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初めての戦、そして初めての街

任務の途中で異世界に飛ばされた一人の忍彼は一体どうなってしまうか

少し離れた位置から戦況を見ていた隊長であろう獣人の目の前に俺は姿を現す、突然の事でビックリしたんだろう目を丸くしてくれた、しかしすぐに彼は距離を取る、身の丈はある大斧を片手で持つ。


小さなうなり声をあげながら俺の動きを観察する、俺も苦無を両手に持ちながら相手の出方を伺う、動きや匂いから推測すると俺より少し劣るくらいだろう、しかし油断すれば殺されるだろう強さなのは間違いない、一向に動かない俺に痺れを切らしたのか向こうから攻撃してくる。


想定していたよりも早い一閃を紙一重で躱す、躱すと同時に苦無で切るが動きは見切られ掠りもせずまたお互い距離をとる。


獲物の長さからすれば、俺が不利だろう、しかし懐まで飛び込んでしまえば今度はこちらが有利・・・なのは人相手だ、獣人である奴は手には鋭い爪、口にも牙を持っている、安易に飛び込めば命はないだろう、苦無を一度投げてみる、空気を切り裂きながら敵の脚に刺さる、咄嗟の事で判断できなかったのか?


俺の見通しは甘かった、いや、甘すぎた、獣の頑丈な毛には護身用の苦無など問題なかったのだ、ぼとりと落ちる苦無を見て相手は口角を吊り上げる、多分俺があいつに対抗する術がないと見たのだろう、様子を伺っていた先ほどまでと違い、苛烈な攻撃を仕掛けてくる。


俺はそれを躱しながら苦無で応戦する、分厚い毛相手に、切ることに特化していないこの苦無では少々難しいみたいだな、小さくため息をついた俺に獣人はさらに口角を上げる。


刹那、獣人の激痛に悶える叫び声が雑木林にこだまする、俺の苦無は奴の目に深々と刺さっている、別段毛が固いなど、侍相手の時に鎧が固いのと変わらん、俺はそんなことを思いながら残るもう一方の目にも苦無を突き刺す、自分に対抗する術を持たぬ敵の思わぬ攻撃に判断が遅れたのだろう、俺の苦無はあっさりと獣人から光を奪った。


光を奪われた獣は無茶苦茶に斧を振り回す、木に当たってもまるで豆腐を切るかのように意図も簡単に木は切断される、それを見て少し肝が冷える、さてどうしたものか、奴がああやって振り回す限り迂闊に近づけば死ぬしな、かといって何もしないもの嫌だし、などと考えていると後ろから人が近づいてくる、殺気を感じないところから察するに敵意はないのだろう、敵のないものに気を配って殺されては嫌なので獣人からは目を離さず、こちらに来るのを待とうか、少し様子を伺っていると、こちらも敵意を持っていないことを察したのだろう、ゆっくりと向こうから近づいてくる。


「おい、あんたは人間か?」


声を聴くに若い男だろうか、後ろを振り向けないから詳しくは分からないが、獣人のいる世界ではどうやら人間か獣人かは重要なことみたいだ、俺は「ああ、俺は人間だ、そして迷子だ」と伝えると男は少し笑ったのだろう、フフッっといった後に声を整えるために軽く咳払いをしてまた俺に問いかけた。


「変わったやつだな・・・街まで送ろうか?」


街があるのか、情報を集めなくてはならない俺にとっては願ってもない状況だ、だったらさっさと処理をしてしまうか、俺は少し息を深く吸う、そして呼吸を止め集中をする、狙いは・・・あそこだ。





・・・・・・数時間後


「いや~それにしてもあんた強いな~あそこでまさかあいつの目に刺さった鉄棒にまた鉄棒を当てて殺すなんてよ~」


男の馬に一緒に乗せてもらいながら男と会話する、「他にも方法はあったが一番手っ取り早い方法を選んだんだ、俺の名前は浜浅全継<はまあさぜんけい>だ」俺は自己紹介を兼ねて返答をする。


「変わった名だな~俺の名はガルウス、ガルウス=ヘッゲルトだ、よろしくな浜浅」


ガハハと笑いながら俺に名前を返してくれる、しかし少し気になることがあったので俺は彼に尋ねる「ガルウスは姓か?名か?」俺の質問が珍しかったのだろう後ろ姿からも少し驚いた感じが分かった。


「あぁ、ガルウスが名だ、ということは全継は全継が名か?この国では名を先に言うのが一般的なんだ」


すぐに俺の意図を分かってくれたのだろう、ガルウスは国の風習を教えながら俺の名を分かってくれた、俺はそれが少しうれしくて青空を見ながら笑った。


「もうすぐ着くぞ!!全継!」


後ろを振り向きながらガリウスは俺に声をかける、ガリウスのデカい背で見えにくかったので馬から降りて前を見る、そこには俺が見たことも無いほどデカい建物が建つ街が見えていた、白を基調にしたひと際大きい建物は一度任務で関わった、南蛮商人が持っていた絵に描かれた南蛮の城に似ていながら我が国の将軍の居城の要素も兼ね備えた独特の雰囲気だった、こんなに明るい時間に城を見るのは初めてだった俺は子供の様に心を躍らせながらガルウスの馬に飛び乗る、「ガルウス!あのデカい建物はなんだ!?」俺の子供のような声色に笑いながらガルウスは答えてくれた。


「あれはこの国の王が住まわす城だ、しかし俺たちが用があるのはその手前にあった茶色い建物だ」


ガルウスは上機嫌に俺の質問に答えながら馬の脚を早める、「ガルウス、その建物には何があるんだ」


「その建物の名は<鳥たちの巣>、俺たち翼を持つ者に登録している冒険家の為の建物だ!」


冒険家、その言葉に俺は自由の香りを感じまた青空を見ながら一度も出したことの無いような大声で叫ぶように言った、「それは楽しみだ!」俺の声にガルウスやその仲間たちは大声で笑いながら、皆で街の門をくぐっていく。


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