14、綺麗子のメモ
女学園島は一気に夏めいてきた。
ふんわり揺れるレースのカーテンの向こうでは、朝の大海原がきらきら輝いている。
「ストラーシャ学区は水泳の授業があるんだってぇ! いいわねぇ!」
朝食の黒糖パンを頬張りながら、綺麗子ははしゃいでいる。
「ビドゥのほうが涼しくて過ごしやすいんですのよ。贅沢言っちゃダメですわ」
「夏休みになったら皆でストラーシャの浜に泳ぎに行きましょ!」
「み、皆で・・・?」
月美は綺麗子の度胸をうらやましく思った。百合も一緒に朝食をとっているこの場で、海に行こうなどと誘えるのは、相当な器を持っているか異常に鈍感かのどちらかと言うほかない。百合の水着姿など見たら、普通の人は三日くらい気を失うだろう。月美は夏服姿の百合の美しさから自分の身を守るのに精一杯であり、綺麗子の真似は到底できない。
『コーヒーのご用意ができました~』
しばらくすると、チリンチリンというベルの音の共に、料理係の生徒が3人、厨房から出て来た。月美はこれが楽しみだったのである。
「ちょっと行ってきますわ」
「うん♪」
月美は近ごろコーヒーに夢中だ。アイスコーヒーの季節ではあるが、ホットのために栽培されたコーヒー豆をもっと消費してもらうために料理部が研究したこだわりの淹れ方が月美の味覚にヒットしたのだ。月美はもともと苦い飲み物が苦手だったのだが、新作のコーヒーはとても飲みやすい上に甘味や酸味のバランスがよく、深い風味もある。ブラックコーヒーを飲めることがカッコイイ大人の条件であると勘違いしている月美は、最近みんなの前で食後のコーヒーを飲むようになったのだ。
「あの、綺麗子さん、桃香さん、実はご相談があるんですけどっ」
月美が席を立ったのを見計らって、百合は小声で綺麗子たちに相談を持ち掛けた。
「ん? 百合がうちらに相談なんて珍しいわね。何でも訊きなさい!」
「お二人のように、友人同士で仲良く過ごすには、どうすればいいんですか?」
「え?」
綺麗子はパンにクリームを塗る手をとめた。
「あー、百合はもっと月美と仲良しになりたいのね。つまらないことに悩んでるわねぇ~百合も」
「えへへ。私、前よりはずっと積極的に月美ちゃんとコミュニケーションとれるようになったんですけど、一緒におでかけに行こう、ってなかなか誘えないですし、ペンの貸し借りにも凄く緊張しちゃうくらいで」
「ま、月美はとんでもない堅物だからしょうがないわね。百合は結構健闘してるほうよ、自信持ちなさい!」
「もっと仲良くなりたいんです。綺麗子さんと桃香さんみたいに」
「なるほど、私たちみたいにねぇ」
そう言って綺麗子が桃香の肩に腕を回してぎゅっと抱き寄せると、桃香はロールパンをくわえたまま頬を染めた。こういう感じのスキンシップを気軽に出来る関係に百合は憧れている。
「いいわ! あとで私が友人関係必勝法をメモにまとめてこっそりあなたに渡すわ! 頑張って実践しなさい!」
「お、お願いします!」
「ほら、月美が戻ってきたわよ」
何も知らない月美が、コーヒーの香りを振りまきながらテーブルに戻ってきた。そしてお姫様のような顔をしながらコーヒーカップを口に運んだのだった。
(よぉし! 月美ちゃんともっと仲良くなってみせるぞ!)
