うちわぎさまについて
雪が強い風と共に降りしきる朝、シャッターがガタガタとなる音で目が覚めた。
当時、子供だった僕は、小学校の友人との遊びの約束を守るため、親の目を盗んで家を抜け出した。
外に出るとまだ降り始めたばかりなのか、あまり積もってはいなかった。
しかし強風に運ばれる雪は降り始めたばかりなことも気にせず、僕の体を叩く。
雨合羽を着てきた事に感謝しつつ近所に住む友達の家に向かう。
道中、車が通る道にはいつも以上に気を使いながら10分ほどかけて友達の家に到着した。
「ピーンポーン」
友達の家の呼び鈴を押す。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
反応がない。
誰もいないのはおかしいと思いもう一度呼び鈴を押すと、突然ドアが開き
「速く入って」
友達が叫ぶ。
なぜ叫ぶのか、なぜ焦っているのか、意味が分からなかったが 何ともいえぬ怖さを感じて急いで家の中に入った。
「ガチャ」
友達がドアに鍵をかける。
「ふぅー⋯危なかった」
僕は友達の言ってることの意味がいまだに分からず、理由を聞く。
「なんでって⋯⋯今日お母さんがさ、外に出ちゃいけないっていうんだよ」
僕はそんなことでどうして焦るのかが分からなかった。
しかし、遊びにきたのにこんなことで時間を潰すのが勿体なくて納得した。
その後5時間ほどテレビゲームやカードゲームをして遊んだ。
そろそろ帰ろうかとゲームを切り上げた時、友達は怖い顔をした。
「今帰ったら駄目だよ」
何度も外は危険だと言われて、吹雪を心配してるのかと思ったので
「雪なら大丈夫だったよ」
と明るく言った、が彼は首を横に振り語り始めた。
「雪の中にはうちわぎが出るんだ⋯⋯」
それを聞いた僕は家路を急いだ。