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ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第二章 バイト戦士と精霊の友人
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ページ47 ま、間に合った……

 あ”ーーーーっ、出る出るっ。


 早くしてくれええええええっ!


「凄い汗なの……」


「影山くん大丈夫?」


 貧乏ゆすりがとんでもない速さで上下する。


「三佐、目的地上空です。体育館にモンスターが襲撃している模様」


 窓の外を覗くとどういう訳か、大量の水でモンスターが体育館から押し戻されていた。


 ──何だあれ。


「篠崎さんっ、あのモンスターの真上にっ、お願いしますっ……!」


 オレはそれだけ言うとシートベルトとヘッドセットを外した。


 青井さんが何か言ってるがプロペラの音で何も聞こえない。


 今回のヘリは扉を開けっ放しで走行するタイプだ。


 出入り口の前で手すりにしがみ付いて祈る。


 篠崎さん、早く早くッ……。


 アーッ。もう限界ッ!


 いつもの屋上から飛び降りる要領でヘリから飛び降りた──。


 恐怖はない。


 ただ、思ったより高くて滞空時間が長かった……。


 ほんの数秒のはずなのに。


 頭の中では一つのことでいっぱいだ。


 早く早く、もっと早く、今すぐトイレ(・・・)にっ!


 よし、トイレの場所は見つけた。


 何人(なんぴと)たりともオレの邪魔をする者は許さない。


「どけええええええええええええええっっ!」


 そのまま重力を利用して、突然沸いた霧の中にいるモンスターを踏み潰す。


「シャドウ、……ウォークッ!」


 足から衝撃が来る前に(スキル)を発動し、物理法則を無視してオレは駆けた。


 ──パタンッ。


 施設内にある公衆トイレのドアが一つ。


 人知れずに閉められる音が響いた──。




「お久しぶりです。博士」


「青井ぃ~。助かったよ」


 青井さんが博士と呼んだ女子高生が手を振って青井さんに駆け寄る。


「そんなこと言って、全部計算通りだったのでしょ?」


「概ねなっ」


 女子高生がニカッと白い歯を見せて笑った。


「彼がモンスターを倒してくれたのかい?」


「ええ、きっと博士のお眼鏡にも適うと思います」


「もし、そうならなかったら西日本は諦めることだね」


 青井さんは肩を竦め、博士と言われた女子高生は悪戯っぽく笑った。




「ごめんごめん、モンスターってあれ一匹だけだった?」


「あ、影山くんが戻って来たよ」


 九死に一生を得たオレは晴れやかだった。


「ユウトォ、ヘリから飛び降りるほど急いで、今度はどこ行ってたの?!」


 眼が合った左雨さんに話しかけると、何故かノエルがオレの匂いを嗅ぎだした。


 フッ、無駄だぜ。


 こんなこともあろうかと、トイレに合った消臭剤で匂いは断った!


「む、ユウトから花の香りがするの! 愛ッ、女の香水なの!」


 左雨さんの表情がサッと消えていく。


「ちょ! 違うからッ! トイレに行って消臭剤で匂いを消しただけだから、左雨さん落ち着いて! ドウドウッ」


「まったくユウトは間際らしいの」


 ──どうしてくれよう、この殺意。


「ぎゃあああ。放すのユウトオオオ?!」


 ノエルの後頭部をがっちりホールドしてグリグリしてやった。


「お楽しみのところすまない。少年があのモンスターを倒してくれたのかい?」


 先ほどまで青井さんと話していた女子高生が話しかけて来た。


「はい、そうですが……」


 少女は大きく頷いて、思いのたけをぶつけて来た。


「少年には是非、ボクをときめかせて(・・・・・)欲しい!」


 バッと両手を広げて自信満々に言い切ったのである。


「はあ?!」


「影山くん?」


「新しい女なのっ!」


 オレは全力で驚き、左雨さんが笑顔で首を傾け、ノエルが吠えた。


 ──オレは知らない。


 こんな可愛い女子高生。


「くくくっ、博士、三人が困惑しているじゃないか」


「え? あぁ、そうか……。ボクは九条澪(くじょうみお)。年は君達より一つ上だが、ついこの間までアメリカの某大学で教授をしていた」


「彼女が関東支部からわざわざ招いた重要人物、IQ230の日本が誇る天才発明家だよ」


「ちなみにこの制服は、ボクの趣味だ。どうだい? 萌えるだろぉ」


 そんなことは聞いてない。


 頼むからスカート捲り上げてひらひらしないでくれ。


 色々いきなり過ぎて脳がついていかないオレは凡人なのだろうか。


「か、影山優人です」


「左雨愛です!」


「ノエルなのッ!」


 何故か左雨さんとノエルが強気だった。


「ははは、ここじゃ何だから、中で話そうか」


 青井さんにそう勧められて、一同は足を進めた。


 ──だが。


 体育館の中は大盛り上がりで話し合いどころではなかった。


「お姉ちゃんすごーい」


 子供達が博士に抱き着き、大人達が集まって来る。


 博士が一つ頷き、周囲を見渡して。


「諸君、よくやってくれた! この勝利は君達の選択の結果だ。諦めてしまっていれば、今頃は全員死んでいただろう。だが君達は選択した。この選択を今後も忘れずに、一人一人が自分のできることを精一杯頑張って欲しい」


 自然と拍手が沸き上がる。


 彼らが何をしたのかはオレは知らない。


 ──ただ、博士を見つめる彼らの顔は、何かに怯えた恐怖のソレではなく、達成感のような清々しさに満ち溢れた、笑顔そのものだった。


 その後。


 安全の為に博士は先にヘリで学校に向けて飛び立ち、オレ達も避難用の大型ヘリの到着を待ってから、帰りは少し曇り気味のナイトクルージングをゆったり堪能した。

影山「このおにぎりしょっぱっ?!」


ノエル「ん~? どれどれなの……」


 ──パタッ。


影山「のえるうううううううっ?!」

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