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第105話 イレイザー

 「そりゃあ、楽しいですよ?そうじゃなきゃ、ここまで続けてはいませんからね。」


 ⦅・・嘘ですね。正しく言うなら、《《楽しかった》》の間違いじゃないですか?⦆


 「そんな訳・・・そんなわけが・・・。」


 否定しようとしたが、次の言葉が出てこなかった。確かに、視聴者とのやり取りが楽しかったと思う部分があったからだ。

 『今日は~~が3D配信だぞ!!』とか『~~の歌ってみたの動画が500万再生を突破した!!』など、一人のVTuberオタクとして、自分がチェック出来ていないジャンルのVTuberを知ることが出来たのは、とても楽しかったと思う。だからこそ、そのコメント欄が人の悪意で染まってしまったことに、酷くショックを受けた。


 ⦅ほら、自覚症状があるでしょ?俺はあなたと助けたいと思っています!勿論、あなただけではなく、今回の被害者の中で、一方的な被害を受けた個人勢VTuberの方も募集しますけどね。⦆


 「何故?何故そこまで気に掛けてくれるんですか?はっきり言って、俺はVTuberとしての経験が浅いですよ?人殺しをしたのも事実ですし。」


 ⦅そんなことはわかってます!あなたの過去の情報を調べましたが、あの事件、ほとんど冤罪みたいなものじゃないですか!!あんなの酷すぎですよ!それに、あなたのことは、初配信を生で観た時から知ってますからね!!古参アピールですよ!!古参アピール!!⦆


 「初配信・・?確か、俺の初配信を観に来ていた視聴者は一人だけの筈。それなら、あなたは・・⁉」


 ⦅改めまして、鬼道リスナーの『イレイザー』です!何回も、お節介なコメントをすみません!⦆


 「・・いえいえ!あれの御蔭で配信設定とかを改善出来たので、本当に助かりました!」


 まさか、今まで話していた相手が、最古参リスナーのイレイザーさんだったとはな。

 初めて自分の視聴者に出会ったことに関して、どう対応して良いか困惑していると、次の話に進み始めた。


 ⦅そう言うことで、あなたをうちの会社に誘いたい理由の大半は、個人的な理由です!!どうか、うちの会社でVTuberとして働いて貰えないでしょうか!!⦆


 言葉の最後の方が遠のいていき、電話越しに頭を下げていることが伝わる。

 俺だって、今のような配信をずっと続けていきたいかと言われれば、絶対にNOと言えるだろう。けれども、人を信じるのが怖い。

 この人の話を信じて良いのか?本当に支えようとしているのか?もしかして、俺の配信が最近になって儲かっているから、その利益を少しでも手に入れたい。などなど、色々な思惑があるのではないかと、どうしても考えてしまう。

 俺は学んだんだ。『人は自分の利益を優先する生き物』だと言うことを。

 それでも、鬼道 奈落を最初から支えてきてくれたこの人を信じたいとも思っている。


 「・・・三日だけ。三日間時間を下さい。」



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