表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/240

第129話 沙也加


 城東さんを席に座らせ、ビールをジョッキでもう一杯頼む。


 「ふぅぅぅ、まずは、詳しい話を聞かせて貰っても良いですか?どんな理由でお金を借りたいのか分からないと、俺も判断が出来ないんで。」


 「・・・そうだな。何処から話せば良いのか。」


 ビールで軽く口を潤した後、今回の経緯を話してくれた。

 まず、城東さんには、沙也加さんと言う妹が一人居るらしく、現在は会社近くの病院に入院中で、今日も会いに行っていたようだ。多分、ほぼ毎日出掛けているのは、妹さんに会いに行っていたのだろう。


 「大腸癌・・・。進行状態は?」


 「幸いなことに、レベル1。初期症状が現れ始めたくらいだ。」


 どうやら、手遅れになるような事態にはならなそうだが、問題はここからだった。


 数年前まで俺と同じようにアルバイトを転々としたり、個人勢Vtuberとして活動したり、色々な方法で生活費を得て生活していた城東さん。そのような不安定な仕事で稼げる額は、良くて一人分の生活費。それを、城東さんの場合、妹さんの分まで稼ぎ二人で生活していたらしい。普通に凄いと思う。

 ただ、ここで疑問に思ったのは、城東さんの年齢は大体22か23、余程、歳が離れていないのなら、沙也加さんの年齢は16~21ぐらいだと考えられる。だとしたら、城東さん一人に家計を任せなければならない程の、問題を抱えていると考えて良いのだろうか?もし、何か問題を抱えているのなら、誰か家族に頼ることは出来ないのか?

 などなど色々と考えてみたが、『既に親族が亡くなって頼る人が居ない』とか言われたら反応に困るし、他の家族の問題に首を突っ込んで良いのか分からない部分もある。

 そんな風に、次の言葉を言い出せずにいた俺の気を使ったのか、俺が質問しづらかった話までしてくれた。


 「ちなみに、親父は俺が3歳の頃、母さんは17歳の頃に死んだよ。親父はまだしも、母さんには迷惑ばかり掛けたなぁ。あの頃は他に頼れる親族も居なくて、沙也加を何とか支える為に仕事を探し回ってたよ!自業自得だよ本当。」


 そう言いながら、日本酒を飲むその目には、悲しさと後悔が渦巻いているよな気がした。

 しんみりとした空気のまま話が進まないのは、俺も困る為、本題に入ることにした。俺もそろそろ、酔いが回って来そうだ。


 「それで、妹さんの入院費とか手術費用が足りなくて、俺に頼んで来た感じですか?」


 「いや、手術費用等は何とか間に合ったんだが、生活費が足りなくなってしまってな?俺は別に残飯でも何でも食べて過ごせば良いんだが、妹の衣服や生活必需品は揃えてやりたいからよ。特に、最近は沙也加の方も上手くいってるらしいからな・・・。」


 何故この人は、沙也加さんの名前を出す時に、後悔しているような顔をするのだろう。そう感じた俺は、心の疑問を思わず聞いてしまっていた。


 「さっきから気になったんですけど、妹さんとの間で何か事件でもあったんですか?」


 喧嘩 城東。

 ブラックハッカーからの流出情報で、暴行、窃盗などの経歴が明らかになり、炎上したことは知っている。だからこそ、その事にも何か関連しているのではないかと、俺は無意識の中で、感じ取っていた。

 一瞬、城東さんから、殺気のようなものを感じ鳥肌が立ったが、深呼吸の後、《《自分の過去》》について話し出した。


 「・・・・・・・・沙也加は・・・・・・両足を失ってしまったんだ。・・・・・・・《《俺》》のせいでな・・・・。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