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【第十話】 -魔法使いの子供-

十話達成!!


魔法使いの生まれだった。

中央の国ラッターニのなんの変哲もない家庭…ではなく、ラッターニ有数の権力者の家庭にアミ・グラントリアは生まれた。


父親母親共に、この世界では腕の立つ魔法使いで、そうなれば当然の如く家は裕福になり、アミは何も不自由なく暮らせていた。


しかし、アミ・グラントリアの裕福で不自由のない暮らしは五歳をもって終わりを迎えることになる。

『魔法適性検査』、例外なくどの五歳児でもする恒例行事のような物を当然アミ・グラントリアも行った。


大丈夫だろうと、心の中で思っていた。

腕の立つ二人の魔法使いから生まれた娘なのだ、だから大丈夫だと…自信に満ち溢れていた。

魔法使いの才能は遺伝による影響が大きい、絶対に大丈夫だ。


しかし、現実は非情であり残酷だ。

そんな二人の間から生まれた子供であっても、魔法の適性があるかないか、それとこれは話が違うのだ。


「それでぇ…私だけこっちに行かされてぇ…お母さんお父さん一年に一回私に会いに来るって言ったのにぃ…」


「そんなことがあったのか…それで両親は?」


魔法が使えない両親から、俺のような魔法を扱うことができる子供が現れ、魔法使いの居る街に強制的に移住させられる。

逆もしかり、魔法を扱うことができる両親から魔法を扱うことができない子供が生まれ魔法使いがいない街に強制的に移住させられる。


その考えは今までなかった、魔法使いから魔法が使えない子供が生まれるなんて考えたことがなかった、しかしこれは一種の手掛かりになるかもしれない情報だ。


「私の暮らしてる施設に手紙が届いて…今年は会えないって…ひっぐ」


また泣いてしまった。

何度も思っているが、改めてこの世界の魔法常識は間違った方向に欠落しているようだ。

ここであったのも何かの縁だ、まずはこいつの魔法常識から変えていくのが賢明か。


そう思い、少女の隣から腰を上げてアミの前にたたずむ。

俺の行動を前にアミは不機嫌な顔をした。


「なぁ、両親に会いたいか?」


「…どういう意味?」


「両親に会いたいかって言ってるけど、どう?会いたい?」


俺の質問に数秒黙り込んあと、意を決したようにはっきり答える。

それは大きな声で、落ち着いた声色など伺う必要もない。


「当たり前でしょ!私だって、本当はこんなところじゃなくて、両親に続いてすごい魔法使いになるの!それが魔法適性がないってだけでこの街に飛ばされて…まだ可能性があるかもしれないのに」


