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奇病者たち  作者: はーと
第1章 天使の羽と悪魔の目
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第一節 羽付き転校生

 人の死なんて唐突にくる。数年、数ヶ月後、もしかしたら明日かもしれない。大抵の人間は、もうすぐ死ぬと分かってて来ないはずの将来の為に何かするなんてことはしないだろう。そう。死ぬタイミングが分かれば無駄な時間を過ごさなくてすむのだ。


 ―僕にはそれが分かる。


 と言っても自分自身ではなく視界に入った相手のみだが。

 例えば、今僕の前を歩いている不良達。赤いシャツのリーダー的存在の彼には頭上に『20210923』と数字が出ている。他の二人にも『20661203』『20530830』と出ている。今は2021年の9月7日。つまり赤シャツの彼はあと16日後に死ぬという事だ。ご愁傷(しゅうしょう)さま。

 この超能力みたいな力は『奇病(きびょう)』と言うらしい。五年前、世界的に突如発病し治療不可能とされた病気。感染はしないが老若男女問わず突発的に発病する。もちろん予防なんてものは無い。

 奇病の症状は一つだけ。人外になってしまうことだ。腕に(うろこ)が出る者。尻尾が出る者。動物のように身体中から毛が生える者。そして、羽が生える者までいる。その姿が原因で奇病患者は今でも差別され続け、虐めや虐待がここ数年は多く発生している。

 僕の外的変化は左の眼球―黒目の部分だけだが―が血のように赤く染まっている事だ。不幸中の幸いというやつなのか、カラーコンタクトや眼帯をしていればあまり分からない。

「ようアカネちゃん! 今日もカラコンかい? イケてるねぇ」

 後ろから聞き慣れた声と共に現れた彼は古くからの幼なじみ。というより腐れ縁の仲。彼だけが家族以外で唯一、僕の奇病を知っている。性格は僕と真逆でポジティブ思考の明るいバカ。と言えば伝わるだろうか。

「アカネちゃん元気ないねぇ。どったの? ガチャ爆死した?」

「別に普通だよ。僕は君と違ってゲームオタじゃないし、それとちゃん付け、やめろって言ってるだろ」

「へへ。ええやろええやろ! 減るもんちゃうしー」

 (あかね)―よく女の子に間違えられるこの名前。僕はあまり好まない、というか嫌いだ。なんでこの名前になったかなんて分からない。母親は僕が物心つく前に他界し、父親は海外に単身赴任で、ここ数年は帰ってきていない。家賃と小遣いを毎月送るのみで連絡ひとつもない。話す機会が無いため聞くことも出来ない。というかあまり話したくない。妹が(あおい)って名前だからか色で統一したかったと自分なりの考察だ。

「にしても最近アカネちゃんちょっと明るくなったよね? 前なんて俺がボケてもツッコんでくれなかったじゃん」

「さっきまで、元気ないね?とか言っておいてなんだよ。別に普通に接してるだけだって」

「ふーん?」

「なんだよ」

「いや? 別に?」

 という馬鹿みたいな会話を重ね、バスに乗る。学校は県外にあるためバスに乗り、電車に乗り、ようやく着く。ただその長い道のりも何気ない日常会話を重ねてるうちにあっという間に過ぎていった。


「あーそうだアカネちゃん。今日転校生来るらしいって」

「ふーん」

「なんだよ。薄いなあ」

「別にどうせ喋ることもないだろうしいいかなと」

「噂だと、お前と同じアレ持ちだってよ」

 靴を履き替えながらされは耳元でそう囁いた。アレとは勿論奇病のことだ。

「おいそれは言うな」

「いやー悪ぃ悪ぃ。誰にも聞こえてないから大丈夫だって」

 はあ。と深いため息をしつつその転校生について少し気になっていた。

 奇病持ち。そんな噂が流れるとしたらかなり外見に変化が出てるタイプの人だ。僕は幸い左目のみなのでクラスの誰にも知られていない―そもそも友達が少ないのだが―為虐め等にはまだあって無い。

 今日来るであろう転校生は多分虐められるのだろうな。

 そんなことを考えながら教室に着き自分の席に座る。窓側の後ろから2番目の席。夏は日差しのお陰で焼けるように暑いが、今日のような秋の涼しい日はとても気持ちがいい。別に何もすることないので適当な本を読み過ごす。

 教室内が転校生の話題で賑わってきた頃、担任の先生がやって来て急に静かになる。

「多分みんなも知っていると思うが転校生が今日このクラスに来る」

 すこしザワつく。

 別に興味もなく、窓から見える見慣れた街の景色を眺める。

「入ってきなさい」

 先生の一声で教室のドアがガラっと開く。ザワついた空気が一気に冷め緊張感が漂う。

 そして再びザワついた。

 少し気になり顔を向ける。


 ―羽。

 純白の綺麗な羽の生えた少女。


白上(しらかみ) (そら)と言います。よろしくお願いします」


 シラカミソラ。僕は彼女の名前を無意識に噛みしめていた。

初めて小説を書いてみました。

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