百合は美しいお嬢様を横目で見ながら、クロワッサンを頬張った。
放課後、月美と百合は、なんとビドゥ学区の大通りへショッピングをしにやってきていた。
百合が授業中にこっそり綺麗子から渡された数枚のメモには、月美ともっと仲良くなるための方法がたくさん書かれてあった。その第1ページ目に、とにかく一緒に出掛けることが大切なので、ショッピングにいくべきと記されていたのだ。
「夏物のシーズンだね、月美ちゃん♪」
「そうですわね。私服をある程度買っていきましょう」
時節に味方された百合は、衣替えを理由に簡単にお買い物へ誘うことが出来た。これも綺麗子が発案した作戦である。綺麗子は空気が読めないくせにコミュニケーションの能力に長けており、おまけに野生の勘みたいなものまで身につけているちょっと変わったお嬢様だから、こういう時は頼りになるようだ。
「お店がいっぱいだね♪」
「迷子にならないで下さいね。探すのが面倒ですから」
「はい♪」
月美たちが生活するビドゥ学区は女学園島の中で最も都会的なエリアであり、特にこの辺りは生徒たちが運営するたくさんの店が並んでいる。「小さなニューヨーク」と呼ぶ生徒もいるが、どちらかというと「ちょっと広いパリの路地」みたいな感じの街並みである。
(ええと・・・上手く誘えたけど、次はどうしようかな・・・)
百合はポケットからメモを取り出し、二枚目の指令を確認した。
(横に並んで歩く・・・?)
なるほど、これは友人関係の基本かも知れない。
他の人の通行の妨げにならないよう注意しなければならないが、道は広いので安心である。いつも月美の後ろにくっついて歩いている百合は、今こそ一歩前に踏み出すべきなのだ。
月美がショーウィンドウのワンピースに視線を向けた隙に、百合は歩調を速め、彼女の横に少しずつ移動していった。しかし、簡単にはうまくいかなかった。
「あっ。百合さん、下がっていて下さい」
「え?」
ふと前を見ると、百合や月美のファンの生徒たちが大通りの向こうからバタバタと駆けてやってくるではないか。牧羊犬に追われている羊の群れみたいな勢いである。
「百合様ぁー! 月美様ぁー!」
「サインして下さぁーい!」
「握手してぇー!」
「罵って下さぁーい!」
「結婚して下さぁーい!」
これは逃げたほうがよい。
「百合さん、こっちですわ」
「う、うん!」
ボディーガードである月美はすぐに逃げ道を判断し、百合を先導する形で駆け出した。
(お、このどさくさに紛れて、並んじゃおう!)
百合はスタイル抜群で脚も長いため、結構駆けっこが速い。細い路地を抜け、陽だまりの中にレモンの木が並ぶ道に差し掛かる頃には、二人は綺麗に横に並んでいた。
(やった・・・! これはまさに、友達って感じだよ!)
百合はほんのり頬を染めた。
二人はスピードを緩めた後もしばらく横に並んで歩いたのだった。
追っ手の動向に神経を使っていた月美は百合の行動に特に違和感を覚えていなかったが、百合は大満足であった。
「んー。この店はなかなかいい品がありますわね」
月美がついにお気に入りの店を見つけたのは、二人がファンたちの追跡を逃れながら20分ほど大通りを歩き回った時のことである。月美お嬢様は服へのこだわりが強く、流行もどうでも良いタイプなので、広く一般にウケる商品を中心に扱っている普通の店には好みの服がないのである。
「月美ちゃん、こういうのが好きなんだね♪」
「ま・・・まあ、そうですわよ。文句ありますの?」
「素敵だなぁって思って♪」
「うぅ・・・」
月美はなんだか恥ずかしくて、百合を置いてさっさと店の奥のほうへ入っていってしまった。
(よし、いい感じ。次の指令を見てみよう・・・)
百合は綺麗子から貰ったメモの三枚目を見てみた。
(服を買いに行った時、試着室に一緒に入って試着を手伝う・・・ええ!?)
