【第十二話】 -魔法常識の根底-
「……はて、一体何と申したのか…もう一度言ってもらってもよろしいですか?ジェイク・ガーネット」
「聞こえていなかったか?この三人の事を…俺がまとめて魔法使いに仕立て上げるって言ったんだが」
「……実に興味深い物です、これが家族愛というべきものなのでしょうか」
面白い物です、と老人は顎髭を触りながら感慨深いような表情で頷く。
この爺…この俺に皮肉と言ったつもりか?
リリディが言ったことを遠回しにではなく直に言うと、『家族と離れ離れになりそうななのでできもしないことで意地を張っているかわいいそうな子供』と言った解釈だろうが…はやり二流。
「何かおかしなことを言ったか?」
「とてもおかしいことを言いましたぞ、それはジェイク・ガーネット…あなたからすれば魔法は簡単に扱えるようなものでしょうが、ここにいる三人は魔法適性がない人達であるため、魔法を使うことが難しいどころか、扱うことはできないのですよ?」
「俺が先ほど確認したことを忘れたのか?あなたは了承したはずだ…もしかして忘れたのか?」
「当然分かっています。魔法が使うことができれば魔法使いの国に行ける、もしくはそれ系統の言葉を発していましたが」
「そうだ、それすなわち魔法適性検査が魔法使いの適性がない人でも、後々から魔法を扱うことができれば、結果的には魔法使いの国に行けるってことだろ?俺の言っていることが分かるか?」
子供におちょくられることによって自身のプライドに傷がつきそうになったのか、老人が少し腹を立て得ながら高圧的に言葉を並べる。
「勿論理解していますが、それはあくまで空想上の話…現実でそのようなことが起きるはずがありません、何故ならばそれは、皆が知っている世界の常識なのですから」
「…だから、俺がありえない希望にすがって自信満々に言葉を並べている姿に同情…お前は嘲笑していたのか?」
「そこまでは言っていませんが、まぁ概ねはそうです」
本来自分が起こられたことに起こる場面ではあるのだが、こいつの気持ちも大体は理解できる。
この世界の常識からして、俺の掲げた宣言はまさしく世界を転覆できるに相応しいものだからだ。
だからこそこの三人には是非とも魔法使いになってもらって、その計画への第一歩としておきたいというのが俺の狙いである。
「その水晶玉…素材は何できているか知っているか?リリディさん」
「素材…ですか?急に何の話を」
「いいから、知っているのか?知らないのか?」
唐突に先ほどの話とは脈絡がなくなる言葉にリリディは言葉が詰まりながら俺に言葉を返す。
「お恥ずかしながら知らないですね。私もこの水晶玉について何とも思っていなかったもので、ただ魔法適性があるかどうかを検査する道具としか見ていませんでした」
「……まぁ分かった、俺は近々魔法使いの国に行く、何日の期間がある?」
「通例通りならば二週間となっています…それ以上の伸びるのは勘弁していただきたい」
つまり俺は、この三人を二週間以内の間に魔法を扱えるようにしないといけないのか…なかなか骨が折れそうだ。
「わかった、では失礼する」
「えぇ、また二週間後に会いましょう」
「よし、三人とも帰ろう」
「……えっと何を言ったらいいか」
あれよあれよとことが進んでいく様子にハックが俺に向けて何か言いたそうにおどおどしている。
「とりあえず今は家に着くまで俺に何も言わないでほしいよ父さん」
「……まぁジェイクがそう言うならいいが」
母さんもね、と視線で訴えるがラフィの方は分かっているようだ。
まぁラフィは何かしら俺に考えがあると、昨日県の事があっってからここに来る前まで思っていたことだろう。
「…ジェイク、この後どうすればいい?」
問題はアミなんだが、まぁこのまま施設に返すわけにはいかない。
今日から魔法使いにする訓練は始まる…施設に帰っているようじゃ時間が無くなってしまうのは容易に想像できる。
「とりあえず俺たち三人の家に帰るからついてきてほしい」
「……ん」
教会のドアを開けて外に出て、俺たち四人は俺の住んでいる家に歩き始めた。
あの爺間違いなく俺を子供だからと言って舐めている。
