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5.護衛騎士

いつの間にか眠っていたらしい。遠くから人の声が聞こえる。


「ユキ様、あの…子どもですよね?」


「いいや?ちゃんと一人前に店を持っている薬師だよ。」


「…そうなんですか。」


納得できない感じの返事が聞こえる。子ども…薬師…って、私だ。

慌てて目を開けると、ユキ様の隣に男の人がいた。

服装をみると、騎士様だろうか。紺色の髪が顔にかかって、右半分が見えない。

見えている左目は深い青…紺色でいいのだろうか。


「やっぱり疲れていたようだね。大丈夫かい?」


優しい声でユキ様に労わられて、申し訳なくなる。

もしかしてユキ様たちを待たせてしまっただろうか。


「すみません。ユキ様が来られるのはわかっていたのに、

 いつの間にか眠っていたようです。」


「あぁ、いいよ。座ったままで。紹介するから聞いて。」


立ち上がろうとしたら止められ、ユキ様と男性も向かいのソファに座る。

紹介したいと言ったのは、この男性のことだろうか。

笑顔からは程遠い表情ではあるが、怖いというわけでもない。

印象は真面目そう…だろうか。

顔が半分しか見えないので何とも言えないが、

髪を整えたら端正な顔立ちなのではないかと思った。


「近衛騎士のノエルだ。ルーラの護衛を担当してもらうから。」


「私の…護衛ですか?」


「そう。人があまり来ない塔と言っても、

 女の子を一人で住まわせるには危険だ。

 陛下はもう大丈夫だと思うけど、

 魔力につられて人が入ってこないとは限らない。」


魔力につられて?そんな恐れがあるの?

先ほど陛下に担ぎ上げられたのを思い出して身構えてしまう。


「そんな顔しなくても大丈夫だ。そのために俺が護衛するからな。」


騎士様は意外と優しい人なのかもしれない。

笑顔は無いけど安心するようにゆっくり話してくれるのを聞くと、

信頼してもよさそうに感じた。


「すみません、これからよろしくお願いいたします。

 なるべく早く魔力をおさえられるように頑張ります。」


「そう、その魔力なのだけど、ノエルには効かないから安心していい。」


「効かない?影響を受けないということですか?」


「そういうこと。だから、安心して守ってもらってくれ。

 残念だけど、他の騎士は危なくて近寄らせられないんだ。

 日中は女官が交代で世話に来るけど、夜はノエルしかいないから、

 何かあったらノエルにすぐ言うんだよ?」


「わかりました。」


「俺は廊下入ってすぐの部屋にいるから、何かあったら呼んでくれ。」


あ、さっき私が一番最初に入った部屋のことかな。


「はい。わかりました。」


「それじゃあ、食事は運んであるからゆっくり食べて、今日はもう休んでいい。

 明日から修業を始めよう。

 と言っても、午前中は私も仕事があるから、ここに来るのは午後になる。

 朝には女官が来るはずだから、ここでの生活のことは女官に相談してくれ。」


そう言うとユキ様は騎士様を連れて出て行ってしまった。

食事?と周りを見渡すと、処方台のところに夕食が置かれていた。

横に小さな椅子も置いてある。

ここで食べていいということなんだろう。

まだ温かいらしく湯気が見える。それを見たら一気にお腹がすいたのを感じた。

そういえばお昼ご飯を食べてなかった。

茶色いシチュウとパンに焼いた鶏肉と漬けた青野菜。

どれも美味しくてお腹がいっぱいになった。

食べたら、また眠気が襲ってきて、奥の部屋の小さな寝台に転がった。

重力に負けるように沈み込むと、もう目は開けられなくなっていた。


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