難易度が急に跳ね上がった。
しかし綺麗子にとってはこんな行動、誰かの横に立って歩くことと大して変わらないレベルのことなのである。綺麗子だけでなく、少なくともこの島で暮らす生徒たちの多くは、試着を手伝ったり、似合う服を一緒に選ぶくらい、友人同士で当たり前のようにやっている。
(難しいけど・・・でも今の私なら、できるかも)
相手は優しい月美ちゃんである。多少グイグイいっても嫌われることはないのだから、綺麗子のアドバイスを信じて突き進んでいくべきである。
「んー・・・」
月美は素晴らしいパーカーを見つけた。
夏用の薄手パーカーのくせに、フードの形がしっかりしており、シルエットを重視する月美の感性を震わせた。色は紫外線をカットする気満々のブラックであり、フルール・ド・リスと呼ばれるフランス発祥のカッコイイ模様が銀色で飾られていた。クールな月美の部屋着にピッタリである。
「それ、試着する?」
「わ!」
思ったより近くにいた百合に月美はビックリしてしまった。
「そ、そうですわね。こういうのはサイズが重要ですから。敢えてブカブカのを着たり、逆にタイトに着こなせる場合もあります」
「一緒に試着室入ってもいい?」
流れるように百合がこんな質問をしてきたので、月美は一瞬言葉を失った。
「ななな何をおっしゃってるんですか!?」
「ダメかな?」
「だだだダメですわ!」
百合はちょっぴり笑ってしまった。想像以上に拒絶されたからである。
(月美ちゃんも幼い頃からクールな生活してた子だから、きっと照れてるんだよね。私たちって似た者同士だなぁ)
本当は百合に恋しているせいなのだが、とにかく百合は納得して、試着室への同行を諦めた。お嬢様相手にさすがに馴れ馴れしすぎる作戦だとは思っていたので、この失敗は想定内である。
しかし、試着室に駆け込んだ月美は激しく動揺していた。
(ななな、何で百合さんはあんな事言いましたの!? わかりませんわ!)
鏡の中の自分と相談タイムである。
(私はこんなに百合さんに冷たく接してますのに、百合さんは無邪気に迫ってきますわ・・・!)
友達関係というものがこれほど距離感の近いものであると想像してなかった月美は、今更怯え始めたのだ。こんな生活していたら、ちょっと油断した隙に恋心がバレてしまうだろう。そうなれば月美のお嬢様人生は終了だ。
(・・・とりあえずこれ、着ますわ)
心を落ち着かせるため、月美はパーカーを試着することにした。
パーカーは期待通り、月美の体と感性にピッタリだった。見た目も良いが、涼しく着られそうな素材も素晴らしかった。
(百合さんに・・・見せてあげようかしら・・・)
思い切り拒絶して試着室に逃げてきてしまったので、月美はなんだか胸が痛んだ。百合の心を傷つけてしまったのではないかと思えてきたのである。
月美は百合を呼ぶべく、カーテンにそっと手をかけた。
(やっぱりダメですわっ!)
この狭い空間に百合が入ってきてしまった時のことを考えた月美は慌てて手を引っ込め、首をぶんぶん横に振った。
このパーカーを着ている姿など、今夜からいくらでも百合は見られるので、月美はそんなに気にしなくてよい。
さて、その頃、ビドゥの大通りをストラーシャの白い制服を着た小柄な少女が歩いていた。
青い瞳と金髪が美しい彼女は、月美たちの生活に大して関わりのない少女であり、脇役と言えば脇役であるが、入学式の当日に月美のことを魔女っ子だと勘違いした生徒である。月美と何らかの縁があると言えなくもない。
(今日はあのカフェで面接デース!)
この学園の生徒は勉強や部活を頑張るだけで学園からお小遣いが支給されるわけだが、それらに自信がない生徒や、もっとお金が欲しい生徒は、お店で働くことによってダリアを稼ぐことができる。普通は自分が生活する学区のお店を選ぶのだが、この金髪の少女はわざわざビドゥ学区までやってきたようだ。どうやら好きなお店があるらしい。
(先輩のアドバイス通りに受け答えすればきっと雇ってくれマース!)
