第112話 わがままの種類
やはり、人殺しの件で何か言われるのかと身構えたが、突然喧嘩 城東さんが笑い出した。
「ぶっわっはは!!!マジか⁉マジかよ⁉お前があの鬼道 奈落だって?確かに、その目付きはVTuberのビジュアルと同じだな!!そうかそうか!!これからが楽しくなりそうだぜ!!!」
「なんと、この度は本当に助かりました!お陰様で借金の返済に目途が付きましたよ!!」
「あんた、なかなかの切れ者と見たわ!!もし、他にも儲かりそうな配信方法があるなら、真っ先に私に報告しなさい!!良いわね?この私がお願いしてるんだから、必ず教えなさいよ?」
「・・・・・・・・・・ざまぁ。・・・・・・・・・・・・ナイス。・・・・・・・・・・・お金持ち?」
城東さんに続いて、他の方達にも何故か褒められている現状に理解出来ないで居ると、高太郎さんが立ち上がり、こちらに近づいてきた。
「奈落さん。どうです?この方達は全員、自己の利益を優先する方達です!良く言うなら、細かいことを気にせず、自分に正直な方達です!そして、それぞれが揺るぎない信念を持っている。例え、他の人に『くだらないこだわり』だと言われようとも、真っすぐ突き進める人達です!!」
なるほど。何故ここまで性格や行動に問題がありそうな人達を、高太郎さんが集めたのかが分かった気がする。その場合、俺自身にも問題があることになるが、他の人から見たら俺も、異質に映るのだろう。
「いやー、俺のところでも炎上配信したんだけどよ?まさかの配信開始から25分で、同接者が5000人を超えた時はびっくりしたぜ!!と言うか、あんな配信を思いついて、それをマジでやるとかお前、大人しい割にヤバい奴だな!」
「私のところは同接者が伸びた上に、構って貰えない視聴者がスパチャを飛ばしてくれるから、最高だったわ!!!後から『スパチャのコメントだけ読みます』ってコメント欄に貼り付けたら、さらに炎上しちゃったけどね。」
「・・・・・・・馬鹿が一人で騒いでる姿を見るのは・・・・・・・・・楽しかった。」
「・・私の配信、一応人は集まったのですが、『中年が流行りに乗ろうと必死で草』や『中年に無視されて困る奴なんていないだろ!!むしろ、話しかけてこないで欲しいよな!!』などなど、世の中の中年男性への不満が飛び交っていただけなんですけど。皆さん、配信が上手くて羨ましいです。まぁ、配信を観ていた同じ中年男性から、スパチャが大量に送られて来たことは嬉しかったですけどね。」
うん。炎上配信の発端が自分の為、下手なことは言えないが、改めて問題児しか居ないな。腹一さんに関しては、炎上配信と言うより、同情配信じゃないか?
「自己紹介はここまでにして、それでは皆さん!!企業勢としてのデビュー配信に向けて、打ち合わせを進めましょうか!!」
今思うと、人見知りの俺が、初対面の相手にここまで話せたのは、同期全員に独特の雰囲気があった御蔭だったのだろうな。




