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第59話 枷

午後22時

 ベッドに横になり目を瞑る。


 「こんなにも人の悪意を向けられたのは久しぶりだな。」


 人の悪意に人一倍敏感な俺にとって、他の人で言う『鳥肌』のようなものが、俺の身体に纏わり付いている現状は、なかなかにキツイ。俺の中にある何かがすり減っていくのをしっかりと感じれる程だ。

 意識を悪意のあるコメントから俺の配信内容に切り替える。普通の人なら『他のことを考えて意識を逸らせ』と思うかもしれないだろうが、俺にそんな器用な真似が出来るはずは無い。


 「思わず一人称が崩れちゃったけど大丈夫かな?」


 今までの配信では必ず、一人称を『自分』で固定してきたのだが、熱くなり過ぎて『俺』と言う一人称を使ってしまった事に後悔が残る。何故なら、あくまで配信に映っていたのは『鬼道 奈落』であって、『鬼堕 俊隆』では無いのだ。VTuberとして、恥ずべき部分でもあるだろう。

 今回の発端はブラックハッカーだとしても、一部の視聴者に迷惑をかけている事には変わりはない。それに、コメント欄が急速に流れる中には『弁護士や警察とも相談した方が良いよ!』と言う温かいコメントがあったことも事実だからな。

 ちなみに俺は、伸二さんを除いて、警察も弁護士も信じちゃいない。と言うか、他人を信じれない。いや、現在は伸二さん《《しか》》信じれないと言って方が間違いは無いか。

 伸二さんによると俺は、無意識の中で人を『疑い続けている』らしい。

 医者の場合、『こいつが言っている事は本当なのか?』や『こいつ、実は俺の事を知っていて間違った症状を教えているのでは無いか?』などだ。コンビニでバイトをしていた時もそうだ。『一通り仕事を教えられたが、本当に仕事内容が合っているのか?』とか『俺が表で接客をしている時に、俺の所持品を漁ってるのではないか?』とか考えているらしい。俺にそんな気持ちが無くても。

 こんな感じで常に神経を研ぎ澄ましている訳だが、周りから見れば変質者だ。しかも、店側からすれば『前科っぽい何かを持つ眼つきの悪い変質者』みたいな感じに見えてしまう。

 初めてこの事について知った時、ショックを受けるよりも『安心感』が心の奥底から湧き出したことには、俺自身もびっくりした。

 俺にとって、伸二さんは家族のような存在だ。他に誰もいらない。

 いくら親戚だろうが従妹だろうが、俺には全員他人に見える。

 所詮、人間が何を考えているかなんて、同じ人間に分かる訳が無い。ほとんどの人は分かっている気に、なっているだけだ。


 「人間はロボットだ。自分が生きる理由は、他の者が決める。そして、いらなくなれば処分の道へ。」


 そう呟いた時、スマホに着信が入った。


 着信:斎藤 伸二

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