少女はスカートのポケットに手を入れ、翼先輩から貰ったアドバイスメモの存在を確認した。実はこの少女、綺麗子たちと同じ演劇部の新メンバーであり、部長の翼先輩に普段からお世話になっているのである。翼はビドゥ生徒会長アテナ様の同室の生徒だけあって後輩たちからの信頼が厚い。
(えーと、カフェはこっちデース)
少女は花屋の角を曲がった。
買い物を済ませた二人は、寮に帰る前にちょっと喫茶店に寄ることにした。
しぶとく追いかけてくるファンたちから隠れられるような小さな喫茶店であるが、青銅のエクステリアやバラのアーチが可愛い素敵な店だった。
「い、いらっしゃいませっ!」
まさか百合と月美が来店すると思ってなかった店員の生徒は緊張でガタガタ震えながら二人を裏庭のテラス席へ案内してくれた。赤レンガの壁に絡まったツタの葉が海風にそよいでおり、建物と建物の隙間からは涼し気な海が見下せた。これは素晴らしい隠れ処である。
「いいお店だね♪」
「まあ、そうですわね。商品の味によりますけど」
月美は格好つけながらメニューを広げた。
すると、表通りのほうから少々騒ぎ声が聞こえてきた。月美たちのファンかどうかは分からないが、不安の芽は摘んでおく必要がある。
「気のせいかも知れませんが、ちょっと様子を見てきますわ」
「あ、うん。気を付けてね」
「すぐ戻ります」
月美は超クールな顔をして店内席のほうへ入っていった。
しばらくすると、海が見えていた裏庭の細い通路から、金髪の少女が軽やかに飛び込んできた。
「キャロリン、目的地に到着デース!」
百合は一瞬ポカーンとしてしまったが、大きなメニューを広げて顔を隠した。
「裏口から入るのが通のやり方デース!」
少女はそう言ってウッドデッキを駆け上がった。
しかし、張り切り過ぎた彼女は、デッキの階段でつまづき、百合のすぐ目の前で転んでしまったのだ。月美以外の生徒とはあまりコミュニケーションを取らない百合も、さすがにこの時は席を立ち、少女に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「へ、平気デース・・・」
「これ使って下さい」
膝と手のひらに砂が付いてしまった少女に、百合はハンカチを差し出した。
「オー、親切にありがとうございマース。でも汚れたら悪いので、自分のハンカチを使うデース」
「そうですか。怪我がなくて良かったです」
「あなた優しいデース! ありがとうございマース!」
少女は百合に礼をしながら、店内に入っていった。
席に戻った百合は、ハンカチをポケットに戻したわけだが、その時に綺麗子から貰った例のメモが無くなっていることに気付いた。
(落としちゃったかな)
デッキの階段まで探しに行くと、足元にメモがあったので、百合はそれを無事に回収した。
一方、店内に入った金髪の少女も、ポケットからメモが無くなっていることに気付いた。
(落としたデース?)
翼先輩から貰った面接必勝法のメモなので、見つけなくてはいけない。再び裏庭のテラス席に出た少女は、階段付近に落ちていたメモを見つけた。風で飛ばされてなくてラッキーであった。少女は百合に笑顔でもう一度頭を下げてから店内へ向かったのだった。
今の場面でちょっとした事件が起きていたのだが、本人たちが気付いていないので、物語はこのまま進んでしまう。実は、二人はメモを取り違えてしまったのだ。
表通りの無事を確認した月美は百合の待つテラス席に戻り、店員の生徒を呼んだ。
「ブレンドコーヒーをホットで。お砂糖とミルクは要りませんわ」
「私はアイスココアお願いします」
「か、か、かしこまりました!」
店員さんは緊張しすぎである。
(よぉし、それじゃあ綺麗子さんからもらった指令の続き、やっていこうかな)
百合はメモの4ページ目を開いてみた。
(えーと、ここへ来ようと思ったきっかけと、普段の趣味などを語ろう・・・おお、これは簡単そう!)
