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【第十五話】 ‐魔法訓練Ⅱ‐

あれから一週間が経った。

俺が魔法使いの国に旅立つまであと1週間という訳で思い返せば色々とあった思い出の場所になっている。


最初俺がここで目覚めた時、ラフィとハックの口付けを見て心の中で叫ぶ姿は自分でも思い返すたびに笑ってしまう時がある。

あの時はまさか魔力が凝り固まりないと言われている人が居ると想像もついていないだろうな。


そしてアミの施設の件だが、あまり俺も詳細は知らない。

あの後ラフィが家に帰ってきて施設から大丈夫と言われたらしいが、その中身の話を聞こうとしてもいつもはぐらかされる。


しかし、そんなラフィを見て何かを察した声をあげていたハックに気づき、俺もこれ以上この件について言及する事をやめた、理由は単純で何となくだが危険だと感じたからだ。


さて、思い出やら何やらに耽るのはこれぐらいにして、そろそろ目の前のことに集中しよう。


「アミいいよー!そのまま形を保ってみて」


俺の目の前には辺りを走りながら右手に空白の魔法陣を作っているアミの姿がある。


「……あ!」


その瞬間、アミの手から出てきていた空白の魔法陣が木が切られ倒れる瞬間のような音を出して崩れ落ちる。


あれからアミの成長は目を見張るもので、俺の教えたことをすぐに吸収していく。

まぁそんなアミでも今やっている魔法陣の形を保つ訓練で大分足を止めてしまっているのだ、はやり魔法はそんなに簡単ではない。


魔法陣の形を保つ訓練といえど止まって保つのは簡単だ。

重要なのは動きながらでも形を保つことだ。


横にある時計が指し示しているのは約1分、魔法に触れて1週間にしてこの結果は上々なものだ。


「1分ぐらいだったね、いいと思うよ」


「…それって」


「合格だよ、よく頑張った」


「よし!まさか1週間も掛かるだなんて思わなかったわ」


「俺からしたら、1週間でここまで出来ていることが凄いよ、じゃあちょっと待ってて、二人の様子を見て来るから」


残りの二人だが、1週間の時間があったが未だ魔力の流れが見えず感じずの状態…28と32歳の年月の凝り固まった魔力をサラサラの状態にするには2週間じゃ足りないのか?


「二人とも大丈―」


「きたぁぁ!!来たぜ来たぜ!」


ドアの開けた瞬間にハックの叫び声が俺の体を貫通し外の空中に響く。

……ようやく来たか。


「父さん、そんなに叫んで一体どうしたんですか?」


「来たぜ魔力の流れ、俺も感じたんだよ!」」


「おぉ!ついにですか」


「そう!一時はどうなるもんかと思ったがな!これで俺も晴れて魔法使いだ!」


気が早いなハックは、そのやる気を維持したまま是非ともアミがやっている訓練でやる気を出して貰いたい。


「では、父さんが二人目ですね」


「んあ?あぁ違う違う、俺は最後に魔力の流れ感じたんだ、二番目はラフィな」


「………」


そのハックの隣を見るとラフィが椅子に座り寝ているかと思うほどに静かに集中していた。

近づく者は許さないと言って言うような気を感じる。


魔力の凝りは時間と共に増えていく。

いくらハックがやる気に満ちていても、年齢の関係でラフィが先に魔力を感じたようで、ひとまずは全員魔力を感じ取れることができて安心した。


「しっかしまぁ、魔力の流れっていうのは感じるまでが大変だけど、感じれるようになってから随分簡単になるもんだな」


「魔法というのは昔から全員が使えるほど日常的なもので、簡単なものって言われてるしね」


「でも俺も昔は魔法が使えるようになりたいと思ってああいう瞑想?みたいなもんはそこそこやってたんだが…あの時はどうもうまくいかなかったなぁ」


「ただ単に認識の違いじゃない?昔の頃は今よりも無謀なことだって言う意識が強かったとか」


それこそ、言葉でそう言っていても頭や無意識に無理だと思っていたとか、要因は様々であろう。

自惚れているわけではないが、やはり俺の存在は大きい物だったようだ。


「そんなもんか、じゃあジェイク!次はどうすればいいんだ?」


「次は、と言いたいところだけど父さんは一瞬だけ魔力の流れを感じたの?それとも何秒か感じた」


「……あぁっと、感じたのが嬉しすぎて見えた瞬間に終えちまった」


実にハックらしい回答に少し笑う。


「笑わなくてもいいだろジェイク…とにかく嬉しかったんだよ」


確かに、アミも最初は結構叫んでいたし、魔法が使えるようになると言うのは結構当人にとって吉報なのかもしれない。


「では、もしかしたら幻覚である可能性がまだあるのでもう少しそれを続けてください、それが出来れば左手か右手に魔力の流れを集める感覚を掴んで欲しい」


「おぉ分かった」


「……こんな感じかしら」


突然、横から割り込むようにラフィの声が部屋を響く。

さすがに聞こえていると思うが念のため、ラフィにもハックと同じことを言っておこう。


「母さん、さっき父さんに言ったけど右手に魔力に流れを集める感覚を掴んでね」


「えぇ、だから…こんな感じでしょ」


ラフィは右手を地面と平行に前に出す。

こんな感じと言われても、それは流れを感じる当人にしか分からないことだ、俺が目視で感じることは――は?


