ページ53 散歩の終わり
ピカッ、ゴロゴロ~ンッ!!
「きゃっ?!」
雷に左雨さんが声を上げた。
激しい雨風に打たれ、傘も意味を成さなくなって来ていた──。
「……あの、やっぱり中で待たれた方が……」
校門で雨具に身を包み、見張りをする隊員の一人が左雨さんに声を掛けた。
「も、もう少しだけ……」
傘の下から頭を下げる。
その姿は靴下どころか、スカートの裾まで水が染み込んでいた。
隊員から視線を移した左雨さんは、祈るように一直線に伸びた歩道の先にある交差点を見つめた。
午前中に出かけた影山と博士が、夕方になっても戻って来ない。
何か合ったのではと、青井さんにGPSを調べてもらったら、どうやら帰って来ている途中らしいことがわかったのだった。
『救援の知らせはないし、事情は後で聞けるから今は待とう』
と、青井さんは告げた。
居ても立っても居られず、校門まで出て来てしまったのだった。
「愛、ユウトなら心配いらないの」
「うん、ありがと、ノエ……あっ!」
見つめた視界の先に二人の姿が入った。
博士が影山に肩を貸し、支えながら歩いて来る二人の姿に左雨さんが傘を投げ捨てて駆け出した。
オレの酷い有様を見て、左雨さんが声を上げた。
「か、影山くん?! 待って、今魔法掛けるから」
びしょ濡れになりながら驚愕する左雨さんに、オレは苦笑いするしかなかった。
「ユウト、遅いのっ!」
遅れてノエルが左雨さんの傘を回収して駆け寄って来た。
「スゥ…………。ヒール」
左雨さんが大きく深呼吸をして魔法を唱えてくれ、全身の痛みが引いていく。
「ありがと、澪」
オレは礼を言って澪から離れた。
「「み・お?!」」
その瞬間、ノエルと左雨さんの眼が大きく見開かれた。
「え?」
「ど、どういうことかな。影山くん?」
「いったい二人でどこで何していたの?!」
左雨さんがニッコリ笑って首を傾げ、ノエルが掴みかかって来た。
「あ、いや、これは、澪がっ……」
腹を抱えて笑いを堪えていた澪が、役者顔負けの悲痛な演技を披露する。
「くくくっ、酷いな少年、ボクをあんなに強く抱きしめて、押し倒しておいて」
ちょ。言い方!
「へぇ~、そうなんだぁ」
左雨さんの表情がスッと消える。
「今日という今日は話があるのっ。ユウト、こっちになの!」
「ちょ、痛い痛いって。ノエル引っ張るな。左雨さん誤解、誤解だからああ」
「問答無用ッ。もうケガは愛が治したの!」
「あははは、何が誤解なのかなぁ……」
短めですが本編はここで終了となります。
明日の幕間で一旦完結とさせて頂きます。
詳しくは活動報告にて。
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