どう見ても綺麗子の字ではないのだが、百合は気づかなかった。試着室に一緒に入るミッションに比べれば余裕なので、百合はさっそく行動に移した。
「月美ちゃん♪」
「な、なんですの?」
「外観が綺麗だし、アイスココア始めました、っていう看板に誘われてこの店を選んだんだよ♪」
「え? あら、そうですのね。たしかに素敵な店ですけど」
「あと、今さらだけど、私編み物とか得意なんだ」
「あら、知りませんでしたわ」
「今度何か作ってあげるね♪」
「い、要りませんわ・・・! どうしてそんな、百合さんの手作りなんか・・・」
「ふふっ」
話題の振り方がちょっとぎこちない感じにはなったが、非常に友達っぽい会話ができて百合は嬉しかった。さすが綺麗子さんだなと百合は思った。
(次のメモが最後かな。よし、このままやっちゃおう!)
最後のページを確認すると、そこには「目を見ながら、これからよろしくお願いしますとハッキリ言う」と書かれていた。
(これから「も」よろしくお願いします、って言ったほうがいいよね)
百合は涼しい海風にポニーテールを揺らしながら、深呼吸をした。
「月美ちゃん♪」
「な、なんですの・・・」
百合は少し照れながらも、改まって月美に挨拶をしたのである。
「これからも、よろしくお願いしますね♪」
「あぁ・・・う!」
天使のような微笑みに、月美は頭の中が真っ白になってしまいそうだった。これが友達というやつなのである。
「まあ・・・その・・・どうでしょうね・・・」
月美はハッキリと「こちらこそ」と言えず、誤魔化してしまったが、気持ちだけは百合に伝わっているから大丈夫である。二人は静かな木漏れ日の中で、お互いのハートがゆっくり溶けて交わっていくようなドキドキを味わったのであった。とても幸せな時間である。
「おまたせ致しました、ホットコーヒーとアイスココアです」
月美ともっと親しくなるという百合の試みは無事成功したようだ。これからもっと二人は仲良くなれるに違いない。
「ええと、キャロリン・スターフィールドさん」
「ハーイ!」
「わざわざビドゥ学区のカフェで働きたいなんて、変わってますね」
「部活の帰りに食べた、ここの塩レモンパスタが美味しかったデース!」
「それは嬉しいです」
窓際のボックス席で、金髪の少女は面接を受けていた。
(翼先輩のメモを確認するデース。面接必勝法デスヨ~)
少女はポケットからメモを取り出した。
(手を握ってみる・・・オーケィ!)
少女は手のひらをスカートで軽く拭いてから席を立ち、面接をしてくれている先輩の隣に移動した。
「え? どうしました?」
困惑する先輩の手を、少女はそっと握りしめてみた。
「な、な、なんですか!? いきなり!」
「手を握ったデース♪」
「そ、それは分かりますけど、私たち、初対面ですよね!?」
「ハイ! このまま面接を続けて下さいデース!」
少女はメモの内容を思い切り信頼しており、疑おうともしない。演劇部の翼先輩が書いたメモだと勘違いしているからである。
(えーと、次はどんなミッションデース?)
面接官の手を握ったまま、少女は最後のページを確認した。
(ほっぺにチューをしてみる・・・オー、とっても欧米風デスネー)
少女はさらに面接官の生徒に体をくっつけた。
「え、ええと、キャロリンさん、それでは部活の帰りなどに働きたいということで・・・」
「ちゅっ」
「あんっ!」
面接官の生徒は顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏してしまった。そしてしばらく微動だにせず、コーヒーと紅茶の香りの中で石のように沈黙していたが、やがて静かに顔を上げた。
「キャ、キャロリンさん・・・採用で・・・」
「え!? 採用デース!? ありがとうございマース!」
相手を恋に落としてしまったとも知らず、少女は大喜びしたのだった。
(やっぱり翼先輩のアドバイスは最強デース!)
今後このキャロリンという少女は、色んな問題をチューで解決していく可能性がある。とんでもない危険人物の誕生である。