表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第二章 バイト戦士と精霊の友人
51/57

ページ48 散歩 その1

「はあっ?! どれだけ多くの人が死んでると思ってんだよ。青井さん、こんなわがまま通していいんですかっ?!」


「仕方のないことなんだよ。彼女の頭脳はそれだけの価値があるんだ」


 翌朝、オレの怒鳴り声に青井さんが肩を竦めた。


 現況の少女はブレザーの上に白衣をまとい、腰に両手を当てて宣言する。


「もう一度言おう。ボクが生み出す物は、この時代にとってはオーバーテクノロジー。その一つでも使い方を誤れば、冗談抜きで国が滅ぶ。故に、ボクはボクが認めた者の為にしか、この頭脳は使わないと決めている」


 青井さんの溜息が聞こえた──。


 たぶん、オレ達より先にゼロに加わったNo.(ワン)から(スリー)までの人達はそのお眼鏡に適わなかったのだろう。


『少年には是非、ボクをときめかせて欲しい!』


 博士が言った言葉を思い出して、オレは頭を抱えた──。


 パンパンッ。


「はいはいっ、どうせ影山も見込みないんだからさっさと席につくっ!」


 手を叩いて身も蓋もないことを言い、古賀が話をまとめた。


 今日から朝礼の進行役を任せられている古賀は、一人やる気に満ちていた。


「では、次の報告ですが……」




 はぁ……。


 オレは朝礼で配られた配布物に溜息をついた。


 心は空と同じ曇り模様である。


 GPS付き通信機。


 軍の回線を使った小型イヤホン型携帯だ。


 常時耳に付けて置き、居場所をいつでも把握できる上に、緊急時には校内放送で呼び出されなくても電話一本で呼び出せる。


 これでオレも暇な時は校外に出歩けるようになったのである。


 ──ただし、その喜びを上回る問題を抱えたことを除いては。


「それじゃあ少年、ボクをどこへエスコートしてくれるんだい?」


「なんでナチュラルに隣にいるんですか」


 オレは隣を歩く博士におざなりに返事を返した。


「あははは、君はやっぱり面白いね。普通、ボクを前にしたら大抵の人間はボクを恐れ、距離を取りたがるモノだよ」


「まさにその通りなんですが……」


 博士は終始悪戯っぽく笑って口を開く。


「だって君は違うだろう? ボクが誰かなんて関係なく、もらったおもちゃ(でんわ)が嬉しくて、一人でこっそり家を抜け出した子供みたいだ」


 おい、誰がぼっちな子供(ガキ)だ。


「オレは一人で(・・・)街を散歩するのが好きなだけですよ」


「ボクも広島に来たのは初めてでね。ちょうど散歩したかったところなんだ」


 あれ、微妙に話が噛みあってなくね……?


 これが天才の優しいスルーって奴か。


 レベル高すぎてうっかり気付かないところだったぜ。


 ──というか、違うんだ。


 みんな忙しくて、とても呑気に散歩なんて声掛けれなかっただけだ。


 オレはぼっちなんかじゃない!


 どこに居ても連絡がすぐに取れるようになったので、オレは学校を抜け出して街に繰り出したのである。


 もちろん、こっそりではなく青井さんには一言伝えてある。


 緊急時には、ヘリでそのまま拾ってくれるし、近くに居た場合は直行できる。


 博士と一緒にやって来た物は、オレに自由を(もたら)した。


「ログインが起こった日、オレは左雨さんを助けて大ケガをしたんです」


 オレは観念して散歩の行き先を語ることにした。


「左雨と言ったら……、あぁ君の隣に居た笑顔の可愛い女の子だね」


「はい、あの時は無我夢中で……ゲームの力があるなんて知らなくて、大ケガしてしまって……、その時にオレが運ばれたのがあの病院なんです」


 オレは眼の先に見えて来た病院を指差した。


 すると、その進路沿いにちょうど一匹のゴブリンが顔を出したのである。


 オレ達は急いですぐ近くの物陰に隠れた。


「一匹のようだね……」


「そのようですね」


 この距離ならこれで充分かな──。


 オレは足元に合った小石を拾って、それをゴブリン目掛けてブン投げた。


 小石はゴブリンの頭に命中し、悲鳴と共に黒い霧となって消え失せた。


 ──よしッ。


「お見事っ。君の投擲はまるでライフルだねぇ」


 病院の、こんな傍にまでモンスターが普通にいる……。


 オレは少し気を引き締めた──。



 病院で目を覚ましたあの夜、巨大なゴリラが病院を襲撃した。


 自衛隊の銃器では歯が立たず、すぐに病院全体に避難警報が鳴り響いた──。


 オレ達は出会ったばかりのノエルの後を追ってモンスターと戦い、撃破した。


 ──だが、そのせいでノエルは大ケガを負ってしまい、あまり生きた心地はしなかった。


「あの後すぐに学校に移動することになって、この病院がどうなったか気になっていたんです」


 オレ達は病院の敷地内にこっそり忍び込み、あの時とあまり変わりのない様子を眺めながら歩き回った。


 念のため腕章は外した。


 騒ぎに巻き込まれるのも、目立つのもなるべく避けたい。


「あっ! 優人さんどこに行ってたんですか?! えっと(いっぱい)探したんじゃけぇ」


 一人でトイレにでも行ってたのか、道端でばったり声を掛けられた。


「あぁ、さっちゃん。久しぶり、元気だった?」


 さっちゃんは、博士を睨むとものすごい剣幕でオレに掴み掛ってきた。


「元気だったじゃないですよ! 突然いなくなってぇ、ほんまに私も父も心配しとるんじゃけぇ、たちまち(とりあえず)、こっち来んさいっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=7345858&siz
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