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第61話 過去①

 俺には両親と一人の可愛い妹が居た。

 父の鬼堕きだ 隆弘たかひろは建築関係の仕事をしていて、結構高い地位にまで上り詰めていた。俺と同じで目つきが悪かったが、人望は結構あったらしい。

 母の鬼堕 仁美《《ひとみ》》は元キャビンアテンダントで、高校の時、父に一目ぼれしたようだ。とても明るく、母が作るローストビーフは大好物だった。

 妹の鬼堕 桜《《さくら》》は小学6年生でツインテールが良く似合っていた。毎日毎日俺の部屋に来ては、一緒にゲームをしたり、アニメを見たりした。それに、休みの日には二人で買い物に出かけたりもした。


 そんな平凡で楽しい日常を送っていたある日、俺の幸せは突如一人の男によって奪われた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


午後4時

 就職活動や進学受験に向けての対策で慌ただしい教室から抜け出し、玄関に向かう。教室を出る時、一部の進学する奴らからは憐みの視線のようなものを感じたが、『進学=偉い、優秀』と言う訳では無いと思うけどな。

 俺も一度は進学を考えたが、中学生の時に父さんの建設会社の方から『就職する時は内の会社で働かないか?』と言われた事がきっかけで、早い段階から資格取得やバイトとして会社の仕事を手伝っていたところ、高校2年の時には就職が決定していた。

 学校の駐輪場から自分の自転車を取り出し、家に向かう。

 家は学校から自転車で15分程の距離にあるので、そんなに時間はかからない。


 「今日は確か、焼肉か寿司を食べに出かけるんだったよなぁ。」


 今日は桜の誕生日で、夜に家族全員で外食に出かける事になっていた。だが、昨日の夜、父さんと俺は焼肉が食べたいと言い、母さんと桜は寿司が食べたいと意見が割れてしまった為、早く決めなければならない。


 「桜の誕生日なんだから、寿司を食べに行くか!俺的にはどっちでも良かったんだけど、父さんが味方しろって言うからしょうがなかったんだ。本当に。」


 一人で言い訳を言いながら道を進んでいると、二階建ての一軒家が見えてきた。この家は元々、母さんの祖父母が住んでいた家で、最近リフォームしたばかりだ。

 自転車をいつもの場所に留めていると、父さんの車がガレージに留めてある事に気付いた。


 「あれ?今日は仕事早く終わったのか?まぁ、桜の為に早く帰って来たのかもな。」


 特に意識することも無く、家に入ろうと扉に手を掛けた時に違和感を覚えた。

 この家は前から音漏れが激しく、リフォームしても玄関前に立てば、家の中に居る人の会話が小さくとも漏れていた。しかし、今は何の音もしない。家に居るのが母さんと桜だけだったのなら、疲れて仮眠を取っていたり、一緒に何かをやっていて集中してたりすることもあるのだが、今日は父さんも家に居るはずだ。

 心の中で、何かがおかしいと感じながらも家の中に入る。


 「うん。父さんの靴もあるな。ただいま!今日は出かけるんだろ?俺も寿司で良いから早く行こうぜ!後、桜!嬉しいのは分かるが靴はちゃんと並べろよ?」


 いつもは『ただいま』と口で言う事は無いのだが、あまりにも静かだった為、思わず言ってしまった。それに、いつもはちゃんと並べている桜の靴がぐちゃぐちゃになっている。

 俺は玄関で靴を脱ぎ、桜の靴と一緒に綺麗に並べた後、いつも母さんが居るキッチンに向かう。

 何故か分からないが震える手を抑えながらキッチンに繋がる扉を開けると、背中から包丁を生やした母さんと、その横には首から血を流し倒れている父さん。その上には、首にコードが巻かれ動かない桜が居た。そして、3人の傍には父さんと同じ会社に勤めている真壁まかべ 流也りゅうやが居た。



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