今のうちに調子付いとけよリリディ、2週間後泣いて俺に縋ってくるお前の姿を想像すると、不思議と笑みが溢れる。
さて、折角始まった魔法使いに仕上げるこの2週間に題目を付けようと思う。
題目は『全人類は魔法使い』としておく、名前の良し悪しはこの際どうでも良い事だ。
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家についてからというもの。
椅子と机が置いてある空間から椅子四席を拝借して、その隣にある少し広い空間に向かい合わせに三対一の形になるように置き、そこにラフィ、ハック、アミを座らせる。
対して俺は対面側のある椅子に座った。
その様子は教えを乞う生徒と、魔法を教える教師に他ならない。
「ではここから長らく禁止にしていた質問を許可したいと思います、何か質問がある人はいますか?」
俺がそういうと、やはりと言った人物は恐る恐る手を上げた。
「じゃあ父さん、何を聞きたい?」
「えっと…ジェイクは俺たちを魔法使いにするって言ってただろ?それは本当なのか?」
「本当だよ、そこに嘘偽りもない」
俺の素性がばれるため声には出さないが元々世界の人類は全員魔法を扱うことができるはずなのだ。
それが何かの原因によってできなくなった…推測の域を出ないが理由は俺の中で固まっている。
「で、でも俺は…ていうか、俺たちは魔法適性がないだろ?そこはどうするんだ?」
絵にかいたようなこの時代の常識をハックは並べる。
魔法適性がないから魔法が扱えない…これは間違いではあるがもう少し根本に近づいたところに理由はある。
「そもそも魔法適性が有るか無いかなんてものは関係ないんだ」
「じゃあなんであんなことやっているんだ?関係ないなら意味ないだろ?」
「そう、やる意味なんてない…三人は騙されていたんだよ」
「騙されてた?っていうと?」
「いったい誰が私をだましたの…お母さんたちから離れ離れにさせた人は誰?ねぇ教えて早く」
「待て待て落ち着けアミ、一旦座って落ち着け」
アミは感情の起伏大きい方ではないが家族への愛は本物…だましていた当人がわかれば速攻復讐なりなんなりするかもしれないが残念ながらそれは不可能なのだ。
これは俺も含めて騙されていたことだからだ。
「あ、わかった…あの教会にいた老人に騙されていたのね……よし」
「よしって言うな怖いから…あの老人は騙してなんかいない」
「じゃあ誰が私たちをだましたっていうの?」
「それを説明するためにもう少し細かく言うなら、あの老人も俺たちと同じ被害者だ」
「被害者?」
ラフィは俺の最後の言葉に反応する。
あの老人も被害者…いや、この時代に生きている全員騙されている被害者なのだ。
「あの老人も…ここにいる三人も、街の住人達も、魔法使いの国にいる人たちも漏れなく全員騙され続けている、何十年なんてものじゃない、もっと100年200年もだまされ続けているんだ」
「…なんだって?」
「そんなことがあり得るの?」
「……あぁ、その正体をもう俺は掴んでいる」
ゴクリ、とつばを飲み込む音さえ聞こえる静けさと緊張感がこの空間を埋め尽くす。
緊張が高まり続ける中で、俺は切り裂くように右手を動かすと、3人の視線が俺の右手に集中する。
世界の常識を変えて、その常識を使って全人類を騙し続けた張本人、決して許されることではない。
……そうして時が来る、この場にいる3人は俺の発した言葉の驚愕の事実に耐えられず呆然と俺の右手にあるものを見ている。
そうして、ようやく自分の頭の中での整理ができた3人は目の前で起きている驚愕の事実に声を上げた。
「「「………石?」」」
俺が動かした右手に握られているのはその辺で拾った石…特段綺麗な物ではなく、至って普通な白い石。
だからどうした、と…それが真実であり、皆はこの白い石に何百年もの間騙され続けられていたのだ。
右手の白い石をポケットの中にしまった俺は石と発言して以降何も喋らない三人に言った。
「さて、じゃあ解説をしていこうか」
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