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第101話 その後

午前8時


 「それじゃあ・・・行ってきます。」


 両手にダッフルバックを持ちながら、伸二さんとの別れの挨拶を済ませ、目の前にある大きな建物の中に入る。

 建物の中に入ると、入り口側から見て左側に受付があり、近くには警備員が立っている。この建物が大きな塀で囲まれていて、門にも常駐の警備員が配備されているところを既に見ている為、それほど驚きは無かった。


 「君!もしかして、鬼堕君で合ってるかな?それなら、ここで書類を提出した後、自分の部屋の鍵を受け取ってくれ!!」


 警備員の指示通り受付に向かうと、50代くらいの女性が忙しそうに書類整理していた。


 「すいません。書類の提出に来たんですけど。」


 「あぁ、君が今日送られて来た子だね。それじゃあ、これが部屋の鍵だから。書類は、あーと、そこに置いといて良いよ。」


 書類を置き、鍵を受け取る。

 鍵には部屋の番号が書かれていて、俺は『307室』らしい。


 『ここの少年院は、お金が無いのかな?』なんてことを考えながら、自分の部屋に向かう途中、これからの生活に不安しか残っていないことに気付いた。まぁ、生活どころの話では無いかもしれんが。




伸二視点



 俊隆を少年院に見送った後、まっすぐに帰宅した。

 つい数日前までは、家の前で毎日張り込みしていたマスコミや報道陣も見かけない。


 スーツを脱ぎ、ラフな服装に着替え、リビングのソファに座る。


 「何も出来なかった・・・・。」


 家庭裁判で勝てなかった為、俊隆の両親の保険金が下りなかった。さらに、財産のほとんどを持って行かれてしまった。

 実家の建て直しは中止になってしまい、少なくない金額を支払うことになってしまった。

 そして、一番の問題となっているのが、『有罪判決を受けた』と言う部分だ。

 刑事裁判と比べると、個人間の争いを担当する民事裁判での、『有罪』と言う言葉は軽く感じるかもしれない。実際、刑事裁判の方では、無罪と言うことにもなっているからな。ただ、相手が最悪だった。

 民事裁判が終わった後、財産の引き渡しに時間が掛かってしまったせいなのか分からないが、親戚のクズ親を中心に、『俊隆が裁判で有罪判決を受けた』の部分のみを大幅に取り上げて、周りに広め始めたのだ。

 何故、息子も有罪判決を受けたクズ親が、堂々と言い放っているのか気掛かりでもあったが、周りの視線を俊隆に集めたかったのかもしれないな。俊隆を隠れ蓑に使うつもりなのだ。


 長い長い裁判が終わってみれば、俊隆に残されたのは『貯金100万円、僅かな私物、名ばかりの保護者』だけになってしまった。

 ちなみに、鬼堕一家が住んでいた家は既に売り払っている。俊隆が、『少年院に入っている間、誰も使わないんじゃしょうがないですよ。まぁ、事故物件を誰が買うのかは知りませんが。』と言っていた。恐らく、これは表面上の答えで、本当のところは『事件に関すること事態を考えることが辛い』のだと思う。要は、現実逃避だ。

 今はそれで良いと思う。特に、俊隆の場合は、事件に関連した《《全て》》のことを忘れたいと思うしな。

 身近にこんなにも、人間であって人間ではない者が多かったなんてな。


 「俺も、人間不信になりそうだ・・。」

 


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