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奇病者たち  作者: はーと
序章
1/7

雲のかたち


 天使の羽を広げ、彼女は僕にこう言った。


「雲ってね。その時死んだ物のかたちをしてるんだよ」


 そう言って彼女は楽しそうに雲を見上げる。


「ほらあの形、犬に見えない?」


 そう言って彼女は少し悲しそうに雲を見つめる。


「多分、誰かの犬が死んじゃったんだろうね。可哀想」


 すると彼女は振り返った。


「だからさ。晴れが好きなの。君は晴れが好き?」


 ✻ ✻ ✻


 綺麗な真紅の眼が合う。その眼に光は無い。


「雲?」


 気持ちがこもってない棒読みの言葉がポツンと吐かれた。


「別に犬には…」


 最後はあまり聞こえなかったが、元気がないのは確かだ。


「僕は別に……」


 なんとなくだか、彼の眼に光が宿った気がした。

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