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7.王城での生活

それからの生活は、朝に女官さんたちの誰かが来て、一緒に朝ごはんを食べ、

午前中はお茶しながらお互いの話をしたり王城について聞いたりしていた。


昼前にユキ様が来て、昼食を食べながら午後の予定を聞く。

自分なりに処方してみせて、間違いがあれば直していくことになったが、

今のところ直されることはなかった。

ユキ様はうんうん頷いていたが、ちょっとだけ不安は残る。

処方は出来ているのかもしれないけど、魔力は抑えられているのだろうか。


夕ご飯の頃にノエルさんが部屋にやってくる。

日中に顔を出すこともあるのだけど、近衛騎士の訓練もあるそうで、

女官さんたちやユキ様がいる間は他に行っているようだ。

ちょうど私が一人になるころに部屋に来て、夕ご飯を一緒に食べる。


少しは仲良くなったのか、ノエルさんはよく笑うようになっていた。

眠る準備が終わった頃、抱きかかえられるようにして魔力を吸われる。

大きな身体のノエルさんの腕の中にすっぽり包まれると暖かいけれど、

顔や胸が近くて、筋肉のついた腕や骨ばった手の感触もわかる。

それに、少しだけ大人の男の人の匂いがして落ち着かない。


本当はとても恥ずかしいのだけど、ノエルさんは私を子どもだと思っている。

変に恥ずかしがっても困らせるだけだろうと、

されるままに抱き上げられていた。



恥ずかしくて落ち着かないはずだったのに、慣れない生活で疲れているのか、

最近は抱き上げられている間に眠ってしまうことが多くなっていた。

気が付くと朝で、小さな寝台に寝かされている状態だった。

慌てて謝ったけれど、気にするなと言われてしまえば、もう謝れない。

毎朝のように少しだけ後悔し、それ以上に感謝する日々が続いていた。


「お前は子どもなんだから、甘えていいんだ。」


何度そう言われただろう。子どもじゃない、そう言いたいけど、

今の私はお世話になっているだけの子どもだ。

少しずつ、ゆっくりだけど、

ノエルさんに抱き上げられて頭を撫でられていると、

居場所ができたみたいで甘えてもいいのかもしれないと思い始めていた。







王城に来て一か月が過ぎたころ、ユキ様が朝早くに部屋に来た。

めずらしいと思っている私に告げられたのは、

今日はノエルさんが来れないということだった。


王城に来てから毎日会っていたのに、今日は会えないのかと残念だったけど、

仕事だというのなら仕方ない。

明日には会えると思っていたけれど、次の日も会えなかった。


私の身体に異常が出始めたのは、

ノエルさんに会えなくなって三日目の昼だった。



「ルーラ、魔力があふれすぎている。

 このままだと、女官たちや私にも影響が出てしまう。

 食料はここに置いておくから、しばらくは一人で耐えていてくれ。

 もうすぐノエルが帰ってくると思うから、それまでの我慢だ。」


今までノエルさんに吸ってもらっていた魔力が、また漏れ出していた。

あまりの魔力量に、同性であっても近寄れなくなってしまったそうだ。

そういうことなら仕方ないとあきらめて、一人ですごし始めた。


一人には慣れている、だから大丈夫、そう思ったのは間違いだった。

店にいた時でも、日中はお客や隣の店のおばさんと話したりしていた。

本当の意味で一人でいるのは、生まれてから初めてのことだった。



朝起きても、ご飯を食べても、本を読んでも、一人。

王城に来てからは、毎日誰かがそばにいてくれた。

いつも抱き上げてくれていたノエルさんの感触を思い出すと苦しい。


まだかな、まだノエルさんは帰ってこないのかな。

だんだん一人でいるのがつらくなって、

ノエルさんが帰ってくることばかり考えるようになっていた。


うずまくような魔力の中、どうすることもできずに、

ただ小さな寝台に丸まって眠った。




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