「どうジェイク?こんな感じだと思うんだけど」


俺は驚く、だってまだラフィにはこの事は教えていない。

なのにラフィの右手には訳がわからないことが起きている。


「ラフィ凄いよ!何でももう魔法陣が出てきてんだ!?」


「えっと…感覚?」


感覚って…いやいや、魔法陣を教えてもらっていないのにも関わらず感覚だけで空白の魔法陣を形成出来るとは、下手をすればアミ以上の才能があるのかもしれない。


「……えっと、どうしようか」


まさかラフィがこんなにも進んでいたとは予想外のここでかける言葉が見つからない。

まさか俺の知らないところでラフィ実力が上がりまくっている。


「ひとまずここで待ってもらえますか?アミを呼んでくるから」


「りょーかい、待ってるぜ」


「気をつけてねジェイク」


「うん、じゃあちょっと待ってて」


そうして家のドアを開けて網の待つ場所へと歩き出す。

ラフィ…俺とアミのやっている所を目で見て、それを自分の感覚に合わせた…その洞察眼、何か特別な力があるとした思えない。


────────

────


「さて、じゃあ三人集まったね」


いつもと同じように立っている俺の前に三人が椅子に座って並ぶ。


「ではこれより、魔法を出す練習をしたいと思います」


「ようやく教えてくれるのね、待ちくたびれたわ」


アミが待ってましたと言わんばかりに、それでいて少し不機嫌そうに言った。

確かにアミからすれば、一番早くできている自分が何故ほかの二人に合わせないといけないのかと思っていたのだろう。


しかし俺からすれば、突出した一人に委縮してやる気がなくなってしまう事の方が問題だ。


「この三人は魔法使いになるための訓練をこなして確かに全員魔力というものを感じ取るまでに至りました、なのでそろそろ教えてもいいって思ったからね、まぁ父さんはまだあと少しのところだから頑張ろう」


「任せろ!」


「よし、じゃあ静かに俺の話を聞いてくださいね」


まずは集中して手から魔法陣を形成する、その魔法陣はアミやラフィが形成していた空白の魔法陣ではなく、しっかりと編み込まれている魔法陣だ。

そしてそこからお決まりとも呼べる水球が徐々に大きくなっていく。


「さて、毎度おなじみの水球ですが、今回は水球ではなく魔法陣に注目してください、何か違いに気づきませんか、アミと母さん」


「……魔法陣に模様がある?」


「私も思った、なんか違くない?」


「確かに?そうだな…」


無事三人も意見が一致したところで俺は説明をつづける。


「大正解、今アミとラフィが言ったように二人の魔法陣と俺の魔法陣は少しというかだいぶ違う、アミとラフィが作っていた魔法陣は魔法陣と呼ぶには不完全なもの、今俺が作っているのが魔法陣と呼べるものなのです、そしてここからが重要…魔法を扱う際には俺の出している魔法陣のようにしないといけない事だ」


「どういう事かしら?」


「全然わからん」


「もうちょっと簡単に説明できないわけ?」


……ここら辺は今までのとは少し難しい話になってくる。

アミの言っているように丁寧に教えるのではなく、もっと簡単に感覚的に教えて都度質問に答えた方がいい感覚派の奴らが多いようだ。


「ただ魔法陣を作っていてもアミとラフィのような何も書いていない魔法陣になる、当然それじゃ何も生まれない、ただの白紙の紙だ…そこに記述をするから紙は意味を持つ、魔法陣もこれと同じで三人が模様と言っていた奴が刻まれていないと魔法を放つことはできない」


「模様って、それを覚えろって事!?」


必要以上に驚くアミを見て思う、こいつは何かを覚えるのが苦手な奴なんだ。

あぁっとそうだなぁ…何か安心させる言葉は…


「大まかにはね、実際問題覚えることは少ないからやって行けばすぐに出来るよ…それにあのリリディは言ってたでしょ?魔法が扱えればそれでいい」


つまりそれは一人前の魔法使いになれと言っているわけではなく、魔法が扱えればそれでいいのだ。


「簡単な魔法を数個覚えさせてやればそれでお終いなんだ、難しい魔法なんて使わないから安心してよ」


「……そう言うなら」


アミはまだ不機嫌そうではあるが了承してくれた。

次の説明のために右手にアミとラフィが作っていた空白の魔法陣を形成する。


「実は俺も二人と同じように空白の魔法陣を作ることができる、じゃあこの空白の魔法陣という紙に文字を編み込むように…できた、そしてここからさらに魔力を流し込むと水球が現れるっていうわけ、わかった?」


「ふーん…まぁやってみないと始まらないからね」


「そうね、まずはやってみないとね」


アミとラフィが右手に空白の魔法陣を作る。

そして二人の視線の前に俺が作った水球の魔法陣を見やすい様にする。

まずは見様見真似でいい、誰も最初は見本をなぞっ来ている。


「じゃあ今見せている魔法陣の形とまったく同じような魔法陣を作って、魔力の砂を魔法陣の上に乗せて模様を描く感じ」


二人は俺の魔法陣の模様に視線を移して自身に魔法陣に描く動作を繰り返す。

そうして、数分経った後に二人の魔法陣は完成したが、少し不恰好な形をしている魔法陣が出来ていた。


何か絵を描く時もそう、いくら見本を見ても最初は少し不格好になるものだ。


「では、その魔法陣に魔力を流してみよう」


二人の魔法陣がほんの少し光り始めた後、水球が現れる。

しかし、水()と言うには少し形がおかしい。


「形がおかしいんだけど」


「水球…明らかに球とは言えないわね」


アミの魔法陣からは細長い水の塊、ラフィの魔法陣からはグルグル巻いている水の塊が現れていた。


「まぁ最初なのでこんな物でしょう、ここからどんどん間違いを治していきましょう」


そうして俺は二人の魔法陣に近づいて不自然な点を指摘し始める。

魔法陣に描いた物は途中から書き換えることはできず一発勝負になるので、間違いを治すためにはたま最初から魔法陣を作る必要がある。


「では、間違いを確認できたところでもう一度見本を見ながらやってみて下さい」


そうして二人はまた、魔法陣を展開して模様を描き始めたのだった。














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