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雲のかたち
天使の羽を広げ、彼女は僕にこう言った。
「雲ってね。その時死んだ物のかたちをしてるんだよ」
そう言って彼女は楽しそうに雲を見上げる。
「ほらあの形、犬に見えない?」
そう言って彼女は少し悲しそうに雲を見つめる。
「多分、誰かの犬が死んじゃったんだろうね。可哀想」
すると彼女は振り返った。
「だからさ。晴れが好きなの。君は晴れが好き?」
✻ ✻ ✻
綺麗な真紅の眼が合う。その眼に光は無い。
「雲?」
気持ちがこもってない棒読みの言葉がポツンと吐かれた。
「別に犬には…」
最後はあまり聞こえなかったが、元気がないのは確かだ。
「僕は別に……」
なんとなくだか、彼の眼に光が宿った気がした。