「そう!それ!その思考大事!」


「な、何よ急に…」


俺の急な豹変ぶりにアミは少し戸惑った。

しかし本当にそうだ、その思考は俺のためにもなるし世界のためにもなる。

この世界でようやく世界常識を疑う思考がこの子供から出てきたことに歓喜してしまうほどにこの世界の魔法常識は違う。


「で、それでどうやったら私が両親に会えるの?」


「簡単なこと…ちょっと耳貸して」


俺がそういうと、アミは座った状態から立ち、俺の口の方に耳を近づける。

その耳に俺は言い聞かせるように、子供が何かいたずらを仕掛けるようなワクワクしているような声色で言うと、少女は耳を放して、俺の方を見た。


「……本当にできるの?」


「……信じないならそれでもいいけど」


「信じるわ、確かに可能性は低いけど、無いわけじゃないから」


口ではそう言っているが、心の方はまだ完全に信用しきれていないだろう。

明らかに俺の言動は矛盾を含んでおり、世界から反発されるようなことだからだ。


「さて、作戦だけど…明日俺を信じて施設で待っていてほしい」


「…それだけ?」


「それしかできないでしょ?」


「…わかったわ、それじゃあ明日待ってるわ、それと嘘だったら…あなたの顔が変わるわ」


「そんな事言うなって、大丈夫だから、さっきもいた通り、信じないならそれでいい」


俺が自分の家に足を運ぶと後ろから焦った声が聞こえる。


「わ、わかった、とにかく明日、施設で待っていればいいのね」


「そう、できる?」


「馬鹿にしないで、それじゃあまた明日ね、ジェイク」


そう言いアミは施設のある方向へと歩き始めた。

てか、俺の名前を呼んだってことは信用の証ってやつなのだろうか。


アミが見えなくなったころ、俺はアミの施設とは逆方向にある家向かって歩き始めた。

生れ落ちて五年、ようやくこの世界を変える時が来た、と言っても一人の少女を助けるだけ…しかしその助けには大きな影響があるのだ。

さて、ここから始めようか、俺の世界転覆計画だ。



――――――

―――



最悪な状況というのは常に自分の周りに起きていると言うことを決して忘れてはいけない。

いつ、どこで、どのような最悪の事態が訪れるのかは誰にもわからないのだ。


だから、そのような最悪な状況にならないために俺は魔法を使い最善を尽くしてきた。

しかし、本人が万全だと思っていた砦が側から見れば意外にも欠陥だらけと言うことは少なくない。


「ジェイク、何してるの?」


その万全だと思っていた砦が破壊され、俺の行動がついに母ラフィにバレたのだ。


ことの経緯はこうで、いつも通り両親が寝ている時間に音遮断(イルパ)の魔法をかけて二回の書庫に行った。

因みに、もうドアノブに手が届くようになったので飛行(サザン)の魔法は使っていない。


そうして2階に上がり本を二冊手に取って約二時間ぐらい読んだ後、本を元ある場所に戻し一階へと降りてきたところに寝ているはずのラフィが椅子に座っていたのだ。


「えっと…ちょっとトイレに」


「階段から降りてきたように見えたのだけれど、二階にトイレなんてあったのかしら」


なんとか言い訳をしようとしても、口から出るのは頓珍漢な言い訳ばかりでまるで頭が回っていない。


「そ、そう。寝ぼけてたみたいで…まさか2階にいるなんて思わなかったよ、あはは」


「……」


いつもならば俺のおっちょこちょいの行動に笑ってこれているラフィが笑わない。

それほどまでに真剣な表情で、何か切羽詰まった表情でこちらを見ている。

一体どうしたものか、どうやれば振り切ることができるのか。


「……座りなさいジェイク、少しお話ししましょう?」


「……はい」


断ったら逆に怪しまれると思ったので、母ラフィと対面するように座る。

今までちゃんと見ていなかったラフィのきれいな顔が視界に入り込む。

気まずい、少し話をしようと言っていたからにはそちら側から話題が出ないと話すこともできない。


「……ジェイク、もう五歳に成ったのね」


「そうだね、今まで何不自由なく過ごしてきたからね、これも母さんと父さんのおかげだよ」


「ありがとうね、私たちもジェイクがこの家に生まれてきてうれしいわ」


「……」


「ジェイク?」


今の俺の顔はどうなっているのか、今のラフィの言葉にうれしくなって顔が笑っているか?

いや、そんなことは絶対になく俺はの顔はラフィに見せている中で一番険しくなっている。

ラフィの言葉を聞いた俺は改めて生まれるはずだったジェイクに申し訳ない気持ちになっている。

確かにもう一度生きたいと、人生をやり直してみたいと願った。


そして俺はこの時代に生まれた、本来生れ落ちて、初めての人生を歩むはずだった『ジェイク』の気持ちを踏みにじって今も生活している。

ジェイクという男はもういない、ここにはいるのは神のいたずらにこの時代に生まれた『ジェイクの名を借りたジルク・リージョン』だ。


「…ねぇジェイク、いいかしら」


「なに?」


「ジェイクも明日、ほかの子供たちの例に漏れなく魔法の適性検査をするのよね、ジェイクは自分に魔法適性があると思う?」


「わからない…でも有ってほしくないかも」


「…それはなんで?」


「だって魔法適性があったら魔法使いの街に移住しないといけないし、母さんと会えなくなるから…」


「…そうね、もしあったら私たちは離れ離れにならないといけないわね…」


「…で、でも大丈夫だよ、魔法適性のない両親から魔法使いが生まれるなんて二百年に一人いるかいないかって聞いたことあるし!」


この重苦しい空間の重圧に耐えられなくなり、そんな希望を提唱する。

ラフィを安心させるため、今はこの言葉で我慢してほしい…明日になればラフィにすべて話すつもりだ。


「ねぇジェイク、今から二年前の事、何か覚えてるかしら?」


「今から二年前って…ミャーガレット祭があったってことかな?」


二年前のミャーガレット祭、民衆からしてみれば魔法使いの大道芸師が素晴らしい公演を披露したと思っているが、俺からしてみれば大道芸師の皮をかぶったただの殺人犯が快楽のためにこの街を滅ぼそうとしたとしか思えない。

あの時の練り上げられた白爆発(グラン)…今の俺でもあの出来事を思い出すたび体が冷える感覚が呼び起こされ、それに加えてあの大道芸師の俺だけに放った言葉にはさらに背筋が冷える。


「それもそう…ていうかもういいわ、私じれったいのは嫌いなのよね」


さっきまでの真剣な顔つきとは違い、いつもの朗らかに笑うラフィの顔付きに戻り、今までの出来事を語り始めた。


「あれは三年前のことだったかしら、まだジェイクが二歳だった時に偶然…本当に偶然夜中に起きたの、そして少し違和感があって、ハックのいびきが全然聞こえないの…確かに前よりは小さくなってきたかもしれないけど、それでも全くイビキを掻くことなんてなかった」


「……」


「それでちょっと気になって、もう一度あの時間まで起きて、ハックに様子を見てみようって…昨日と同じあの時間までハックは小さいイビキを掻いていたのが、その時間になった途端…急に止まったの、あれは止まったと言うよりも、聞こえなくなったと言う方が正しい、だって他にも外の微かな風の音までもが聞こえなくなっていたのだから」


その言い分に該当する魔法は音遮断(イルパ)、間違いなく俺がよく使っていた魔法の一つで間違いないだろう。


「だから気になって、またいつもと同じ時間まで起きて、このスペースで何か起こらないか待っていたの」


このスペースというのは今俺たちが座っている机とテーブルがある場所のことだろう。


「いつも通りその時間になると音がなくなって、それで周りの様子を見ていたら、信じられない光景が存在していた…ジェイクが空を飛んでいた、魔法を扱うことができない私たちから魔法使いが現れる、それに二歳にして魔法を使いこなしている…そんな二歳児いると思う?」


「だから」ラフィは一つ間を置き、俺に告げた。


「ジェイク、今何歳なのかしら?」



























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