ガルウスの仲間たち
武器を買い終わった俺はまだ店の中をぶらついていた、アイスブレードを買ったのはいいが鞘を留める腰装備が無いことに気が付いて腰装備を探しているとキャシーの姿を見つけた、キャシーは小手を二つ持っておりどちらにしようか悩んでいるようだった。
「キャシーちゃんどっちの小手にするか悩んでいるのか?」
「おぉう!全継さん、急に話しかけられたらびっくりしてしまいます!」
心底驚いたようでキャシーはあたふたしている、見ていて何だか心が和むようだ。
「こちらの小手の方がいい気がするのですが少々値が張っていて、それでこちらにしようかどうしようか悩んでまして・・・」
キャシーはそういうと小手を俺に見せてきた、キャシーが欲しいと言った小手の方は一目見ただけで名品と分かる小手だった、しかし値段は相応で三万ギラと書かれていた、もう片方の小手はこれといった感想が出ないほどありふれた小手で一万ギラと書かれていた、キャシーは今小手を付けておらず、布を巻いている状態だった、俺の手持ちのギラは八万程だし買ってあげよう。
「キャシーちゃん、ガルウスには世話になったしこれから同じ任務に行くんだし俺が買ってあげるよ」
「ホントですか!?いやでもほぼ初対面の全継さんに買ってもらうのは・・・う~~ん」
悩んでいるキャシーの手から小手を取り勘定に向かう、そんな俺の後ろをキャシーは付いてくる。
「ではでは全額出してもらうのは申し訳ないので私も出します!」
そういってキャシーは自分の腰にある鞄からギラを取り出し台に置く、俺はその不足分を出した。
「ありがとうございます、全継さん!大事にしますね!」
そういいながら微笑むキャシーを見て俺の心も少しうれしかった、キャシーは嬉しそうに小手を付けると一人外で待っていると言って外に走っていった。
俺はまた防具が売っているあたりをぶらついて目当ての腰装備を探しに行った、しばらく店の中をうろついていると棚に並んでいる腰装備を見つけられた、あまり値段が張るものでもないようでホッとしながら俺は商品を吟味していく、その中でそこそこ耐久力がありそうなものを選び他にも細々としたものを買って外に出ようとした。
盾の置いてある近くでガルウスと男が激しい言い合いをしていた。
「しつこいぞガルウス!先にこの盾を見つけたのは僕だ!」
「何言ってやがる!先に盾を手に取ったのは俺だろうが!」
「フッ、少し僕より速かっただけで所有権を持っていると言い張るのは野蛮だぞ」
「そのセリフをそのままそっくりお前に言ってやる!そもそもお前は弓使いだから盾はいらんだろうが!」
今にも殴り合いが始まりそうな二人を一人の少女が不安そうに見守っていた、俺は二人の間に割って入って争いを止めようとした。
「二人とも!みっともないぞ!それでも白の三枚翼の持ち主か!私の怒りの稲妻が落ちないうちにやめろ!」
黒い鎧を着た女が二人の頭に拳骨を落としながら叫んだ。
「「ゲッ!エリアス!落ちないうちじゃなくて落としてるだろうが!」」
二人は同時に声を上げる、エリアスと呼ばれた女性はもう一度拳を上に振り上げた、それを見て二人は先程までと打って変わって盾をお互いに押し付けあっていた、そんな二人をやれやれといった感じに見た後にエリアスは俺の方に近づいてくる。
「ほぅほぅ中々強そうじゃないか、君がガルウスが連れてきたという男だね」
そういいながら顔が付きそうになるほど近くに顔を持ってくるエリアスに俺はしどろもどろしてしまう。
「ふふっそう緊張せずともいいじゃないか、私はエリアス=サンドリット、あのバカ二人とあそこにいるコーネリアと一緒に団を組んで活動しているものだ」
エリアスがそういいながら指を指した先には先ほどの少女がまだ争っている二人を不安そうに見ていた、それをみたエリアスはまた二人の頭に拳骨を落とすと、今度は盾を回収してまたこちらに歩いてくる。
「まったくあの二人はいつも張り合うのが好きでね、困ったものだよ、君の名前を聞いてもいいかな?」
「あ・・あぁ、俺は全継だ全継=浜浅だよろしく」
俺がそう言うとエリアスは俺の前に手を差し伸べる、俺はそれをわけもわからず見ていた
「ふむ、握手をしらないのか?親しくなりたいと思った相手には握手をするものだぞ、こういう風にな」
そういいながらエリアスは俺の手を強引に掴み自分の手と俺の手を掴み合わせる、何だかよくわからんが悪い気はしない、そんな俺に笑いかけながらエアリスは手を離すと二人の方に戻っていった。
「何をしてるんだ全継、私の団員の紹介がしたいこっちにきてくれ」
エアリスにそういわれた俺はエアリスの方に歩いていく。
「ガルウスの紹介はいいな、この緑の鎧を身に着けているのが私の弟のゼルだ、ゼル、彼がガルウスが連れてきた全継君だあいさつしなさい」
「言われなくてもするってエアリス、よろしくな全継!僕はゼルだ」
そう言いながらゼルは俺に握手を求める先程のエアリスとのやりとりで所作を覚えた俺はそれに応じる、ゼルは俺の手を握りならニッと笑った。
「そしてこちらが我が団の魔法使いコーネリアだ」
コーネリアは緊張しているのかガルウスの後ろに隠れながら俺にお辞儀する、俺もそれにつられてお辞儀する。
「ところでガルウス、私が見たところ全継は強そうだがあの話はしたのか?」
エアリスがガルウスに尋ねるとガルウスは無言で親指を立てる、それを見てエアリスをニッと笑った。
「助かるよ全継、キャシーは私にとっても妹のような存在でな、私たちが行こうと思っている任務には付いてこれないし一人にすると暴走してしまうと思ってね護衛を探していたところなんだよ」
そう言いながらエアリスは俺の肩を叩く、三人の首には翼の首飾りがある、ゼルは白の三枚翼、コーネリアは白の片翼、そしてエアリスは黒の両翼、この四人が赴く任務、興味はあるが今はキャシーとの任務に集中しなければな。
「では私はこの盾の勘定を済ませてくる、ゼルは馬車を用意しに行ってくれ、ガルウスも準備を終えたら馬車まで来てくれ、早い方がいいからね、行こうかコーネリア」
そう言ってエリアスは勘定に向かった、その後をコーネリアが追いかける、ゼルは駆け足で外に出ていく。
「慌ただしくてすまないな全継、そういうわけで俺たちは任務に行ってくる、キャシーの事は頼んだぞ」
そう言いながら手を差し出すガルウスに俺は「あぁ」とだけ言って握手を交わす、グッとお互いに力を込めた後に手を離し、俺は外に待っているキャシーの元に向かう。