじゃないですか」


ハックも俺と同じ疑問を持っており、運転手に言った。


「いや、確かに俺の仕事は終わった…ここで交代する手筈になっているからな…ほらな」


運転手が指をさした方向を見ると、俺たちの進んでいる方向の反対側からこちらと同じような乗り物がこちらに迫ってきている。

唯一違うところは、その乗り物を動かす原動力がいないところだ。

こちらで言えば馬の存在らしきものがいない。


その得体のしれない乗り物が一寸先で止まった時、運転手は乗り物から降りて前から来た乗り物に乗っている人と話を始め、何か区切りがついた段階でこちらの方に戻ってきた。


「さて、次はあれに乗ってくれ」


「いやいや、話の状況がつかめないんですけど」


ハックが困惑した顔で言った。

すると目の前の運転手は少しため息をついた。


「俺の仕事は終わって、次はあれに乗って魔法使いの国に行けってことだ」


「いやいや、荷物とかはどうするんですか」


運べなくはないがそれにはだいぶ時間を使うことが推測される。

荷物だけではなく、アミとラフィを一度起こすのも何かと気が引ける。


そう思った瞬間、何か後ろの方でガタガタと音がし始める。

何事かと思い瞬時に後ろを見ると、俺たちが運んできた荷物が浮いており、浮いた荷物はそのまま目の前の乗り物まで移動してゆっくり落下するようにまた積みあがる。

……そういう事か。


「本当にいつ見ても恐怖だな…魔法ってのは。さて!あんたらも行った行った!」


「は、はいわかりました、行くぞジェイク」


「それは良いんだけど、寝てる二人はどうする?」


「…なぁそこの乗り物にいる人!さっきの魔法で寝てる二人をそっちに連れてってやってくれないか?さすがに寝ている人を無理やり起こすのは気が引けるんだ!」


ハックが言ってから数秒後、俺たちの反対側の乗り物の奥側が突拍子もなく光始めると、後ろにいたラフィとアミを寝たままの姿勢で浮き上がり、そのまま目の前にある乗り物へを入り込んだ。

先ほどの荷物といい、今の二人と言い、本来数十分かかりそうな動きを五秒でこうもあっさりとできてしまう方法は、皆まで言うなと言った感じだ。


「じゃあ、ここまでありがとうございました運転手さん」


「ありがとうございます」


そう言ってハックと俺はラフィたちが入っている乗り物へと入り込んだ。


「あんたらの幸福を祈ってるぜ、くれぐれも変化の波に押されねぇようにな」


運転手の言葉を皮切りに、俺たちが乗っている乗り物が走り始めた。


「おぉぉ、これはすごいな」


俺たちの乗っている乗り物には一切の揺れがないく、それでいて速度も申し分ないほど出ている。

これは俺の時代にはなかった風魔法の使い方だが、このような車体を安定させながら速度を出すのは至難の業であるのが分かる。


「なぁ運転手さん、あとどんぐらいで着くんだ?」


「………まだ結構かかると思います」


運転手は事務的に回答する。


「そっか、じゃあ俺もつかれたし寝るとするかな」


「…ならば、ぐっすりさせてあげます」


「いやいや、そうやって出来たら苦労しな…い」


えぇ…ちょっと眠そうだったのが突然気を失うように寝てる…これも当然魔法なんだろうが、さすがにこれは俺の知らない魔法だ。

と言うよりも、俺の生きていた時代から大分時間が経っているという事は俺の知らない魔法が出てきていても全然不思議ではない。

そうか、今の時代にも俺の知らない魔法が何個か存在するのか…どんな魔法なのか楽しみだな。


「……そちらの方も、どうですか?」


三人が寝ている今、俺の事だろうな。


「じゃあ、お願いするよ」


「………」


返答を声を代わりに杖の光で返答した運転手の魔法に、瞬く間に俺の意識は落ちた。




異世界の乗り物ってなんて言うのが正解かわからんよねぇ

よければブックマークや感想、星の評価などなどよろしくお願いします。

これら全て私の励みになりますので是非是非


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