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初めての依頼は危険の味①

外に出るとキャシーが待っていた、俺はキャシーに声を掛けまた<鳥の巣>へと戻っていった、まずは依頼を受けなければな。


「全継さん、エリアスさん達に会いましたか?」


「あぁ会ったよ、皆強そうだったよ、特にエアリスさんは正面から戦えば負けるだろう」


「やっぱりエアリスさんは強いですよね!?私もいつかエアリスさんの様に団を率いてみたいんですよ!」


「ほう俺はてっきりキャシーちゃんもあの団に加わりたいものだと思っていたんだが」


そういうとキャシーは少し複雑そうな顔をして笑った。


「エアリスさんの団に入りたい気持ちはないと言えば嘘になります、でも私は私だから強いって言われたいんです、エアリスさんの団に入ったから強くなれたって言われたくないんです」


その目は決意に満ちていて俺はついその目に魅入られてしまった。


「さぁ全継さん!依頼を受けて困っている人々を助けに行きましょう!」


俺の心を知ってか知らずかキャシーは俺の手を取って<鳥の巣>へと走っていった、俺は糸が切れた人形のようにその力に流されて後を追う、あぁ俺はこんなに強い目をしたことはあるだろうか、俺は過去の自分を懐かしみながら思いにふける。


<鳥の巣>へと入った俺たちは真っ先に依頼書を貰いに行く、受付にはハノンさんが立っており俺たちの様子を微笑ましそうに見ていた。


「全継様にキャシー様お持ちしてましたよ、こちらがあなた方が受けようとしている野盗の討伐依頼書です」


どこから情報を手に入れたのかはまったく謎ではなかった、あれだけ大きな声でキャシーがさけんでいれば、ここにいる全員が知っていてもおかしくはないからだ。


「すごいですねハノンさんは!何かのスキルですか?今から私たちが受けようとした依頼が分かるなんて!」


うん、分かってはいたがキャシーは分かっていないようだった。


「えぇ、一流の受付ならどこからか情報を手に入れることもできるですよ~」


ハノンさんはいたずらっ子の様に笑いながらキャシーを驚かす、その言葉にキャシーはすごいすごいとばかりに目を輝かせている。


「楽しんでいるところ申し訳ないが、ハノンさん、この依頼で注意した方がいい点はありますか?」


俺がそう聞くとハノンさんはキリっとした顔つきに戻り俺に依頼の注意点を教えてくれた。


「もうわかっていると思いますが野盗のリーダーのノーズ=バラウスという男はとても強いと報告に上がっています、実際この依頼はあなたたちで4度目の受注になっています」


「前にいった人たちの等級を聞いてもいいですか?」


「えぇ、一番初めに行ったのは青の両翼が四人のチームでした、しかし生きて帰ったのは一人です、次に向かったのは最高等級が白の片翼の団長を筆頭にした8人の団ですがこれも撃退されてきました、幸いにも死者はいませんでしたが、そしてつい先日、白の片翼二人、赤の両翼が4人の団が任務に赴き今だ帰ってきていません」


白の片翼が二人、しかし仲間意識が強ければ一番弱いものが人質になってしまえばもう何もできない、抵抗しなければ死ぬか、それに近しいことになると分かっていても、何もできなくなる者もいるだろう、実際俺の里でもそうやって敵を倒していた奴もいた。


「要注意ということは分かりました、相手の人数は30人程で間違いはないですか?」


「いえ、間違いと思ってもらって構いません、30人と高を括って行って少なければいいですが、多ければそれだけで士気が下がるでしょう」


確かにそうだ、偵察の者がいってから時間が経てば人数は増えるだろうし、偵察されている時に身を隠していた者もいるかもしれない、倍は覚悟しておくに越したことはないだろう。


「本当ならこの依頼をあなた方に受けさせるのは反対です、等級が白に見たっていないものには手に負えない依頼だと思っています、しかし私の長年の経験を加味すれば全継様は戦闘能力だけで言えば白の両翼と同等でしょう、キャシー様もまた戦闘能力だけで言えば白の片翼と同等と見ています、ですのでお二人にはこの依頼を受ける権利はあります、しかし、今現在この<鳥の巣>にはお二人以上の<翼を持つ者>はおりません、敵に負ければ救出は最低でもひと月以上は掛かることを覚悟してください」


険しい顔で言うハノンさんに俺は沈黙してしまう。


「大丈夫です!全継さんは勝算はあると先ほど言ってくれました!それに今叩かねば野盗たちはもっと巨大になり最悪の場合ここも戦禍に巻き込まれるかもしれません、それを事前に防ぐには今しかないんです!」


キャシーの目は先ほど見せてくれた時よりもさらに決意に満ちていた、しかし手は微かに震えていた、それは武者震いなのかもしれない、しかし俺よりも小柄な女の子が自分を奮い立たせていることは事実だ、ここで引けば俺は自由になれないだろう。


「キャシーちゃん無理だと思ったら絶対に逃げよう、そしてまた別の策をよういて戦おう、死ぬことだけはさけような」


俺は自分自身に言い聞かせるようにキャシーに話す、そのやりとりを見ていたハノンさんは液体の入った瓶を俺たちにくれた。


「これは回復のスキルが練りこまれたポーションです、あなた達の無事を祈るお姉さんからの差し入れです、危なくなったら必ず帰ってくること、いいですね?」


「「はい!」」


俺とキャシーは声を揃えて返事をした、ハノンさんから依頼書を受けとり、そしてポーションという液体の入った小瓶を腰鞄にしまう、俺とキャシーはハノンさんにお礼を言って<鳥の巣>を出て、街の外へと向かった。

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