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ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第二章 バイト戦士と精霊の友人
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ページ51 散歩 その4

 遠くでゴブリンウォーリアが何かを投げてすぐ身を隠した。


「博士っ!」


 オレは急いで博士を抱えて後ろに飛んぶ。


 トトンッ。コロコロ……。


 …………。


 ……。


 ……。


 地面で抱き合う二人。



「「爆発しないのかよっ」」



 投げ込まれた手榴弾は安全ピンが抜かれていなかった──。


「まったく驚かせやがってッッ」


 投げた小石が命中した。


「あはは、ボクはドキドキして楽しかったよ」


「ソーデスカ。はい、これも持っててください」


 博士に安全ピン付きの手榴弾を手渡した。


「少年のボクに対する扱いが段々雑になって来た気がするんだが……」


 えいっ。


 木の陰でライフルを構えようとしているゴブリンアーチャーに石を投げた。


「急にどうしたんですか。構って欲しいんならそう言ってくださいよ」


 すると、博士は両頬をふっくら膨らませてオレを睨んだ。


 子供かっ?!


 とてもIQ230の天才発明家には見えないぞ。


 こういう顔を見ると年相応の女の子に見えるよなぁ……。


「……ぉだ」


「ん?」


 ちょっと遣り過ぎたかな?


 両手がプルプルと震えだし、今にも激怒してライフルでオレを撃ちそう。


 博士はぷいっと顔を逸らすと声高らかに宣言した。


「ボクのことは(みお)と呼べ。それとその顔に似合わない敬語もナシだ!」


「か、顔は関係ないだろ……」


 しれっと失礼なこと言いやがって……。


「君にはこのぐらいがちょうどいいだろう」


 何がちょうどいいんだよ。


「よくわからんけど、わかったよ。みおみお」


 そう言って頭をポンポンッと撫でて歩き出した。


 すると、博士は何かボソッと何か呟いて追っかけて来た。


「──少年、後で覚えてろよ……」


「ん? 何か言ったか。みおみお」


「言うてへん!」


 関西弁になっとるがな。


 ──ダダダダダッ。


 あ、腹いせに歩いて来ていたゴブリンを撃ちやがった。


「待てッ、澪。あれは今までのとは違う」


 防弾チョッキに身を包み、ナイフを片手に歩いて来る。


 人間ほどの大きさにゴブリンウォーリアよりも引き締まった身体が4体。


 醜悪な顔に鋭いギラギラとした眼がこちらを睨む。


 その後方には天守閣が佇んでいる。


「……そのようだ、あれがゴブリンジェネラルか」


 ライフルの弾丸が効いていなかった──。


 討伐隊を()ったのもこいつ等かもしれない。


 オレは腰の鞘から短剣を抜いて構えた。


 ──吹き抜ける突風が背中を押す。


 駆け出したオレは先制の突進(スキル)を発動した。


影突進(シャドウソニック)


 走る速度がさらに加速し、4体のうちの中央2体をまとめて横薙ぎにする。


 防弾チョッキの上から斬撃を食らった2匹はその衝撃で後方へ吹き飛ぶ。


「チッ」


 さすがに一撃で倒せない、か……。


 そして、すかさず一歩後ろに飛ぶとオレが居た場所に左右からナイフが振り下ろされた。


 ──早い。


 それに攻撃に迷いがない。


 先ほどまでのゴブリン達とは大違いだ。


 着地と同時にオレは右手にいるゴブリンジェネラルの首元を斬り裂いた。


 よし、まずは一匹。


 なすすべなく、黒い霧となって消えていく──。


 振り返るともう一匹のゴブリンジェネラルが刺突の体制に入っていた。


 それを躱しながら、カウンターで心臓の辺りを一突き。


 魔石が地面に落ちる。


 大丈夫。まだこちらの方がスピードに()がある。


「「ギィッ」」


 振り向くと吹っ飛ばした2匹が駆けて来ていた──。


 今のオレにはゲームで培った、高レベルプレイヤーのステータスがある。


 だがそれは、イコールオレが強いというわけではない。


 仮初(かりそめ)の力を手に入れたに過ぎないのだ。


 いくら力や能力があっても、ついこの間まではただの高校生だったオレには、圧倒的に足りないものが存在する。


 ──オレの弱点、それは戦闘経験の少なさ。


 ナイフを躱す、敵を殴る。


 その一挙手一投足。


 どれをとっても過剰マージンをとった素人──。


 ここは戦闘経験を積んでおいた方がいいかもしれない。


 身体を楽にして身構えた。


 2匹のゴブリンジェネラルはそれぞれにナイフを振るう。


 それを右に左に動いて軽く躱す。


 すぐに追撃が来るがひたすら回避に専念。


 そして、よく視る。


 落ち着いて観察するとゴブリンジェネラル達の攻撃はとても単調だった。


 戦術や駆け引きがまったく無い。


 オレと同じでナイフを持っただけの素人の動き。


 それでも一般人である討伐隊の人達にとっては、とんでもない速さと怪力だったのだろう。


 オレもあまり変わらないけど、レベル差がある分──余裕がある。


「おい、何を遊んでいるんだ。早く終わらせろ」


 後ろから呆れた声でヤジが飛んできた。


「へいへい」


 隙をついて2匹の手首を軽く斬る。


「ギャァァアアア」


 攻撃が止んだ一瞬で間合いに入り、一突き。


 さらに後ろから襲い掛かって来たところをカウンターでもう一突き。


 2匹のゴブリンジェネラルが黒い霧と化して消え失せた──。


「ふぅ、だいぶ眼が慣れたかな」


 オレは今までモンスターとは戦ったけど、人型との戦闘はドッペルゲンガーだけだった。


 ま、あれも戦闘と呼べるモノではないけど。


 先のことを考えると、もっと経験を積んでおいた方がいいかもしれない。


 青井さんに言って軍の対人戦の訓練でもさせてもらおうかな。


 澪の方を向くと、4つ魔石を片手に何やら考え込んでいた。


「澪、この辺りはもうゴブリンは居ないみたいだから、天守閣の方に行ってみないか?」


「……なぁ、少年。この魔石をモンスターが食ったらどうなると思う?」

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